映画『X-MEN:ダーク・フェニックス』──過去の若返りシリーズ3作の感想もまとめて

X-MEN:ダーク・フェニックス ENTERTAINMENT
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ダメだった点:その2
各キャラの行動原理の描写・説明が弱く、説得力がない

 子どもの頃に引き起こしてしまった大事故によって自身の持つ恐ろしい力を恐れ、それがトラウマとなって心の奥に影を落としていたジーンのダークサイドの面が、宇宙で謎の熱放射に取り込まれたことで目を覚まし、パワーを制御できなくなり暴走する──

 という展開なのはいいとして。。。宇宙へ行く前から元々ダークサイドの面はちらついていて、少しずつそれは大きくなってきていたわけですし、宇宙に行かなくても暴走は時間の問題だったのでは?という気がしてどうにもモヤッとしてしまいます。

「あの熱放射の悪のエネルギーとジーンのダークサイドが融合し、ダーク・フェニックスが覚醒してその力を増幅した」

 ということなんでしょうけど、その割には行動が地味だし「地上の生命を滅ぼしかねないダーク・フェニックス(パンフのストーリー解説より)」というほどの場面が見られたわけでもなく…。

 例えば前作の『~アポカリプス』では、マグニートーが世界中の建造物を破壊していく描写がありましたが、そんな黙示録的な光景を見ることもなく、X-MENたちの仲間割れにジーンとエイリアン軍団の、かなり狭い範囲でのバトルロイヤルが繰り広げられたのみでした。

 つまり「ジーン=ダーク・フェニックスがどれほど危険か」というのが伝わってこなかったということです。

 またレイブンとハンクについて、これまでの3作でハンクがレイブンに想いを寄せているのは分かっていても、レイブンがハンクに対して「愛してるわ」なんて言うとは思っていないので「え、そうなの?」と軽く驚くことに。『~アポカリプス』からここまでの間にそういう意識になっていったのであれば、もう少しそれが伝わるような描写を入れるべきだったのではないでしょうか。

 同様にエリックについても、彼はミュータントとして、また戦士としてレイブンをリスペクトしていたのだろうとは思うんですが、今回ハンクと共闘するにあたって「ふたりともレイブンを愛していた」という設定になっていて「あれ、そ、そうだっけ…」っていう。たしかに『~ファースト・ジェネレーション』でのレイブンはエリックに対して愛情のようなものを抱いていたようにも受け取れなくもないですが。

 でももしエリックもレイブンを愛していたというのであれば、そういう人を失ったときの彼の怒りはこの程度じゃないよね、って思うんですけど、どうなんでしょーか。

 さらに細かいことを言えば、護送列車での戦闘でマグニートーはセレーネ(コミューンで一緒に暮らしていたテレパス能力を持つ腹心的な存在)を失いましたが、その後の展開もやはり弱いというか地味というか…ジーンが最強という設定を前面に出すためなのか、とにかくマグニートーの骨抜き感がすごい

 チャールズもチャールズで、以前と変わってしまった(と、レイブンやハンクが感じていた)点とその理由、行動原理みたいなものが見えてこなくて何だかよく分からない…。子どものころのジーンにしたことと上記の「以前と変わった」こととは別の問題なはずですが、どちらも説明が弱いのでとにかく「何か知らんけどチャールズが悪い」みたいな雰囲気になってしまっていたという(笑)。

 

 パンフの「プロダクション・ノーツ」に、一応この辺のモヤモヤに対する答えのようなものが書かれていましたので、一部引用します。

 

~(略)それは、X-MENのリーダーであり、ジーンの変身の裏で不注意なきっかけを作った、チャールズ・エグゼビアの存在である。映画がスタートするとチャールズはミュータントのリーダーとして、自分のリーダーとしての特権を享受する。レイブンが適切に指摘したように、最前線に出ることはほとんどないのに、彼はその特権を楽しんでいる。

~(略)宇宙での救出ミッションと、チームを宇宙に送る事に対するレイブンの懸念をチャールズが無視した時、ジーンの運命が変わった。さらに、彼女の痛ましい過去の真実を彼女から守るために、チャールズが彼女の脳内にバリヤーを建てたと知った時、ジーンは深く裏切られたと感じ、怒りの感情が沸いた。

~(略)「X-MENを分裂させる、感情的に大きなショックを与えるイベントが必要な事は分かっていた」とキンバーグ(監督のサイモン・キンバーグ)は言う。「それは、キャラクターの死でなければならないと考え、早い段階でエリック、チャールズ、それにハンクとの関係からレイブンに落ち着いた。エリックとハンクは共に、彼女とロマンティックな関係になった事がある。チャールズにとって彼女は、妹のようなものだ。彼女を殺せば、ほとんどのキャラクターに対して、感情面で最大の衝撃を与えられる。それは観客に、どんな事でも起こり得ると示す事だ。誰も安全ではない」

