気になるキャストについて
クリステン・ウィグ
ウォルターが好きになる、バツイチ子持ちの同僚シェリル役には、『宇宙人ポール』のヒロイン、ルースを演じたクリステン・ウィグ。今作ではコメディエンヌとしてではなく、正統派でなおかつ(ウォルターの空想の世界では)いろいろやらされる、ちょっと変わったヒロイン役でした。
「大手メディア勤務」「バツイチ」「自立した女性」といったキーワードが当てはまるようなタイプの映画にありがちな、大袈裟な表現や必要以上に作り込んだキャラにはせず、ナチュラルな一人の女性として映るようにうまく演じていたのではと思いました。
とにかく『宇宙人ポール』が最高に楽しい映画ですので、まだ見ていない方はそちらも激しくおススメです(笑)。
パットン・オズワルト
ウォルターが登録していたサイトの顧客サービス責任者、トッド役のパットン・オズワルトは、シャーリーズ・セロンがイタいアラフォー女を演じた映画『ヤング≒アダルト』で、結構重要な役で出ています。こちらの『ヤング≒アダルト』も音楽が素晴らしく、現代の、とくに都会に暮らすアラフォー世代にとっては色々考えさせられる良作です。
最後に
これは『シング・ストリート 未来へのうた』のレビューの中でも書いていることなのですが、ウォルターは今回勇気を出して一歩踏み出したことで、自身の人生を変える様々な経験をしましたが、実は彼は元々その実直な仕事で評価されていた男であり、冒険こそしない人生だったかもしれませんが「世界中を冒険している男」である著名なカメラマン=“本物を見る目を持つ男”から認められていた男だったのでした。
その「たとえどんなに地味なものでも、実直にずっと続けている仕事のスキル」と、「子どもの頃に一生懸命やっていたこと(そしてそれは亡き父との思い出とともに自身の中にちゃんと残っていた)のスキル」の両方が、“人は誰でもこういうことを、時にはやらなければならない”ときに自身の身を助け、未来へと導くことになったのでした。
人生には、自分の力ではどうにもできないこともあるけれども(ここでは『LIFE』誌のデジタル化による失業)、自分次第で変えられることもある──ということをこの映画では教えてくれています。空想じゃない本物の冒険から帰ってきたウォルターはまるで別人のようになっていました。
今まで勇気がなくて踏み出せなかった人、自分には誇れるようなものは何もないと思っている人はたくさんいると思います。でも自分が自分自身を評価していないだけで、本当はきっと何かあるはず。もし地味でちっとも目立たなくても、誰も直接褒めてはくれなくても、何か真面目にやってきたことがあるのなら、それは本当にいざという時に自分を助けてくれる。そして必ずどこかで誰かが見てくれている──そう思いたいですね。
っていうかね。。何あの最終号の表紙。全然予想してなかったからちょっと泣いちゃったじゃねーか。
映画とは直接関係ありませんが、こちらではミシェル・ゴンドリーが監督した名作・名曲MVを多数取り上げています
comment
Kさん、どうも。スーダラです。
大好きな作品です。
主人公が「変わる」「成長する」のではなく、変わることなくプロとしての矜持を全うし、内なる自分のパッションを解放する形になっているところが実に良心的で、且つリアリティがありましたね。
こういう骨太な雑誌や、それを支える本物のプロフェッショナルたちが隅っこに追いやられるばかりでは味気ないですね。
https://cinemanokodoku.com/2018/03/31/life/
スーダラさん
ありがとうございます〜。
ホントそうですよね…。たしかにウォルターの人生が動き出すきっかけはあったとしても、結局のところ自身がそれまで真摯に取り組んできたプロとしての仕事や、父の代わりに家族を支えてきたことなどが大事なところで報われたり役に立ったりしたからこその物語で、決して「都合よく幸運がやってきて冒険の主人公になった」という男の話ではないところが良かったです。
そういう意味でも、あの最終号の表紙のメッセージは強いなぁと思いました。