その他の感想、小ネタなど
ここまでちょっと大真面目すぎたところもありますので、この先はちょっとした部分の感想や小ネタなどを書いて〆ようと思います(笑)。
ジェット機
オープニングで掃除されて水が流された床にジェット機が映ります。大空を飛ぶ飛行機は自由と豊かさの象徴のようでもありますが、このときは床の水に映るだけの、全く関係ないどころか実体すらないような、そんな存在でした。
ですがエンディングで、屋上への階段を昇るクレオを下から見上げる視点の後ろに飛んでいくジェット機は、モノクロームの映像はありますが美しい青空を横切っていく姿に、この「家族」の新たな人生に何か希望的なものを見るような爽快さが感じられました。
でもどちらもさりげないのがいいですね。少なくとも画面の映り込みで言えば、飼い犬ボラスのウ●コのほうがインパクトは大でした(笑)。
なおジェット機は他にも、片足立ちのソベック先生が見本を見せる場面でも飛んでいます。
ペペとクレオの会話
屋上で洗濯していたときのペペとクレオの
“No puedo, estoy muerto.”「できない、だって死んでるもん」
“No puedo, estoy muerta.”「できない、死んでるもん」
というやり取り。微笑ましいのと同時に二人が仲良しなのが分かる、可愛くてほっこりするいいシーンです。また、ソフィアに妊娠していることを告げた場面で、心配したペペが
“Sana, sana, colita de rana Si no sanas hoy, sanarás mañana”「痛いの 痛いの 飛んでけ」と、クレオのお腹をさするところも可愛すぎます。
なおこの歌は子どもが怪我したり具合が悪いときにお母さんが歌ってあげるお馴染みのものらしく、「sana」は「健康な/元気な」という意味で「colita de rana」は「カエルのお尻」で、尻尾を意味する「cola」の縮小辞が「colita」です。カエルには尻尾はないので「お尻」の意味になります。そしてそのあとのフレーズは「今日は元気じゃなくても明日にはよくなるよ」といった意味です。
ちなみにメキシコ人はとにかく何でもかんでも縮小辞にして愛称で呼ぶイメージがありますが、ツイッターを見ていると本当にそうなので面白いです。「縮小辞」というのは例えば関西方面で「飴」を「あめちゃん」と言ったり、東北方面で「お茶する」を「お茶っこ」と言ったりするように、親しみを込めてちんまりさせた表現…とでも言いますか、まぁそんな感じです。
スペイン語ではありませんがロナウドの縮小辞がロナウジーニョで、意味は「小さいロナウド」というのは有名ですよね。スペイン語では語尾を「~ito」「~ita」とします。
スーパーで「チキータ」という名前のバナナが売られているのを見たことがあるかもしれません。それも縮小辞で、女の子・少女を意味する「chica」の縮小辞が「chiquita」(この場合スペルが変化します)だったりします。なお「バナナ(banana)」という単語が女性名詞だから「chiquita」になっているだけで、とくに人間の性別でどうこうというのはありません。
メスカルというお酒
メスカル(mezcal)とはメキシコ原産の竜舌蘭の一種から作られる蒸留酒とのことで、多くの種類があり、メキシコと言えばテキーラ、というくらいにお馴染みのお酒・テキーラはメスカルの一種とのことだそうです。
アルコール度数が高く、瓶の中にグサーノ(gusano=イモムシなど蠕虫/ぜんちゅう)やサソリ(escorpión)の抜け殻が入ったものが有名、とのこと。
ちなみに私が使っているスペイン語の辞書には
“Para todo mal, mezcal, y para todo bien, también.”
「良きにつけ悪しきにつけメスカル酒」
というメキシコの諺が載っていました。先の”Sana, sana, colita de rana~”と同様、ちゃんと韻を踏んでいますね。
「………。ま、とりあえずメスカル飲もうや」みたいな感じですかね(笑)?
トゥインキー
最後のほうで「トゥインキーある?」という台詞があり、字幕では「ケーキ菓子ある?」のルビ(ふりがな)が“トゥインキー”だったのですが、このトゥインキー、ジェシー・アイゼンバーグとエマ・ストーン主演のコメディタッチのゾンビ映画『ゾンビランド』で、ジェシー扮するコロンバスと行動をともにしていたコワモテのタラハシーがずっと食べたがっていたお菓子で、向こうでは昔からある有名なお菓子みたいですね。日本は(身体にいいか悪いかは別として)お菓子の美味さは天下一品ですから、わざわざ高いお金出してまでアメリカの大味なお菓子を食べる機会もあまりないので個人的に馴染みは薄いです…。
【追記】
一体今まで何回見たんだろうか? というくらい、放送されるたびについ見てしまう『ダイ・ハード』と『ダイ・ハード2』の2本を惰性でまたなんとなく見ていたところ、マクレーンとパウエルとのやりとりにこのトゥインキーが出てきていたことに今更気付きました。
『ダイ・ハード』では無線でのふたりの会話で、そして『ダイ・ハード2』ではパウエルが実際に仕事中にトゥインキーを食べていました(笑)。いやー、気づかないもんだ…。網様体賦活系(通称RAS)の働きというものを改めて感じさせられました。。
日本といえば
フェルミンがフル○ンで(ここで無駄に韻を踏む)棒を振り回していたシーンで、最後に「アリガトウゴザイマシタ」と言っていました。
「武術と出会って俺は変わった」みたいなことを言ってたからどれだけ誠実な男なのかと思ったら、とんだクズ野郎でしたね。。
というわけで仕事が終ってから夜にちびちびと書き始めてから4日、ようやく書き終えたわけですが、その間にも幾つかのランキングで2018年のベストムービーに選ばれるなど、公開から数日で早くも大きな話題になっているようですので、2月のアカデミー賞でも注目を浴びる作品となることは間違いないでしょうね。今のアメリカとメキシコの関係、ハリウッドの映画界とトランプ政権の関係を考えたら格好の素材でしょうし…
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