三崎町三丁目通信

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【理由は犬】映画『ジョン・ウィック』──始まって15分で観客から許可が下りる

投稿日:2019年1月24日

 

静かに暮らしていた元殺し屋の男が封印していた武器を再び手に取り、たったひとりでロシアンマフィアを全滅させる。理由は

 

愛犬を殺されたから──

 

 復讐劇の映画には今まで色々なものがありましたが、これほど単純明快かつ理由として完璧に成立するものも珍しい……。

 法律とか倫理とか善悪とか、そういうところで判断すれば当然アウトですが、

 

「なるほど、それなら仕方がない」

 

 と思わず頷いてしまうほどに説得力のあるこの理由。。

 『ジョン・ウィック』の主人公、ジョン(ジョナサン)のような凄腕の元殺し屋でなくても、もし同じことをされたら私はいつでも鬼になる──という人はきっと世界中にいることでしょう…。ですがもちろん同じことをしてはいけません(できねぇって)。

 

あらすじ

 誰もが一目置く凄腕の殺し屋だったジョン・ウィックは、最愛の女性と結婚するためその道から足を洗い、平穏に暮らしていた。それから5年、最愛の妻ヘレンが病死してしまう。

 葬儀の夜、悲しみの底にいた男は亡き妻からの「この子を愛して そして安らぎを見つけて」との手紙とともに、一匹の仔犬を受け取る。デイジーと名付けられたその仔犬が、ジョンにとっての新たな生きる希望となっていったのであった。

 ある日ガソリンスタンドで給油していたジョンは、界隈で大きな勢力を持つロシアンマフィアのボス、ヴィゴ・タラソフの息子ヨセフに自身の愛車'69年型フォード・マスタング「ボス429」を売るよう持ちかけられるが、それを断る。

 そしてある夜、ヨセフとその仲間たちに襲撃をかけられ、車を奪われたうえにデイジーを殺されてしまう。

 翌朝デイジーの亡骸を前に意識を取り戻したジョンは、復讐の鬼と化し封印していた武器を再び手に取った──

 

ジョンの生きる希望……
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鬼になるけどいいよね?

 ヘレンからの「最後の贈り物」である仔犬を受け取り、その中の手紙を読んで涙するジョン。ここまでが冒頭から約7分。

 そしてロシアンマフィアのボスのドラ息子たちに襲撃され、翌朝に殺された愛犬の横で意識を取り戻すジョン。ここまでで冒頭から約15分。

 

 ここから先、復讐のためひたすら●して●して●しまくる元殺し屋の行為を観客に容認させるための説明がこの15分。

 「静かに暮らしていた男がこれから鬼になるけどいいですよね?」という確認と、許可の申請がここで完了しました。あとはやるだけです。

 ってか許可がどうとかよりも「ヨセフが苦しんだり泣き叫ぶこともないままあっさりやられたことが納得いかねぇ!」くらいに考える人が沢山いそうで怖いっす……

 

 最近は映画やドラマの中でも人種問題はかなり神経を使うところのようです。たとえフィクションの世界であっても、主人公が大手を振ってブチ●す対象が反社会的勢力・マフィアやギャングであっても、それらの集団を黒人やヒスパニックにするのはきっと以前よりリスクが伴うのでしょう。

 そういう意味で「同じ白人」で「着てるものや生活様式に(画面上)極端な違いがなく」そして「政治的に対立してきた国の人たち」であり、尚且つ「マジで怖い反社会的勢力」(まぁマフィアやギャングは皆エグいんでしょうけど…)という、いろいろと都合の良い立ち位置が「ロシアンマフィア」という設定なのではないかと…。

 たまに『マチェーテ』シリーズや『アドレナリン』シリーズみたいな振り切ってしまう映画もあるようですが(笑)、これらはジョークにしてるから成立出来てるいるようなところがありますしね(真っ黒いけどw)。

 

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ロシア人っぽいけどご本人はスウェーデン人
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マフィアのボス役、ミカエル・ニクヴィスト

 私だけかもしれませんが、顔を見て「あー、この人か!」と分かるものの、でも名前はちゃんと覚えていない……という役者のひとりが今作のラスボス役、ミカエル・ニクヴィストさん。

 なんといっても記憶に残っているのは『ミレニアム』シリーズ3作での主人公ミカエル役でしょうか。あのシリーズでは全然強そうなイメージがありませんが、それ以外の映画では裏社会の恐いロシア人、という役が多いような印象です。

 『ミレニアム』シリーズのミカエル同様、スウェーデンの方だそうですね。それ以外にも『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』『ミッシング ID』などでもお馴染みですが、残念ながら2017年に57歳という若さで亡くなってしまいました。

 

その他、脇を固める渋い人たち

 ちょっと出番が少なめですが、ウィレム・デフォーがジョンの同業&旧友役として出ていました。アウトロー集団のリーダーから軍人、そして時を司る堕天使からデスノートのリュークまでと(笑)、様々な役をこなせる名優として今作でもジョンを陰から支える渋い役柄を演じていたのですが、続編には登場しないキャラとなってしまいました。

