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【ネタバレなしの感想】映画『蜘蛛の巣を払う女』──オープンソース化したリスベット

投稿日:2019年1月30日

 

 スウェーデン発のベストセラー小説『ミレニアム』シリーズを映画化した「ミレニアム3部作」(『ドラゴン・タトゥーの女』『火と戯れる女』『眠れる女と狂卓の騎士』)のヒットを受けて、デヴィッド・フィンチャー監督によるハリウッドリメイク版『ドラゴン・タトゥーの女』が公開されたのが2011年(日本では2012年)。

 その後、続編を望む声が高まるものの「興行成績的にはどうのこうの」「D・フィンチャーがうんたらかんたら」といったマイナス的な要素ばかりが話題にのぼり、続編はもうないのかと思っていたところでの、この続編。

 D・フィンチャーは製作総指揮にまわり、リスベットもミカエルも別の俳優、さらに肝心の内容も『ミレニアム』シリーズの2作目ではなく、原作者スティーグ・ラーソンが途中まで執筆していたものを別の作家が引き継いで完成させたという『ミレニアム5 蜘蛛の巣を払う女』が元となっている……という、期待していたものとはいろいろな面で違う形での続編公開となりました。

 果たしてどうだったのか、ストーリー的なネタバレなしでの感想です。(登場人物や設定などについての記述は多少あります)

 

率直な感想

 まず率直な感想としては、面白いことは面白い、です。(期待していなかったからっていうのもありますが)

 ですがやはり「ちょっと違う気がする…」と感じる部分があったり、これまでの4作と比べて上映時間が短い(1時間58分と普通の映画並み)ためかストーリーを展開させるだけで手一杯といった感じで、リスベットをはじめとした登場人物の心理的描写や恋愛的な感情、ミカエルとの信頼関係などが伝わる描写が非常に少なく感じられました。

 そのため映画を見ていて今イチ感情移入できず、この事件の起承転結をスピーディに見せられて終わったような印象でした。

 

で、ここからあーだこーだ書いていくわけですが、いろんな理由(キャスティング、監督、内容もろもろ)をさておいても、とりあえず物語が小説『ミレニアム』の1から4にワープしていること、その4が作家本人が完成させた物語ではないこと、そして何よりもまず『ドラゴン・タトゥーの女』が“謎解きミステリー”としてずば抜けて面白いというアドバンテージがあるので、それと比べることがそもそも酷なのでは…という気もしています。

 ただしスウェーデン版のほうは2・3も非常に面白いのであまりフォローにはなっていませんが……(笑)

 

リスベットのキャラクター設定

 今作のリスベット・サランデル役には、Netflixのドラマ『ザ・クラウン』でエリザベス2世を演じたクレア・フォイが抜擢されています。ノオミ・ラパスルーニー・マーラのような華奢な印象はあまりなく、それだけでもリスベットの持つ「強さと繊細さ」みたいなものが弱まっているようにも感じられるのですが、それはまぁいいとして、とにかく気になったのはリスベットのハッカー以外のスキルの高さです。

 これまでの作品でもハッキングや記憶力など驚異的な能力については十分描かれてきましたが、フィジカル面での戦闘能力的な部分では(小柄な女性なので)決して彼女は飛び抜けて強いというわけではありませんでした。

 それが今作では工作員なみの戦闘能力・バイクや車の運転能力を持っていて、さらにテクノロジーの進化も相まって「何でも出来るすごい人」として描かれており「ここまで来ると凄腕ハッカーというよりはスパイとか特殊工作員のレベルだろ」っていうキャラに見えてしまいました。そりゃスパイ映画だったらあっと驚くハイテク武器なんかも出てくるしそれだけで面白いわな……

 またリスベットは攻撃的な性格のため(もちろんそれは自己防衛からくるものでしょうが)強い部分は持ち合わせていても、それでも女性らしいか弱さというか非力さみたいなものがあったのに……原作を読んでいないので何ともですが、このリスベット像はこれでいいんでしょうか(笑)。

 

ミカエルの優男感ときたら…
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オープンソース化したキャラクター

 先に書いたように、前作と配役が全く変わってしまいましたのでリスベットもミカエルも別人感がハンパないんですが(とくにミカエル)、でも一度それを受け入れてしまったら「もうそれはそれでいいんじゃないか…」という考えに変わってきました(笑)。

 ルーニー・マーラダニエル・クレイグのコンビはD・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』の1本だけですし、そもそもそれだってハリウッドリメイク作であって、ノオミ・ラパスミカエル・ニクヴィストのコンビで作られたオリジナルの3作のイメージが元々強かったので、当初は「ミカエル格好良すぎだろw」などのツッコミも多数ありましたし。

 

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 ですので、もうこうなったらリスベットとミカエルのふたりはオープンソース化したものと考えて(笑)、「役のイメージが世に浸透しているならば誰が演じても成立する」という演劇的な感覚で、その時代時代で好きなようにやっていけばいいんじゃないの?と思えてきました。ある程度人物像のフォーマットから外れてなければそれぞれの解釈で演じていいのではないか、という。。

 逆に言えばリスベットというキャラクター、そしてミカエルとの組み合わせは、それそのものが魅力なのであり、役者のイメージでどうこうしてしまうものではない、というところまでキャラとして確立されているような気がしました。もちろんこれはあくまで個人的な感想ですが。。

 

オープニングについて

 D・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』で、まずいきなりガツンとやられたのはやはりあのクソ格好いいオープニングでしょう。こちらの動画から見られますが、高評価と低評価の数字を見ればイケてるかどうかは一目瞭然。

 で、今作ではD・フィンチャーは製作総指揮となり、監督は丼…もとい『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレスが務めましたが、オープニングは『ドラゴン・タトゥーの女』を意識したような感じになっていました。まぁ格好良かったとは思いました。

 ただ前作のあの黒光りするオープニングが『移民の歌』のカヴァーとの組み合わせも相まってめちゃめちゃ格好よかっただけに、それと比べるとそこまででは…という印象でした。曲も『移民の歌』のようなエモーショナルなものとは違うタイプでしたし。

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三崎町三丁目通信の主筆・Kです(個人運営ですが)。映画の感想を中心に、趣味で続けているスペイン語学習(DELE A2取得で止まっています)と最近始めた英語学習のことなどを書いています。本業はフリーランスのグラフィック&エディトリアルデザイナー。びっくりするくらい将棋が弱いです。

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