映画『X-MEN:ダーク・フェニックス』──過去の若返りシリーズ3作の感想もまとめて

X-MEN:ダーク・フェニックス ENTERTAINMENT
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 個人的な意見だと、X-MENの“若返りシリーズ”は最初のX-MEN:ファースト・ジェネレーション』が一番で、そこからX-MEN:フューチャー&パスト』『X-MEN:アポカリプス』の順かなぁといった感じなのですが、順番はつけつつも過去3作はそれぞれにいい部分がちゃんと存在していて、しっかりと面白い作品となっていたように思います。

 

 

 とくにこの若返りシリーズでは「マグニートーが人間と敵対することになるもっともな理由」がどの作品でもきっちり描かれています。(そしてそれが毎回あまりにも悲しすぎる

 そのためマグニートー=エリックを「完全悪」として見ることは出来ず、旧シリーズ以上に肩入れして見てしまうこととなるので

「マグニートー側とチャールズたちX-MEN側のどっちも好き」→「ヴィランが魅力的な作品は面白い」→「若返りシリーズ大好き」

 という感想となったのでした。

 

 

 もちろんチャールズとエリックの出会いから友情、そしてお互い別の道を歩むことになる過程や、旧シリーズではマグニートー率いるブラザーフッドの一員で、ひとりの悪役として描かれるキャラだったレイブン=ミスティークが主役級の重要キャラになっている点、さらにハンク=ビーストも同じく重要キャラになっていて、チャールズやレイブンとの関係も3作を通して欠かせない要素となっていることなども、物語に奥行きを与える大事なポイントとなっていました。

 さらにこれらのキャラクターを演じている4人の俳優の個々の魅力も相まって、これまでなかなかいい流れで来ていたように感じられたのですが…

 

 ですが今作は……

 

 前作(アポカリプス)の後、次作はジーンが主役の“ダーク・フェニックス”の物語になる──という情報が出た時点で個人的には「あぁ、そうなんだ…まぁ観るとは思うけど」と醒めた印象を持っていたのは事実ですが、それでもまさかここまでつまらない作品になろうとは。。。

 

 いやー、これは厳しいだろ…と思いましたね。。

 

 コミックでは面白いのかもしれないけど、映画のX-MENではすでに主要キャラのパワーバランス、能力やパーソナリティといった“キャラの立ち方”だけでなく、演じている役者の「格」みたいなものも確立されてしまっているので、このタイミングでジーン暴走の物語を持ってきても「これよっぽどうまく作らないと失敗するんじゃね?」と思っていました。

 前作でジーンの本当の強さ・恐ろしさみたいなものは描かれていましたが、前作が初登場だし、他の主要キャラとくらべると印象がまだまだ薄いですよね…。

 

 というわけで一体どの辺りがダメでつまんないと感じたのか、若返りシリーズが好きだからこその正直な感想を書いていこうと思います。

 

 

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ダメだった点:その1
エモさがどこにもない

 やっぱり映画というひとつのエンターテインメントである以上、感情移入できる部分や引き込まれる部分がなかったらつまらないと思うのですが、今作はそもそもこういった「感情に訴えるエモさ」みたいなものがなさ過ぎました。いや、あるのかもしれないけどそれをうまく表現できていなかったというか…

 

『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』

© TM and 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

X-MEN:ファースト・ジェネレーション』の場合

 『~ファースト・ジェネレーション』がとにかく面白かったのは、エリック・レーンシャーがなぜ怪物マグニートーに「なってしまったのか」の描き方が実に素晴らしかったことが大きな理由のひとつだったといってよいでしょう。

 旧シリーズ第一作の冒頭にも出てきた、強制収容所に入れられる際にマグニートーの能力が暴発した場面から始まり、チャールズと出会うまでにエリックが辿ったセバスチャン・ショウを探す復讐への道のり、チャールズとの出会いを経てショウとは逆のアプローチで自身の能力を覚醒させてゆくまでの二人の物語、そして復讐を遂げた後に待っていた人間たちの非情な行為に対するエリックの怒りなど、どれもアメコミヒーロー映画の枠を超えた重みのあるものでした。

 また全体を通して60年代前半のファッションや音楽、カルチャーなどに彩られた世界観が「第一世代」である彼らが放つ若さや勢いみたいなものと非常にうまく融合されており、物語がテンポよく進んでいくのが実に心地良かったのも『X-MEN』映画の新しい夜明け・新しい可能性を感じさせるに十分なものでした。(この「テンポ良く」というところは本当に大事だと思います)

 旧シリーズやスピンオフも含めてもこの『~ファースト・ジェネレーション』が一番好き、という人はきっと多いはず。

 

『X-MEN:フューチャー&パスト』

© 2013 – Marvel and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

X-MEN:フューチャー&パスト』の場合

 若返りシリーズ2作目の『~フューチャー&パスト』は、旧シリーズのキャストがミュータントを含めた人類存亡を懸けてセンチネル軍団と戦う未来の世界と、その発端となった出来事を防ぐために70年代の世界にタイムトラベルした(正確には過去の自分の身体に未来の自分の意識を送り込んだ)ウルヴァリンが『~ファースト・ジェネレーション』の10年後の世界で、若きチャールズやハンク達とともにミスティークやマグニートーの計画を阻止すべく奮闘するという物語。

 『~フューチャー&パスト』は、旧シリーズと新シリーズのキャスト揃い踏みという、ネタ的には最もおいしい素材の作品ということでそれだけで十分エモいわけですが、本性を現してきた70年代のストライカーや若い頃のトードの他、X-MEN作品ではこれが初登場となるクイックシルバーの存在も「来たなw」と思わせるものがあり、当時そんなテクノロジーがあったんかぃ…とツッコミたくなるウルトロン軍団…もといセンチネル軍団の造形の格好良さも魅力でした。

