静かに暮らしていた元殺し屋の男が封印していた武器を再び手に取り、たったひとりでロシアンマフィアを全滅させる。理由は
愛犬を殺されたから──
復讐劇の映画には今まで色々なものがありましたが、これほど単純明快かつ理由として完璧に成立するものも珍しい……。
法律とか倫理とか善悪とか、そういうところで判断すれば当然アウトですが、
「なるほど、それなら仕方がない」
と思わず頷いてしまうほどに説得力のあるこの理由。。
『ジョン・ウィック』の主人公、ジョン(ジョナサン)のような凄腕の元殺し屋でなくても、もし同じことをされたら私はいつでも鬼になる──という人はきっと世界中にいることでしょう…。ですがもちろん同じことをしてはいけません(できねぇって)。
あらすじ
誰もが一目置く凄腕の殺し屋だったジョン・ウィックは、最愛の女性と結婚するためその道から足を洗い、平穏に暮らしていた。それから5年、最愛の妻ヘレンが病死してしまう。
葬儀の夜、悲しみの底にいた男は亡き妻からの「この子を愛して そして安らぎを見つけて」との手紙とともに、一匹の仔犬を受け取る。デイジーと名付けられたその仔犬が、ジョンにとっての新たな生きる希望となっていったのであった。
ある日ガソリンスタンドで給油していたジョンは、界隈で大きな勢力を持つロシアンマフィアのボス、ヴィゴ・タラソフの息子ヨセフに自身の愛車’69年型フォード・マスタング「ボス429」を売るよう持ちかけられるが、それを断る。
そしてある夜、ヨセフとその仲間たちに襲撃をかけられ、車を奪われたうえにデイジーを殺されてしまう。
翌朝デイジーの亡骸を前に意識を取り戻したジョンは、復讐の鬼と化し封印していた武器を再び手に取った──
鬼になるけどいいよね?
ヘレンからの「最後の贈り物」である仔犬を受け取り、その中の手紙を読んで涙するジョン。ここまでが冒頭から約7分。
そしてロシアンマフィアのボスのドラ息子たちに襲撃され、翌朝に殺された愛犬の横で意識を取り戻すジョン。ここまでで冒頭から約15分。
ここから先、復讐のためひたすら●して●して●しまくる元殺し屋の行為を観客に容認させるための説明がこの15分。
「静かに暮らしていた男がこれから鬼になるけどいいですよね?」という確認と、許可の申請がここで完了しました。あとはやるだけです。
ってか許可がどうとかよりも「ヨセフが苦しんだり泣き叫ぶこともないままあっさりやられたことが納得いかねぇ!」くらいに考える人が沢山いそうで怖いっす……
最近は映画やドラマの中でも人種問題はかなり神経を使うところのようです。たとえフィクションの世界であっても、主人公が大手を振ってブチ●す対象が反社会的勢力・マフィアやギャングであっても、それらの集団を黒人やヒスパニックにするのはきっと以前よりリスクが伴うのでしょう。
そういう意味で「同じ白人」で「着てるものや生活様式に(画面上)極端な違いがなく」そして「政治的に対立してきた国の人たち」であり、尚且つ「マジで怖い反社会的勢力」(まぁマフィアやギャングは皆エグいんでしょうけど…)という、いろいろと都合の良い立ち位置が「ロシアンマフィア」という設定なのではないかと…。
たまに『マチェーテ』シリーズや『アドレナリン』シリーズみたいな振り切ってしまう映画もあるようですが(笑)、これらはジョークにしてるから成立出来てるいるようなところがありますしね(真っ黒いけどw)。
マフィアのボス役、ミカエル・ニクヴィスト
私だけかもしれませんが、顔を見て「あー、この人か!」と分かるものの、でも名前はちゃんと覚えていない……という役者のひとりが今作のラスボス役、ミカエル・ニクヴィストさん。
なんといっても記憶に残っているのは『ミレニアム』シリーズ3作での主人公ミカエル役でしょうか。あのシリーズでは全然強そうなイメージがありませんが、それ以外の映画では裏社会の恐いロシア人、という役が多いような印象です。
『ミレニアム』シリーズのミカエル同様、スウェーデンの方だそうですね。それ以外にも『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』や『ミッシング ID』などでもお馴染みですが、残念ながら2017年に57歳という若さで亡くなってしまいました。
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