【改訂版】映画『パターソン』──ふたつのものが同時に存在する意味は(双子・白と黒・バスでの会話など)

ENTERTAINMENT

 当ブログはたしか20107年の9月下旬あたりに始めたのですが、その頃に観た映画のひとつがこの『パターソン』でした。

 レビューを書いてはみたものの内容があまりにもペラペラだったのがずっと気になっていて、いつか書き直したいと思っていた作品です(笑)。

 

 そんなわけで今回の改訂版は、映画の中に度々登場する「ふたつの相反するもの/似ているが別のもの」が意味するものは何か、という点を中心に書いていこうと思います。

あらすじ

 ニュージャージー州パターソンでバスの運転手をしているパターソンは、恋人(ちなみに英語版Wikipediaでは「妻」と表記されている)ローラと彼女の愛犬・マーヴィンと共に穏やかな暮らしを送っている。

 

 パターソンの毎日はほぼ同じパターンで過ぎてゆく──

 

 早起きして歩いて仕事へ出かけ、業務が始まる前や昼休み、そして帰宅後にノートに詩をしたためる。夕食後にマーヴィンを散歩へ連れて行き、途中で馴染みのバーへ寄りビールを一杯だけ飲んで帰る。

 スマホも持たず、もの静かで寡黙だが人当たりはよく、職場の仲間やバーのマスターたちとの関係も良好。そして愛するローラのすることに対しては全てを肯定し受け入れる心の広さを持っている。

 ローラもまた彼の詩を愛し、これまでも度々彼の詩が書かれたノートをコピーしておくよう勧めていた。そして今回ようやくパターソンも週末にコピーを取ることを約束する。

 土曜の夜、ローラが作ったカップケーキがよく売れたお祝いにと、ふたりは外食と映画に出かける。楽しいひとときを終えて帰宅したパターソンが見たものはマーヴィンによって粉々にされた大事なノートの残骸だった──

 

© Window Frame Films

一週間の間に起きたこと

 本作品はパターソンに住むパターソンという名前の男の一週間を描いた物語ですが、バスの運転手(ドライバー)であるパターソン役を演じるのがアダム・ドライバー(Adam Driver)というのも軽くシャレが利いています。

 バスが故障したときにスマホを貸してくれた少女が言った、

「Would you like to use my phone Mr. Bus Driver?」

 という台詞を聞いて「あ、そうかw」と今さらながら気付いたのでした(笑)。

 そんなアダム・ドライバー演じるパターソンの毎日は穏やかなルーティンに沿って過ぎていきますが、そういった何でもない日々の中であっても大小さまざまな出来事が起きていきます。

 いつもの場所で言葉を交わす人たちにもそれぞれ何かしらの問題や事情があり、良いこともそうでないことも含めて、皆それを受け止めてどうにかこうにか生きているのでした。

パターソンの場合

 主人公のパターソンは愛するローラとの暮らしに幸せを感じていますが、今のところはとくに仕事をしていないと思われるローラが日々、家の内装や家具・生活雑貨などをリメイクしまくってことごとく白黒のモノトーンに変えてしまいます。日毎に悪趣味になっていく家……

 

 朝もほとんどパターソンが先に起き、朝食も自分で準備したシリアルのみ。さらに昼食も質素なサンドウィッチ(カップケーキのときも)と果物だけで、大柄なパターソンがたったそれだけで足りるのか気になります(笑)。

 それでも夕食はちゃんとしたものを食べている……のかと思いきや、専業主婦状態であるはずのローラが作るものは自作のレシピによる「秘密のパイ」だったりと、とても夕食とは思えないもの。しかも中身はチーズと芽キャベツという質素なもので、肝心の味も今イチらしくパターソンは水で無理矢理流し込むもなかなか食は進みません。お腹空くだろうに……

 

 さらには経験がないのにいきなりレッスン本とDVD付きのギターをおねだりし「すぐに弾けるようになって夢だったカントリー歌手になるの」なんて言い出すローラ。衣装は白黒のデザインで…など、彼女はとにかくまず形から入るタイプのようです。

 ギターが届いた金曜日は、パターソンにとってはバスが故障するトラブルでそれなりに大変な一日だったわけですが、ローラはギターの練習と土曜日に売るカップケーキを作ることに費やし、夕食はデリバリーのピザを食べることに。

 

 ちなみにこの金曜日、マーヴィンがポストの柱に乗りかかって傾けてしまう場面がありましたが、いつもこの柱が傾いていた原因がここで判明します。それと同時にマーヴィンがポストの中身(つまり紙の何か)に興味があることも分かり、それが翌日の悲劇の理由にも繋がってくるという前フリにもなっています。たぶん。

 また火曜日の夜、マーヴィンの散歩中に車に乗った男に声をかけられ「犬に乗っ取られないように(ドッグ・ジャック)気をつけな」と言われたパターソンは深く考えずにやり過ごしましたが、結局これも「犬に気をつけろ」という忠告としてこの男が言ったことは正しかったことになります。

外で出会う人々の場合

 バス会社の車庫長・ドニーは家庭・家族関係の悩みを抱えていて、バーのオーナー・ドクも恋人とお金のことでちょっとモメているのですが、どちらもその問題に嘆きつつも静かに受け入れて日々を生きています。

 バーの常連客・マリーにフラれて落ち込み、ついに(オモチャの)銃を取り出して騒動を起こしたエヴェレットは日曜日の昼にパターソンと路上で遭遇しますが、2日前の出来事で少し落ち着いたのか自身の状況を冷静に受け止めようとしているだけでなく、逆に落ち込んでいるパターソンを元気づけようとします。

comment

タイトルとURLをコピーしました