キャスティングの絶妙さ
散々語られ尽くしたことだと思いますが、かつて『バードマン』というヒーロー映画で人気を博した俳優リーガンを演じるのが、かつて『バットマン』を演じたマイケル・キートンというのがまず何と言っても絶妙で、そのマイケル・キートンも今作から3年後に『スパイダーマン:ホームカミング』で空を飛ぶヴィランのバルチャーを演じることになるというのも実に面白いところです。
序盤に『アイアンマン』が大当たりしたロバート・ダウニーJr.のことを軽くディスる場面も出てきますが、その『スパイダーマン:ホームカミング』でのマイケル・キートンの役は『アベンジャーズ』でのNYの戦いの後でその瓦礫撤去作業を請け負っていた会社の社長が、スターク社と米政府が共同設立した組織「ダメージ・コントロール局」の突然の命令によって失職してしまったことで絶望して悪の道に入ってしまった男なので、この映画でもトニー・スターク(=アイアンマン=ロバート・ダウニーJr.)を憎んでいるという設定でした。
ちなみにアイアンマンやスパイダーマン(の冴えないwコスプレ)は今作の中にちらっと登場します。
さらにリーガンとは何かにつけ対立するマイク役がMCUでの初代ハルクであるエドワード・ノートンであることや、サム役のエマ・ストーンが『アメイジング・スパイダーマン』シリーズでピーター・パーカーの恋人グウェン・ステイシー役をやっていたり(しかも今作の撮影と『アメイジング・スパイダーマン2』の撮影時期が被っていたとのことw)と、狙っているのかいないのか不明ですがニヤッとするキャスティングとなっています。
その他にも、台詞の中で大根役者ラルフの後釜についてマイケル・ファスベンダー(X-MENの撮影中のためNGらしいw)やジェレミー・レナー(こちらもアベンジャーズのホークアイ)の名前を出していたりと、かつてのヒーロー映画のイメージしか持たれていないことを嘆いているわりには出てくる名前が「そっち側の人」ばっかりというのが何とも(笑)。
エドワード・ノートンについては、パンツ一丁でマイケル・キートンと殴り合いの喧嘩をする場面が『ファイト・クラブ』に影響を受けた野郎どもをガッカリさせるのに十分なショボさ加減(笑)でなかなか笑えるものがありましたし、「俺を降ろしてライアン・ゴズリングに代えるか?」なんていう台詞もあったりして、今作の2年後にライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの主演で幻のオスカー作品賞受賞となった『ラ・ラ・ランド』にこんなところで繋がってくるという面白さもありました。(いや別に繋がってはないけどw)
ナオミ・ワッツについては好きな女優だけに書くと長くなるので割愛するとして(笑)、リーガンの親友ジェイク役のザック・ガリフィアナキスは『ハングオーバー~』シリーズが有名なのかもしれません。が、このシリーズほとんど見ていないので(笑)、自分が知っている作品だと2000年代の半ば頃に大好きで全話見ていたドラマ『トゥルー・コーリング』のデイビス役の人として覚えています。
主人公トゥルーの能力を知っていて協力してくれる遺体安置所の所長です。面白かったんだけど打ち切りになって終わったのがとても残念でした。まぁ後半は「トゥルー・コーリング」というよりは「ジャック・コーリング」になってましたからね…
音楽と映像について
狭い劇場の舞台裏を被写体と一緒に移動しながらの長回しと、音楽を担当したアントニオ・サンチェズによるドラムのリズムが、生の動きにリンクするような映像とシンクロしていてどこか落ち着き無くせき立てられるような緊張感が伝わってくるようでした。
またオープニング&エンディングクレジットの文字の出方もNYっぽいというかジャズテイストが出ていて実にカッコいいです。
ポスタービジュアルなども含め、これがヒーロー映画系のものではないことはこういうところからもはっきりと分かりますが、どうやらアメリカではアメコミヒーローものの映画だと勘違いしてがっかりした人も結構いたみたいですね(笑)。
撮影監督は『ゼロ・グラビティ』や『レヴェナント:蘇りし者』でも撮影監督を務めたエマニュエル・ルベツキで、今作でアカデミー撮影賞を受賞しました。作品賞とこの撮影賞のほかに、監督賞と脚本賞の計4部門を受賞した今作ですが、前述の「ラストシーンの解釈」について大変重要な役割を果たすサムの演技を考えると、助演女優賞をエマ・ストーンが受賞していてもおかしくなかったようにも思えます。
…が、この年の助演女優賞を受賞したのがリチャード・リンクレイター監督作『6才のボクが、大人になるまで。』のパトリシア・アークエットだったことを考えると、それもまぁ仕方ないかなという気もしてきます。
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