三崎町三丁目通信

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映画『かもめ食堂』──サチエさんに学ぶ「引き寄せの法則」

投稿日:2018年11月29日

 

 2006年の映画『かもめ食堂』の舞台は、北欧・フィンランドの首都ヘルシンキに日本人女性のサチエがオープンさせた一軒の食堂。

 その「かもめ食堂/ruokala lokki」をめぐり、そこで出会う人々とののんびりしていながらもちょっと不思議な日常の物語──

 

 個人的に北欧、とりわけフィンランドという国に強い興味と好意を持っていた自分にとってはまさにキタコレ!的な映画だったので、公開時はすぐに観に行きました。

 そしてその翌年、ヘルシンキとストックホルムに一人旅する機会が持てたので、映画に出てきたあちこちの場所やロケ地になった「カハヴィラ・スオミ」にも行ってきたのでした。一応出発前に下調べはしていたものの、当時はスマホもなかったので見つけるまでに周辺を数回うろついたのも今となってはいい思い出です(笑)。

 

 訪れたのが5月下旬という、気候的にもちょうどいい頃で天気も良く、さらに夜11時くらいまで日が沈まないという、何もしなくても勝手にテンションが上がる(笑)時期ということもあって、楽しかった記憶しかありません。もちろん旅経験の不足と語学力のなさによる失敗や物足りなさはありますが、それを差し引いても期待した以上に自分にとって心地いい場所でした。

 ちなみに当時すでにスペイン語の勉強はしていましたが、同じく観光で来ていたスペイン人と少し話が出来たくらいであまり役には立ちませんでした。まぁそりゃそうだろって話ですが(笑)。

 

 

「カハヴィラ・スオミ」について

 映画の中で『かもめ食堂』として使われていた場所は、元々「カハヴィラ・スオミ」(カフェ・スオミ)として実際に営業されていたお店を、撮影の期間だけ改装してロケ地としてしたもので、そこのお店の方々も映画のラストのほうでエキストラとしてご登場されています。…ってか12年前の映画のことだし、そんなのとっくに知ってるよって言われそうですが念のためということで(笑)。

 なお「スオミ」とはそのものズバリ「フィンランド」という意味だそうです。19〜20歳頃に五木寛之氏の小説にハマった自分は、そういった知識だけは持っていたのでした(笑)。

 

 で、「そういえばそんなニュースを当時ネットで見たかも……」という曖昧な記憶しかないのですが、その“オリジナル”である「カハヴィラ・スオミ」は2015年に閉店し、2016年にフィンランド在住20年以上の日本人の方が新しいオーナーとなって「ラヴィントラ・カモメ」(かもめレストラン)として営業されているとのこと。ちなみにお店のサイトはこちら

 

 現在の「かもめレストラン」(いや、ここはやはり「かもめ食堂」と呼ぶべきか)も映画を見た人にとって人気のスポットであることに変わりはないのでしょうけど、「カハヴィラ・スオミ」が閉店されてしまったことを考えると、公開翌年にあそこへ行くことが出来て本当に良かったなぁと思います。

 私が行ったときは、おかみさんの妹さんが対応して下さったのですが(たしかご主人も厨房の中にいたような)、とても親切で優しくしていただき、非常に居心地が良かったことと、またそのときお店で働いていたバイトっぽい若い女の子が、その一週間の旅で目にしたたくさんの北欧美人の中でもダントツに奇麗だったことが、自分の中での「カハヴィラ・スオミ」さらにはヘルシンキ、そしてフィンランドそのものに対する好感度が爆上げされた要因のひとつでもありました(笑)。…っていうのはやや大袈裟ですが、基本的に街のどこへ行っても感じのいい人ばかりでした。

 

DVD-BOXと劇場公開時のチラシ、そして旅行鞄風のデザインになっているかわいいパンフレット

 

サチエさんは「引き寄せの法則」をマスターしている?

 というわけで、記事タイトルにも入れている「かもめ食堂」のオーナーであるサチエさんと「引き寄せの法則」の関係についてです。

 

 劇場鑑賞時はもとより、今回見直してみるまで全く意識していませんでしたが、この映画の主人公であるサチエさんの思考と行動は、いわゆる「引き寄せの法則」として語られていることそのものであることに気付きました。

 

 「引き寄せの法則」がどういったものであるかについては、ここではとくに説明しませんので「名前は聞いたことはあるけど結局なんなのかよく分からない」とか「前に実践してみたけど全然ダメだったからあんなの嘘だよ」とか「何それ美味しいの?」という方にとっては今いちピンとこないとは思いますが、ある程度真剣に学んでみたり取り組んでいる/取り組んでいた、という方であれば「あ、そう言われてみるとそうかも」と感じられる部分があるのではないかと…。

 

かもめ食堂をめぐるタイムラインと「引き寄せの法則」の作用点

 