 また数年前に終了したドラマ『FRINGE/フリンジ』で、そのフリンジ・チームのボスだったブロイルズを演じていたランス・レディックが「コンチネンタル・ホテル・NY」のコンシェルジュ役として出演しています。こちらは次作にも登場しますがその続編では、もはや映画『ジョン・ウィック』シリーズになくてはならない人物のひとりとしての存在感を放っています。何ていうか、ジョンがいかに凄い殺し屋だったのかを表現していくうえで「その界隈」に生きる人たちの、それぞれの職業のプロフェッショナル度がいかに本物か、ということも自動的に描かれることになるので、そこがまたこの映画の魅力なのではないかと。

 これについては『ジョン・ウィック:チャプター2』のレビューでも少し書きましたが、このコンシェルジュをはじめとするジョンを取り巻く「分かってる者同士のやり取り」が、見ていてすごく愉しいです。個人的に続編『〜チャプター2』はそれを楽しむ作品なんじゃないかと思っています(笑)。

 

『クロウ/飛翔伝説』との類似性

 キアヌ・リーブスの新たな代表作となった『ジョン・ウィック』シリーズ(今年3作目が公開予定)ですが、見ていてふと、ブルース・リーの息子ブランドン・リーが主演の(そして遺作でもある)ダークヒーロー映画の傑作『クロウ/飛翔伝説』と共通するところが幾つかあることに気付きました。

 そしてその「共通する部分」こそが『ジョン・ウィック』がヒットした要因のひとつであるように感じます。

 

“ガンフー”と呼ばれる“ガンアクション”と“カンフー”をミックスしたアクションが見物であること

 キアヌ・リーブスの主演作を語るうえで『マトリックス』シリーズは避けては通れません…ってかど真ん中なんでしょうけど。そしてネオといえばあの格闘シーン。『マトリックス リローデッド/レボリューションズ』から11年経ち、またこんなふうに銃と格闘術で無双しまくるキアヌの姿を見ることができるとは…と嬉しく思った人はきっと多いはず。

 対して『クロウ/飛翔伝説』のほうはと言えば、「あの」ブルース・リーの息子で、父から直にジークンドーの手ほどきを受け、そして父の後を追って俳優となったブランドンの華麗なアクションが目玉のひとつでした。また『ジョン・ウィック』同様に派手な銃撃戦シーンもあるのですが、こちらはリアルさというよりはまるで演舞を舞っているかのような、流麗な動きが特徴のカッコいいものとなっておりました。

 

悪党どもをひとりで次々と葬ってゆくさまが痛快(いささか不謹慎ではありますが…)

 最愛の女性(妻)を亡くし、生きる希望を失っていた凄腕の元殺し屋が、受け取った妻からの最後の贈り物である仔犬を殺されたことで誰も止められない復讐の鬼と化し、ロシアンマフィアの悪党どもひとりで全員葬り去る、というのが『ジョン・ウィック』。

 恋人と暮らしていたアパートの地上げに反対していたミュージシャンの男エリックは、街を支配する悪党一味にアパートを襲撃され、窓から突き落とされて殺されてしまう。そして一緒にいた恋人も暴行され、瀕死の重体で病院に運ばれるも苦しんだ末に死亡する。その一年後、カラスの神秘的な力を得て不死身の身体で蘇ったエリックは、次々と悪党どもを粛清し最後には全滅させる、というのが『クロウ/飛翔伝説』。

 どちらも法や警察が手を出せないような悪の組織を、超人的な能力を持つ男が一切の容赦なくひとりで叩き潰してゆく──という、ダークヒーロー物の王道といった展開ですね。

 

ラスボス戦の舞台設定、そして復讐を果たした後の去り方

 どちらもラスボスとの戦いにはそれまでにない苦戦を強いられています。また最終決戦の舞台設定が雨が降りしきる夜であることや、重傷を負いつつも復讐を果たし終え、今は亡き愛する妻/恋人の姿を思い浮かべながら自分がいるべき場所へ帰ってゆく、というところも似ています。(『クロウ~』では天国から恋人シェリーが現れ、共に光の中へ消えてゆく。『ジョン・ウィック』ではスマホに録画していた在りし日の妻・ヘレンとの映像を見ながら、新たに引き取った犬を連れて家に帰ってゆく)

 

そして続編へ

 2017年に『ジョン・ウィック:チャプター2』という待望の続編が公開されました。

 見たかったものの結局観に行けず、そのままずっと見ないままでいたのですが、つい先日Netflixにきたので早速鑑賞。

 いやー、見る前は正直どうかな〜と思っていたんですがなかなか良かったです。

 

というわけで『ジョン・ウィック:チャプター2』のレビューはこちら↓です。

 

【様式美の世界】映画『ジョン・ウィック:チャプター2』──「分かってる者同士のやり取り」が最高!

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三崎町三丁目通信の主筆・Kです(個人運営ですが)。映画の感想を中心に、趣味で続けているスペイン語学習(DELE A2取得で止まっています)と最近始めた英語学習のことなどを書いています。本業はフリーランスのグラフィック&エディトリアルデザイナー。びっくりするくらい将棋が弱いです。

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