映画『リトル・ヴォイス』(’98)──周りの毒っ気はもう少し控えめでもよかったかも【ジェーン・ホロックス】

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 1998年制作・99年公開のイギリス映画『リトル・ヴォイス』は、主演を務めるジェーン・ホロックスの類いまれな才能──ジュディ・ガーランドやマリリン・モンロー、マレーネ・ディトリッヒやシャーリー・バッシーなどの声色をそっくりに真似て歌うことができる──がこの映画の大きな魅力……というか彼女のその才能ありきで作られた映画と言えるかもしれません(それについては後述します)。そういえば中盤ではシャーリー・バッシーが歌う『007 ゴールドフィンガー』のテーマ曲も流れていましたね。

 エンドクレジットでは、彼女の名前のところに以下のようなクレジットがつけられています。

Jane Horrocks
Performed All Her Own Songs

 自室での歌声もステージでの熱唱も、全て彼女本人のものというのだから驚きです。もちろんその全てがオリジナルの歌声に瓜二つとまでは言いませんし、自分も元ネタを全て知ってるわけでもありませんが、それでもこれだけ声質の違う人たちの声や歌い方をそっくりに再現できるのだから、ただただすごいと言うしかない圧巻のパフォーマンスです。

 と、そんなジェーン・ホロックスさんの才能が映画の大きな売りではあるのですが、この映画が心に刺さる部分はそれ以外のところにあるのではないかと思っています。それは、

「ある理由から外へ出ることを拒み、鳥かごの中の鳥のように部屋に閉じこもって生きているヒロインが、悪い大人たちによって心を傷つけられその居場所を失うも、最後に心優しい素朴な若者によって外の世界へと踏み出してゆく」

 という現代のおとぎ話のようなストーリーと、主人公「LV」の内気で恥ずかしがりやな非リア充キャラがとにかく可愛いという点。こういうタイプのヒロインに弱い野郎ども(笑)にとっては、このLVと呼ばれる女の子はかなり琴線に触れるキャラだと思われますので、そこに魅力を感じた人はきっと多いことでしょう。まぁ自分だけかもしれませんけどw

 また共演にはユアン・マクレガーマイケル・ケインといった有名どころが名を連ねており、他にも「この人どっかで見たな~」という人もチラホラ登場します。ユアン・マクレガー扮するビリーの同僚ジョージ役の人はユアン・マクレガー主演の映画『ブラス!』にも出演していますね。

 

 

 ユアン・マクレガーはこの時期『ブラス!』『普通じゃない』『リトル・ヴォイス』といった「シャイで素朴な男」みたいな役が続いていた時期だったのでしょうかね。

 といっても『普通じゃない』の役柄は他の2作と比べるとキャラも映画のノリもだいぶ違うし、同じ時期に『ベルベット・ゴールドマイン』に出ていたりもするようですが…。キャリア的には便器に潜るヤク中ジェダイの騎士の中間頃の作品、です。

 

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 マイケル・ケインに関しては多くの有名作に出演しアカデミー賞主演男優賞に何度もノミネートし、助演男優賞は二度受賞している大御所。

 私が今回この『リトル・ヴォイス』を見たのは「ひかりTV」の配信レンタルからですが(昔録画したDVDはレコーダーが壊れて見られなくなったので)、これを見終わってテレビの画面に戻したら「ザ・シネマ」で『ダークナイト・ライジング』が放送されていて、ちょうどマイケル・ケインが映っていました(笑)。あと今の時期「ザ・シネマ」では『インターステラー』も放送されていますので、ここでもその姿を見ることができます。

 

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良くも悪くもイギリス映画

 最初に見たときはLVのキャラがとにかく可愛かったのと、非リア充同士(笑)のビリーとの微笑ましい距離の詰め方に萌えた(死語?)わけですが、改めて見てみると母親マリーの下品かつ自分勝手な振る舞いや、徐々に本性を現して後半は自身の金儲けのことしか考えず、LV以外にもマリーやミスター・ブーといった周りの人たちへも酷い態度を取ってしまうレイ・セイのゲスさなどが実に不快に描かれている点に意識がいくようになり、ひとつの映画としてちょっと勿体なく感じました。

 彼ら「悪い大人」たちをこのように徹底的に下品でゲスいキャラとして、皮肉たっぷり&辛辣に描くところはさすがイギリスといった感じでそれはそれで悪くないと思うのですが、最後まで彼らは改心もせず救われもせず、どん底に落ちてしまうため(レイの行く末は「闇金ウシジマくん」のような展開しか考えられないw)、LVをはじめとするライトサイドの純粋さとダークサイドの闇とのコントラストが強過ぎて、おとぎ話として楽しむには毒っ気が強すぎる印象なんですよね。

 いっそのことアメリカの某D社(スター・ウォーズやマーベル映画も手中に収めるあのD社)の映画みたいに、ファンタジー路線の作品として子供が親と一緒に見ても楽しめる作りにしても良かったのかも…という気もしないでもないというか。

 もちろん個人的にはステージでのグダグダな司会進行や、「テイク・ファット」とかナイフ投げの老夫婦などといった目も当てられないクオリティの出演者wだったり、絶望の末ヤケクソで「It’s Over」を絶唱するレイ・セイにミスター・ブーが

 

自らの破滅を歌い上げました

 

 という冷静wな解説を被せるところなど、笑いの種類して決して嫌いではないんですけど、両極端なものを詰め込んでしまうと良さを潰し合ってしまうのかなぁと…。

 

©MIRAMAX
ビル・マーレーとイライジャ・ウッドを足して割ったような顔のミスター・ブー(右)とマイケル・ケイン扮するレイ・セイ(左)

 

 電話が鳴っているのにどうしても受話器を取れずにフリーズするLVとか、そこへやってきたビリーと二人、挙動不審同士wモジモジしながら何も言えずに見つめ合うところとかめちゃくちゃ可愛いんですが、そこへやってきたマリーが言う

 

「この大騒ぎは何なの」
 
「やめて! 鼓膜が破れそう~」

 

 という皮肉も腹立つのと同時にすごく面白いんですよね(笑)。

 こういうレベルで抑えておいてくれたら適度な毒として物語が引き立って良いのでしょうけど、マリーのあの下品さは見ていてツラいものがありました(笑)。

 LVとビリーは最後までシャイなままなので当然キスシーンなんてものはありませんでしたが、代わりに私たちが散々見せられるのは色欲BBAのキスシーンばかりという(笑)。こっちこそ「やめて!」と言いたいw

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