サチエがヘルシンキに「かもめ食堂」をオープンさせて1ヶ月、まだ客は来ない。

時々3人組みのおばさんが外から様子を伺うが、それに気づいて軽く微笑んで会釈するサチエを見て立ち去る。

サチエ、店を出てプールに行く。

 うまく行っていないときは気持ちを切り替えてリラックスする

 

はじめてのお客・日本オタクのトンミ・ヒルトネンが来店。『ガッチャマン』の歌詞を教えてほしいと頼まれる。

お店の最初のお客さんとして、彼には今後もずっとコーヒーを無料とすることに。

 “感謝”がサチエさんにもたらす幸せのはじまりとなったのがココ

 

サチエ、本屋の2階に併設された「カフェ・アアルト」にいるミドリを見つけ、『ガッチャマン』の歌詞を教えてもらう。

 『ガッチャマン』がミドリと知り合うきっかけになる

 

サチエ、お礼としてミドリを家に泊める。

フィンランドに店を開くことにした理由をミドリに聞かれ、「ここならやっていけるかなぁと思った」「ここだったら自分でも出来るかなと思った」と答える。

 自分の直感を信じて、それに従って行動する。根拠のある・なしに関わらず、とにかく自信を持つ。

 

ミドリが「かもめ食堂」を手伝うことに。イラスト付きのメニューを書く。

 ミドリと出会い、親切にしたことがもたらした“ミドリ効果”その①

 

ミドリが観光ガイドに店を載せてもらうようにしてはどうかとアドバイスするも、方針に合わないからと却下。サチエ「もしそれでダメだったら、そのときはやめちゃいます」

(★)お客がいない今でも焦っていない不安や怖れといったマイナスなことを考えないようにしている。何とかなると思っているから自分のやりたいようにやっている。店が軌道に乗ることを目標・願望としているが、その願望への執着は手放している

 

謎の中年男・マッティが来店。コーヒーを美味しくする秘訣とおまじないをサチエに教える。

 サチエは素直にそのアドバイスを受け取り実践してみる。そして本当にコーヒーが美味しくなる

 

ミドリが買ってきた食材でおにぎりを作ってみる。トンミ・ヒルトネンと3人で試食会。

新おにぎり作戦は失敗するものの、そのことがきっかけでサチエがシナモンロールを作ることを思いつく

シナモンロールの香りに吸い寄せられて、あのおばさん3人組が来店。そのまま常連になる。

 ミドリ効果②。ひとつの行動が直接良い結果を生まなくとも、それを受け入れ実践してみたことでアイデアが降りてきて、それが思わぬ成功・プラスの連鎖を生むことに

 

第3の日本人・マサコが「かもめ食堂」に来店。

2度目の来店時での「いいわね、やりたいことをやってらして」というマサコの言葉にサチエが「やりたくないことはやらないだけです」と答える。それを聞いたマサコはおもむろに立ち上がり、服を買いに出かけてゆく。

 「やりたいことをやる」「やりたくないことはやらない」という考え方は、他の人からは「我がままだ」とか「それで生きていけたら世話ないよね」と思われてしまうかもしれないが、自分の人生なのだから自身の心の声を大事にし、それを認めてあげて“周りの人がそれをどう思うか”ではなく“自分がどう思うか/自分がいい気分でいられることなのかどうか”を選択することが重要。

 自身の心の声に逆らって「やりたくないこと」をやっても、その行動の元・源流になっているのが「楽しい」とか「幸せ」から来るものではないので、引き寄せる結果は自然と「楽しい」や「幸せ」とは別のものとなる。(簡単に言うと「引き寄せの法則」とは「それと似たものを引き寄せる」という法則)

(例)楽しくはないけど、客が来ないと暮らしていけないから仕方なくやる「楽しくない」「(暮らしていけないという)不安や怖れ」という品種の種を植えるそこから出る芽はもちろん「楽しくない」「不安と怖れ」である。朝顔の種を植えてひまわり芽が出ることはない。

 サチエは客が全くいなかった日々も暗い顔はしておらず(客がいない、お金が稼げない、というネガティブな部分に意識を向けていなかった)、とことんヒマなときはプールで気分転換をするなど、その時点で出来る「気分がよくなること」を実践していた

 

いつも外から睨みつけていたおばさんを介抱した翌日、店を訪れたマサコはトンミ・ヒルトネンの助言で森へ行くことに。

 インスピレーションを受け取ったと思ったら即行動。この辺はサチエと通じるものがある

 

サチエ、ミドリ、マサコとおばさんの4人で連れ立ってカフェやサウナに出かけたあとに店へ戻ると、マッティ(実はこの場所の元オーナー)が、置き忘れていた自分のコーヒーミルを取りに忍び込んでいた。

サチエがマッティを合気道の技で捕まえる。事情が分かった後は皆でおにぎりを食べる。

 「人間、大抵の問題はお腹を満たすとどうでもよくなってくる」という定説を地でいく行動。「美味しいものを食べてお腹いっぱいになる」ことは、日常で出来る「すぐにいい気分になれる行動」の定番中の定番

 