パーカー(プロデューサーのハッチ・パーカー)が付け加える。「家族内の本物の危機を扱うのならば、多少の血を流し、その結果を感じ取る気持ちがなければならない。(略)~」

 

 ………。おいおい、なんか身も蓋もないこと言ってないか。。

 言ってることが戦争をおっ始める政治家みたいなんですけど……。まぁ今作では結局あまり実を結ばなかったようですね。。

 

 あと同じくプロダクション・ノーツに、このようなことも書かれていました。

 

~(略)キンバーグが「ダーク・フェニックス サーガ」に取り組み始めた頃に製作された2016年の『X-MEN:アポカリプス』はSFXを駆使した大規模なディザスター(災害)物語で、ミュータント間の関係を探索する予知はほとんどなかった。このような大作の後には、どのような冒険が可能かと考えた時、キンバーグは作品のペースを完全に変える事を望んだ。「他の『X-MEN』映画にあった、もっとキャラクターと親しく向かい合う作業が懐かしかった」と、キンバーグは言う。「もっと根の張ったしっかりした物語にしたかった」

 

 うぅむ…。言いたいことはよく分かりますが、残念ながら『ローガン』のようにはいかなかった、ということですかね。

 『ローガン』は、映画館で観たときは正直そこまで絶賛するほど面白いとは感じなかったのですが、見終わったあとから批評などを見聞きして「なるほどねぇ~」と改めて振り返ってみて、そこから気付かなかった良さが理解できたりしたものでした。はたして今作はどうだろうか…

 

 

ダメだった点:その3
“敵”が結局何者なのかよくわからない

 そして何よりもイミフだったのが、あのジェシカ・チャスティンをはじめとした謎のエイリアン軍団です。

 あのエイリアン軍団は結局なんだったのか、ちゃんと理解できた方は一体どれくらいいるのでしょうか…

 

どれくらい地球にいる?

どういった特徴・能力がある?

みんな同じ能力なの?

いつから地球にいた?

どれくらい強いの?

どうなったら死ぬの?

そもそも何者?

 

 何も分かりませんでした……。

 強いのか弱いのか、何が出来てどれくらいの数がいて、ジーンをさらって「具体的に」何をするつもりのか…

 全然分からないまま、どれくらいの数がいるのかも分からない(見た目は人間の)エイリアンたちが、ただわちゃわちゃしてるだけ。。。

 パンフレットでは「謎の女ヴーク」の能力は次のように書かれていました。

 

優れた知性を持ち、極めて冷静沈着。ほぼ不死身の肉体を持っている。その正体は……。

 

 うーん………。やっぱりわかんねぇっすw

 

その他、ツッコミどころなど

 ちょっと今回気になったんですが、レイブンの顔が今までよりもだいぶジェニファー・ローレンスの素顔に寄っていたように感じました。ミスティーク6.5割、ジェニファー・ローレンス3.5割みたいな。目とかかなり普通に近づいてたし…

 あとコミカルなキャラとして貴重な存在となっているクイックシルバーですが、さすがに3作目になってもあれしか出番がないというのも勿体ないというか、可哀想というか。。あれじゃまるで寅さんシリーズの中の佐藤蛾次郎のような扱いじゃないか(笑)。

 でもってクイックシルバーとジーンの対決?シーンですが、音速を超えるスピードで移動できるから宙に浮いた板きれを踏み台にしながらジーンに向かっていけたのはいいとして、その板きれをジーンによって外されたらあっという間に落下ってちょっとおかしくないですかね…。落下のスピードよりも圧倒的に速いんだから少なくともああはならんだろ、っていう。落下するんだったら自分で動けないんだから他と同じスピードになりますよね。…あれ、なってましたっけ?w

 そして今回の主役のジーン。

 主役なのに全然身体が絞れてないのはどういうことなのか。。。映画を見てもパンフの写真を見てみても、前作の『~アポカリプス』を見直してみても、さすがにこれはないだろう…という骨太感。。

 映画はまだ動いてるからごまかせるかもしれないけど、パンフの写真を見てるともうなんか切なくなってきます(笑)。20年後くらいにヒュー・ジャックマンと『マディソン群の橋』のリメイクをやったら似合いそうだな~と、くだらないことを考えてしまいました(笑)。

 まぁ、またCSなどで放送されたら細かいところも気にしながら見直してみようと思います。

 

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