【12モンキーズの原点?】映画『ラ・ジュテ』──タイムリープ系の良作⑤【With The Beatles】

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 1962年の短編フランス映画『ラ・ジュテ』は、ほとんど全てがモノクロの静止画の繋ぎ合わせによって構成された異色の作品。テリー・ギリアム監督の1995年の映画『12モンキーズ』はこの作品にインスパイアされて作られたとのことで、多くの共通する要素を見つけることができます。(オープニングでブルース・ウィリスが地上に探索に出ているシーンでクレジットが出ています)

 というか『12モンキーズ』の骨組みはほとんどこの『ラ・ジュテ』そのものといった印象ですらあります。

 

映画『12モンキーズ』──タイムリープ系の良作③【キャサリンはジェームズのことを知っていた?】
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 今から2年前の2018年1月にシネフィルWOWOW(現在のチャンネル名はWOWOWプラス)で大塚明夫ナレーションver.が放送されたのを録画してあったのですが、そのことをすっかり忘れていて(笑)先月ザ・シネマで字幕版が放送されたタイミングでようやく鑑賞となった次第です。

 「インターネット・ムービー・データベース」では★8.3(10点満点中)の高評価であることも納得といった感じで、今さらながらもっと早く見ていればよかったなと思いました。

『12モンキーズ』で取り入れられた要素

 『ラ・ジュテ』の英語版Wikipediaには

『12モンキーズ』は『ラ・ジュテ』からインスピレーションを受け、幾つかのコンセプトを直接借用しています

 と書かれていますが、確かに上映時間28分という短い映画のかなりの部分が『12モンキーズ』に反映されています。

気づいた部分をざっと挙げただけでもこれだけありました。

 

【物語の設定・展開に関して】

・大惨事が起きて世界は崩壊し、地上に人が住めなくなった近未来

・生き延びた人類は地下に暮らしており、その世界の支配者たちは被支配者を過去にタイプトラベルさせ、過去から必要なもの(情報であったり薬や食料であったり)を調達することで人類の滅亡を防ごうとしている

・主人公の男は子供の頃に見た、とある記憶が頭を離れない(『12モンキーズ』ではその記憶は夢として現れる)

・その記憶とは空港で起きた出来事で、ひとりの美しい女性が登場する

・過去へ行った男はその女性と知り合うこととなり、やがて愛し合う

・タイムトラベルで成果を上げた男は自由の身になるチャンスを得るが、過去の世界へ行きそこで女と生きることを選ぶ

・過去の世界へ行った男のもとへ未来から追跡者が来る

・男は空港で撃たれて死ぬ

・その様子を幼い頃の男が見ている(それが彼の頭にあった「記憶」だった)

 

【ビジュアル面での共通する要素】

・男を過去に送る未来人の特徴的な眼鏡

・空港という場所

・都会のなかにいる野生動物たち(『ラ・ジュテ』では剥製)

・壁に描かれた不穏な落書き

 

 うぅむ……こうして書き出してみると被り方がハンパないですね。。こういった「元ネタ」があったことを知ると『12モンキーズ』の印象もだいぶ変わってくるような気がします。(もちろんそれが『12モンキーズ』の評価を落とすとかそういうことではなく)

 あと、物語の中で直接重大な意味を持つわけでもないのにも関わらず、上映時間の短さから考えても不自然なほどに博物館のシーンが長いことも少し気になりました。

 ここにどういう意図が込められているのかは分かりませんが『12モンキーズ』でもウィルスがばらまかれた直接の原因ではない野生動物が印象的に登場したり、タイトルも含めて「モンキー」という単語が何度も出てくるのでこういった要素も意図的に取り入れてあるように感じられます。

 「この映画には実は元ネタがあった」という話でいえば、個人的にはレオス・カラックスの『ポーラX』が思い浮かびます。こちらは元ネタであるハーマン・メルヴィル(『白鯨』で知られる作家)の『ピエール』という小説を原作とした映画だったのですが、いささか非現実的でいかにもレオス・カラックスらしい内向的かつ衝動的な展開を辿るあの作品が、実はほとんど原作に忠実な映画であったことを知ったときは非常に驚いたものでした。

 ちなみにこの『ポーラX』については、クソ長い(笑)感想を4つに分けて書いていたりしますので、もしご興味がありましたらそちらもどうぞ。

 

【レオス・カラックス】映画『ポーラX』──公開から20年。①映画と原作となった小説との関連について【本棚通信⑦】
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【レオス・カラックス】映画『ポーラX』──公開から20年。②原作・関連書籍も絡めて振り返る【本棚通信⑧】
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【レオス・カラックス】映画『ポーラX』──公開から20年。③「感想、または諸々の曖昧さ」【わが心のイザベル】
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【レオス・カラックス】映画『ポーラX』──公開から20年。④「尊き天使(みつかい)と悪しき天使、そしておわり」【さよならカテリーナさん】
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全ては決められていた

 未来から時間を越えてやってきた者と、現在の世界に住む者とのロマンスというのは、両者は本来同じ世界に存在できない存在であるため、多くの場合は悲しい結末を迎えることになりますが、今作もやはりそういったエンディングとなってしまいます。

 『12モンキーズ』でもそうですが、

①子供の頃に見た光景の記憶が頭を離れない主人公の男

  ↓

②その記憶がタイムトラベルに関係する

  ↓

③過去の世界で記憶の中の女と出会い、共に生きる選択をする

  ↓

④女の目の前で殺される

  ↓

⑤その光景をその時代に存在していた子供の頃の自分が目撃する

  ↓

①に戻る

 主人公はこういった「逃れられない運命のループ」の中にいて、結局この輪の中から出ることはできませんでした。

 ③で取った選択についても自身の自由意志ではありますが、それもこの運命のループの中の「すでに決められていた選択」であったとも言えそうです。

 全てははじめから結末(それは始まりでもある)が決められていたという、悲しい物語なわけですね…。いかにもフランス映画らしい終わり方という気もしますが。

 被支配者として過酷な環境に置かれ危険な研究の実験台とされるも、それを乗り越え結果として人類を絶滅から救う働きをする主人公。だが男が生きる地下世界ではそんな彼も結局は用済みとなり殺される運命──

 そこから救いの手が差し伸べられるも、男は未来よりも過去の世界へ行くことを選択し、数年間しかないことが分かっている平和な時間を愛する女と生きたいと願います。ですがその願いは最後の最後で叶わぬものとなってしまうという。。

 その成就しない結末も、結局は運命のループという時間の歯車に完全に噛み合っている行為・選択であり、物事を動かす力点のひとつ(この場合は男のタイムトラベルに耐えうる能力の源)だったという事実。

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