映画『ロスト・イン・トランスレーション』──マニックスのMV、そして『TOKYO-POP』へと遡るトーキョー異邦人物語

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※タイトルと本文内で「PV」としていた箇所は「MV」に修正しました。PVでも間違ってないとは思うのですが、よく考えたら今はMVと表記するほうが自然なのかなということで。

 今からおよそ15年ほどの東京を舞台とした、2003年公開(日本では2004年)のソフィア・コッポラ監督作品『ロスト・イン・トランスレーション』──

 撮影・公開時からは想像もできないほど多くの外国人が日本を訪れるようになった今、改めて見てみると、当時と今とでは東京の街並みも雰囲気も結構変わっていることに気付かされるとともに、主人公たちの心境なども以前よりも理解できるような気がします。

 ここではそういった「当時と現在の違い」「改めて気付いたこと」、そして素晴らしいサントラよりシューゲイザー好きにはたまらない2バンドの楽曲について、さらに今作の前に存在していた「『ロスト・イン・トランスレーション』っぽさ」を感じるマニック・ストリート・プリーチャーズのMVと、80年代に公開された田所豊(ダイヤモンド☆ユカイ)主演の映画『TOKYO-POP』についても触れていきます。

 

 

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映画の中の「東京」と「日本」

 スカパーなどで放送されるごとに見ているのでとくに久しぶりといった感覚もないのですが、それでも数年おきに見ると、その度にこの映画の中の東京が「今とは違う、少し昔の東京」になっていき、少しずつ今から遠くなっていくような気がします。

 そして、ここで描かれている「日本」については誇張している部分も結構あるわけですが、それでも大部分はその通りといった感じです。少なくとも外国人(ここではソフィア・コッポラ)の目にそう映ったのであれば、それは彼らにとっての事実なのでしょう。

 そして「恥ずかしいから日本のそんな部分を映画に出さんでくれ」「そんなところに気付かないでくれよ…」という面も映画の中にたくさん出てきてしまうわけですが、それらも実在する(した)ものなので仕方がないとしか…(笑)。マシューも別にこの映画用に作られたキャラではなく、当時そのまんまあれをやっていましたし、英語が分からない人が相当数いるのは当時も今もほとんど変わっていないでしょう。

 また、外国人が撮る「現在の日本」はとかくトンデモ系になりがちですが、ソフィア・コッポラのすごいところは、そういったトンデモ系によくある「“日本ってこういうところなんだろう”という思い込みが抜けないまま日本にやってきて、そのフィルター越しに日本を見てしまう」という残念な部分が全くなく、自身が日本に居たときの経験を余計なフィルターを通さずに引き出していることだと思います。

 年月がだいぶ経ってしまって、2018年現在ではどうしてもリアル感が薄れてきてはいますが、それでも日本をよく知らない外国人に「東京ってこういうところだよ」と説明するツールとしても非常に優れた“記録”となる作品なのではないかと…。

 まぁ今だったらYouTubeに外国人旅行者&居住者が撮った日本の動画がいくらでもUPされてるのでそれで事足りるのでしょうけどね(笑)。

 

 あと何度見てみても、やはり今作でのスカーレット・ヨハンソンは素晴らしい…。まずその若さにクラクラするのと(笑)、有名俳優であるボブや、カメラマンの夫(とその取り巻き)などの“業界人”たちと違い、大学を出たての一般人という役なので、普通の人っぽく見えるように演じるその仕上げ方はさすがだな、と。メガネとかのアイテムに頼らないところもいいです(笑)。

 

© 2003 Focus Features

 

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今回気付いたところ・その①

 意思疎通が出来ず、異国の高級ホテルの中で迷子のようになったボブ(日本という異文化の国、言語の問題による直接的なコミュニケーションの断絶、人々の行動や習わしの大きな違い、25年連れ添った妻ともお互いの意思疎通が出来ていない→妻にとっては息子の誕生日を忘れる夫、夫にとっては仕事や時差など、こちらの都合を全く顧みずに自身の要求をただ投げてくる妻と映る)が、同じ孤独感を共有するシャーロットと親しくなっていきますが、中盤の街へ繰り出す前の部屋での会話などでも「意思疎通」できることの喜びが出ているように見えました。

 

 

 普段だったらいちいちそんな会話しないだろう、という「これ誰のCD?」「君の靴は?」「キーは?」「カバンは?」といった、極々当たり前の会話のキャッチボールが普通に成立すること、そして「背が高いわ」というシャーロットに「君が低すぎるんだよ」と返す軽口も、軽口としてのニュアンスを理解してくれることに安心し、喜んでいるように感じられました。

 また夜遊びの流れからのカラオケの場面、中年のボブにとっては少々しんどそうに見えるものの(笑)、ここでは二人がようやく発散出来て楽しんでるように感じられて、見ていて安心します(笑)。

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