前作『ジョン・ウィック』のレビューはこちら↓です。
キアヌ・リーブスの新たな代表作のひとつとなった『ジョン・ウィック』の続編が登場!
しかも前作のラストから5日後という、勢いやスピード感を全く緩めない展開で始まる『ジョン・ウィック:チャプター2』。見たいな~と思っていたもののずっと未見だったのですが、先日Netflixに上がってきたので早速鑑賞しました。
いや~そうきましたか~といった感じで、前作とは違ったところに訴求ポイントがあって面白かったです。
前作との訴求ポイントの違い
前作『ジョン・ウィック』は、まず何といっても
「何より大事な犬を殺された。絶対に許さない」
といった、愛犬家ではなくても見る側の感情に激しく訴える堂々たる(?)動機のもと、元凄腕の殺し屋ジョン・ウィックの殲滅ショーが行われていったところが魅力だったと思うのですが、今作ではもう復讐は果たし終えた後なので、それ以外のものが必要となってきます。
ただ無双するだけではあまり面白くはないはず……
ストーリーの背景的に、世界中のペット愛好家を味方につけた前作のような強力な訴求ポイントを持たない今作では、一体何が売りとなっているのでしょうか。
個人的な感想では以下のようなところではないかと思っています。
●2作目にして確立された様式美
●前作以上にマニア受けするこだわり
●『マトリックス』
●『燃えよドラゴン』
2作目にして確立された様式美
裏社会の暗黙のルールや、そこに生きる者たちの恐ろしくも気高い品格のようなものが数多く登場します。(コンチネンタル系列の人たち、その掟、プロの殺し屋たちが共有する信条や、自身が認めた相手へのリスペクトなど)
2作目にして早くも「そうそう、ここってそういう場所なんだよね」「まぁこの人はやっぱりそう言うよね」みたいな『ジョン・ウィック』的な様式美(形式美)が完成されつつあるところが素晴らしいです。
「分かってる者同士の、一切無駄のないやり取り」
って見ていて愉しくなってくるんですよねー。
そしてロシアンマフィアのタラソフ一家では有名な話なのか(笑)、ジョンが「鉛筆で3人を殺した」という武勇伝がここでもまた出てきて、さらにそれを再現してみせるシーンもあったりして見ていて思わず「いでででででっ!」と顔をしかめそうになりつつも、ニヤッとしてしまうという。
ガンフー/マーシャルアーツ好きへの訴求
この辺は前作から引き続き、といった感じですが、今作でもやはり動きに無駄がなくて素敵です。自分が撃たれるときは主に胸を狙われて防弾チョッキや防弾仕様のスーツによって命拾いしますが、ジョンはプロなのでちゃんと頭を狙って完全に仕留めています。
また組み合って倒した相手がすぐに反撃できない状態の場合、深追いせずに周りの敵を倒してから改めて足下に転がっている敵に止めをさす、という冷静かつ容赦ないところもえげつなくてイイです(笑)。
あとジョンとカシアンという、実力が拮抗している者同士の戦いも見物でしたが、大勢の人が行き交うなかで上下階の通路を歩きながら周りにバレないようにスーツで隠しながらパスパスと銃を撃ち合っているところは笑えました。盗撮犯か(笑)。
そういえば『イコライザー』のデンゼル・ワシントンがケータイで写真を撮るときに同じような感じでやってましたっけね。「ひとりでロシアンマフィア殲滅」繋がりってわけではないですが。
シューティングゲーム好きへの訴求
前作でもそうでしたが、アサルトライフルなどの構え方がプロっぽくていいです。
ダメな映画だと胸とか腹のあたりで持ってダダダダダと撃ちまくってたりしますが、肩で固定して、ちゃんと目の高さに照準を持ってきているところがシューティングゲームでも見ているような感じがしました。素早い視点の移動と上体を揺らさずにカクカク動くところも本物っぽいです。
自分は全くやりませんがジョン・ウィックのシューティングゲームもあるみたいですね。
武器マニア・カーマニアへの訴求
銃・ナイフなどの武器マニアやカーマニアは昔から数多く存在し、また映画はそういったマニアの方々との親和性も高いと思うので、これらの“マニア”を味方につけるような映画は(もちろん内容も伴ってこそですが)長期的な人気を博す作品となることが多いように感じます。
今作での武器関連についても、その辺まるっきり素人の自分でもちょっと調べればがんがん出てきました(笑)。
とりわけローマの「ソムリエ」に見立ててもらうシーンは、マニアの人たちからしたら「このシーンちょっと短くねぇか? もっと長くやってくれや」と言いたくなるような場面だったのでは…
繰り返しになりますが、ああいった「分かってる者同士の細かい説明」の場面って最高ですよね(笑)。
構えたりマガジンを引き出したりとチャカチャカ(銃だけにw)動かしながら、一通り説明を聞いたあとにジョンが
「うむ」
と頷く場面、大真面目なのに笑えます(笑)。
仕立て服が好きな人たちへの訴求