マサコの荷物が出てくる。サチエとミドリに帰ることを告げ「かもめ食堂」を後にする。

サチエとミドリ、この先のことについてぼんやりとした会話。サチエ「でもずっと同じままではいられないものですよね」「人はみんな変わっていくものですから」ミドリ「いい感じに変わっていくといいですね」サチエ「大丈夫。たぶん」

 マサコやミドリがここから去っていっても、それぞれの人生を尊重し未来を祝福するつもり、というサチエの冷静な考え方はミドリにとっては少し寂しく感じたかもしれないが、「起きたことに対してすぐに感情的に“反応”するのではなく、変化や自分との違いを受け入れ“対応”する」という姿勢

 

これまで店に来るようになっていた人たちが、知人や家族を連れてやってくるように。そしてついに「かもめ食堂」が満席になる日がやってくる。

 オーナーであるサチエは「店が軌道に乗る」という“結果”は望んでいたが、そのための“方法”や“過程”についてはとくに具体的なイメージ(固定観念)は持っていなかったので、突如現れた日本オタクの青年や気の合う日本人の仲間、効果てきめんのおまじないを教えてくれる人や災い?転じて仲良くなる現地人といった、一見お店の成功とは直接関係なさそうな人たちとの出会いを、その都度柔軟に受け入れることができた。そしてそのことが望んでいた“結果”に繋がっていくことに。もし「店が軌道に乗るためにはこれをこうして、こうなって」といったことに意識を向けていたら(そのルートとは違う)これらの人々との出会いを成功に繋げることが出来なかったかもしれない

 

〜〜〜〜〜

 

 といった感じで、このよう見てみるとそれぞれ自分の好きなことを肩肘張らずにしていながら、みんながちょっとずつ幸せになっているのが分かります。

 

 映画全体で見ても、「不幸になった人が一人もいない」というところがいいですね。藁人形で呪われたおばさんの亭主でさえも、家を出ていって不健康そうな生活を送っていたようなので元の鞘に収まって、結果めでたしめでたし──となりましたし(笑)。

 

それぞれ中を開くとこんな感じです

 

エンディングに向かう流れがうまい

 いつものミドリの「ねぇ知ってました?」からの他愛のない平和な会話、そしてカメラが切り替わらなくても声だけで誰が来たか分かる演出(それもまたいつもの光景・日常の平和なひとコマ)、その「お客」へのサチエの挨拶がそれまでの会話とリンクして、そしてエンディングへ……という流れ。この力の抜け具合が気持ちいいです。エンディング曲もぴったりで、見終わる頃にはお腹が空いてくるので(笑)、どこか出かけて映画に出てきたものでも食べようかなという気になってきます。

 トンカツにしようか、それとも鶏の唐揚げ、はたまた豚の生姜焼きにするべきか…いやいやここはやっぱりコーヒーとシナモンロールでしょ、といった具合に。ってか文字を入力しているだけで腹が減ってきます(笑)。

 

 

DVDの特典映像「猫と歩くヘルシンキ」

 『かもめ食堂』の初回限定版DVDには、本編の他に「猫と歩くヘルシンキ」というタイトルの特典映像DVDがついており(その他に映画『めがね』のお楽しみ特報DVDも付いている)この「猫と歩くヘルシンキ」が、ヘルシンキの観光案内映像として非常に秀逸なのです。

 

 ナレーションはサチエさんで、ロケ地の「カハヴィラ・スオミ」についての映像をはじめ、マーケットやアラビアファクトリー、スオメンリンナ島などの観光スポット紹介と、ロケハンや撮影の舞台裏を撮ったものなど、結構なボリュームでこれだけでもかなり楽しめます。

 今はもうこの頃とはずいぶん変わってるんだろうなぁーとは思いますが、YouTubeでここ数年のヘルシンキの映像をいろいろ見てみたら、そこまで大きな違いはなさそうでだったのでいつか是非再訪したいです。

 

 そういえば今回改めて見ていて何度も目に留まったのは、ミドリさんが誰かにお礼や挨拶をするとき、頭を下げながらもしっかりと相手の目を見ているところでした。あそこまで食い付くのがいいのかどうか分かりませんが(笑)、ろくに相手を見もしないような挨拶よりはずっと良いのでしょうね。

 

 あと、こちらの映画『かもめ食堂』が好きな人であれば読んでおいて損はない、というか絶対に楽しめるだろうという本が、ミドリを演じた片桐はいりさんのエッセイ『わたしのマトカ』です。映画を見ていなくても、旅好きの方やフィンランド好きの方には是非おススメしたい一冊です。ってか古い記憶を辿って書いているので忘れてしまっていますが、この本もかなり人気でしたよね。

 

『わたしのマトカ』単行本

 

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三崎町三丁目通信の主筆・Kです(個人運営ですが)。映画の感想を中心に、趣味で続けているスペイン語学習(DELE A2取得で止まっています)と最近始めた英語学習のことなどを書いています。本業はフリーランスのグラフィック&エディトリアルデザイナー。びっくりするくらい将棋が弱いです。

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