 そして今作でも(正確には前作と今作の間で)エリックは大切な仲間を人間の非情な行いによって失い、マグニートーとなり人間と敵対することとなるわけですが、前作での実験室?の描写と同様に「ミュータントが人間に何をされたか」を直接的に見せるのではなく、記録や保管されているパーツなどでそのおぞましさを表現するという手法がなされていました。

 家族や仲間を大切に想う善の心が本当はとても強いエリックだからこそ、その道を選ばなければならなかったというのがこの若返りシリーズではよく伝わりますし、マイケル・ファスベンダーがまたこういった「苦悩する男」役が似合うんですよねぇ〜。

 マグニートーが本気になったときのパワーのエグさ、カメラを通して語りかける言葉に重ねて映し出されるのは、未来の世界で次々と仲間がセンチネルの犠牲になっていく姿。この因果関係とディストピア感、エモさ満載です。

 さらに言えば、個人的に超大好きな『X-MEN2』でのマグニートーの脱獄シーンを彷彿させる、小さな鉄球2つを操って警備員を倒す場面が出てきたのもたまらないものがありました。

 映画としての完成度は前作ほどではないものの(というか前作が良すぎたからそう感じるのかも…)70年代のファッションやカルチャー、出来事などを織り交ぜた世界観は前作同様に見応えがあって面白い作品でした。

 

『X-MEN:アポカリプス』

© 2016 – Twentieth Century Fox

X-MEN:アポカリプス』の場合

 前作『~フューチャー&パスト』のエンドクレジットのところで登場した、石を宙に浮かせてピラミッドを造るミュータントを見た時点で「げっ、次ってこの路線かよ…」とちょっとガッカリしたのを覚えています。

 正直言ってあの太古のミュータント・アポカリプスというキャラをラスボスにする設定は面白くはなかったのですが、それでも最初にも書いたように「いい部分がちゃんと存在」する作品なので、前二作と比べたら少し落ちるものの、十分楽しめるものでした。

 若き日のストームやサイクロップス、ジーン、ナイトクローラー(旧作のナイトクローラーとはおそらく別設定)の登場や、再び同じような笑かしキャラの扱いで登場する(でも新事実が判明)クイックシルバーの存在などは何だかんだで見ていて楽しく、さらにサイクロップスの兄である“第一世代”・アレックス=ハボックの死や、CIAのモイラとチャールズの関係も『~ファースト・ジェネレーション』『~フューチャー&パスト』からの繋がった物語としての印象づけがより強まっていて、シリーズものの良さが表れていたように感じられました。

 またウルヴァリンに関しては、前作『~フューチャー&パスト』以後の世界と旧シリーズでの設定を結合させる展開となっており、そういった意味でもこの作品は新旧シリーズを繋ぐ意味でも重要な役割を担っているものとなっていたように思います。

 そして何より、今作でまたしても一番大切なものを人間たちに奪われてしまうエリックの絶望感と、その後の行動については(良いか悪いかは別として)本人の中では完全に筋が通っており、感情移入せずにはいられないエモさがありました。

 アポカリプスは「強いけど魅力のないキャラ」だったのですが、そのぶん最後X-MEN軍団にストームとマグニートーも加勢する展開はある意味すっきりする流れとなってそれはそれで良かったし、今回もマグニートーの強大さは存分に描かれていたので個人的にはそれを見るだけで結構満足できたりして(笑)。

 ただ最後はジーンの覚醒によってアポカリプスを倒す──というオチについては、若返りシリーズではこの作品がジーン初登場ということもあってキャラの作り込みが足りておらず、クライマックスとしての深みが今イチ足りなかったように感じたのもまた事実…。

 おそらくコミックを読んでいる人たちには伝わるんでしょうけど、自分も含めて映画しか見ない人にとっては「うーん」といったところでしたね…。

 

 

 そういった感想を引きずっていたので今作『~ダーク・フェニックス』には期待していなかったのですが、ジーンのキャラの作り込みはおろかジーン以外のキャラも全然良さを引き出せていなかったように感じられました。。

 レイブンは妙に薄っぺらい描かれ方をされていた上、まるでエモさを伴わないほとんど無駄死にのような死に方をしてしまうし、マグニートーはその圧倒的な強さが今回全く描かれていないばかりか、過去3作で見られたような、人間相手に能力を使う際の格好良さもほとんど見られません。

 またハンクについても内容の割に出番が少なすぎて、自分がこのままチャールズのもとでX-MENとして居続けることへの葛藤だったり、レイブンを失ったことの悲しみや怒りといったものがそれほど伝わってきません。。それはサイクロップスについてもまた然りという、物語を動かしていく主要キャラがどうにもピリッとしないのです…。

 本来なら物語の要所要所でエモいシーンがあって、それが波のようにうねって静と動のコントラストを持ちながらクライマックスの大盛り上がりに向けて進んでいく──といった展開になるのがこの手のジャンルの映画でのいい流れだと思うのですが、この『~ダーク・フェニックス』では全然そのようなコントラストは生まれないまま、何だかガチャガチャ暴れているうちに映画が終わったような感じ…。

 ジーンの実家でのX-MENとの衝突も、エイリアンの隠れ家での戦闘も、列車でのエイリアン軍団とX-MENたちとの戦いも、どれもこれも今イチでテンションが上がらない。。。

 どうしようもないくらいに強い敵がいるわけでもなく、マグニートーは強さが見えず、肝心のジーンも100%ダーク・フェニックスに支配されているわけではないから力は完全に解放していないし、ジェシカ・チャスティンたちエイリアン軍団(そもそもどれくらいいるのかも不明)も、強いんだか弱いんだかよく分からないといった始末。。要はメリハリがないんですね。。

 

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