これまた『ジョン・ウィック』的様式美のひとつで、ジョンが「仕事」をするときは必ずダークスーツに身を包むというのがありますが、今作はスーツをオーダーする場面が登場しました。これが上記の「ソムリエ」同様、非常に素晴らしい(笑)。
工房でミシン縫いしていた女に例のコインを渡して奥へ案内してもらい、そこであれこれ採寸と仕様を決める一連のやり取り。
ここは実際にオーダースーツを作ったことのある人だったらだいぶ楽しめる場面じゃないでしょうか? …というか面白さのベクトルが武器ソムリエとのそれと全く同じなんですが(笑)。
そして今回のオーダー最大の特徴となる特殊繊維の説明で、トルソー(胴体部分のみのマネキン)に着せたスーツに向かってバンバン撃ち込むシーンがありましたが、銃を撃つのが案内してきた女だったりします。
お前が撃つんかい!w
ところでこの特殊繊維を織り込んだスーツについて、昔好きで読んでいた漫画で似たような話がありました。
『スーパージャンプ』で連載されていた(なお現在はいくつかのシリーズを経て『グランドジャンプ』で連載されているもよう)『王様の仕立て屋~サルト・フィニート~』という作品です。
イタリア・ナポリの泥棒市に住む日本人の仕立て屋が主人公の物語なのですが、服に限らず歴史や美術、音楽や料理など様々な文化の雑学を学べる非常に面白い漫画だったのが特徴で、また舞台がイタリアのナポリという、カモッラ(今作のラスボス・サンティーノの組織で、イタリアンマフィアの4大勢力のひとつ)のお膝元だったこともあって、裏社会の人が出てくる話も度々ありました。
そんな『王様の仕立て屋』のコミック第4巻「order23:最期の夢」という話で、末期がんで余命幾ばくもない老いた元殺し屋がスーツをオーダーするのですが、何かを察した主人公がスーツの芯地にアラミド繊維(防弾チョッキなどにも使われる素材)を使い、弾丸が貫通しないようにした──というくだりがありました。
なかなか男気のあるいい話だったこともあって、この「防弾スーツ」の話はよく覚えていたので、今作で同じような原理の防弾スーツを仕立てる場面を見たときは「おぉぉこれは!」と軽く仰け反りました(笑)。
ちなみに私はこの漫画を読んでから実際にオーダーでスーツを作りましたが、なかなか楽しいですねあれは。もちろん防弾じゃないですけど。
今作でジョンがスーツの前見頃を盾のようにして銃弾を防ぐシーンが見られましたが、上下か左右のどちらかでピンと張っているわけではなく暖簾のような状態となっていたので、本当ならば盾としての役割はあまり果たせていないはず…。それでも「すげぇぇぇ!」と思わざるを得ないあの万能感が最高(笑)。
マトリックス
出ましたモーフィアスとネオ! 二人の共演は『マトリックス』シリーズ以来だそうで、この組み合わせだけでもテンションが上がりますが、ローレンス・フィッシュバーン扮する“キング”は「下っ端だった頃にジョンに殺されかけたところを見逃してもらった」「そのとき助かったから今の地位がある」という『マトリックス』のときとは力関係が逆っぽくなっているのも面白いところですね。
次作にもクレジットされているようなので、次はどう絡んでくるのか楽しみです。
『燃えよドラゴン』
これはもう言わずもがなですね。オマージュもここまではっきりしていると清々しく感じます(笑)。
『燃えよドラゴン』では“鉄の爪”・ハンのコレクションルームであった鏡張りの間が、今作では「NY新現代美術館の“魂の反映”展」の展示会場という設定で登場。
ここで戦ったサンティーノのボディガード・アレスを仕留めた方法が銃ではなくて、彼女が持っていたナイフを突き刺すというところも微妙に被せてあるのでしょうかね。ちなみにこのアレスも女性ながらスーツの着こなしが素晴らしくてすげー格好よかったです。
さらなる続編への期待
第3作目となる『ジョン・ウィック:チャプター3 パラベラム』が今年公開予定とのことですが、サブタイトルからすると銃弾の雨あられとなるのでしょうか…ってまぁ今までの2作もそんな感じでしたけど。。
今作に引き続きローレンス・フィッシュバーン扮するキングや「コンチネンタル」のオーナー、「コンチネンタル・ホテル・NY」のコンシェルジュなどの他、ハル・ベリーや真田広之も出演するようでなかなか楽しみです。(注:真田広之は出演していません。ウィキペディアに書いてある情報は相当昔のもの??)
【追記】
予告編がUPされていますね…
笑える。。。超絶にいい意味で。もうにやにやしながら見させてもらいました(笑)。これは観に行くしかないでしょう。
なお4月下旬で『アベンジャーズ/エンドゲーム』の公開目前という時期もあってか、この動画のコメント欄もアベンジャーズ絡みの話題も多いようですが、みんなジョン・ウィック大好きみたいで読んでて笑えますw
それにしてもキアヌ・リーブス、まさか2010年代に入ってからこんないいシリーズものに当たるとは思わなかったですよねぇー。そういうところも痛快。
(2019/10/9)3作目のレビューも書きました!よろしければこちらもどうぞ