【総統閣下シリーズ】映画『アイアン・スカイ』──笑える部分と笑えない部分について【ディレクターズ・カット版】

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 フィンランドのティモ・ヴオレンソラ監督による2012年の作品『アイアン・スカイ』。いつか見ようと思っているうちに昨年にはまさかの続編も公開され(笑)、すっかり乗り遅れてしまっておりましたが、最近ドイツ語の勉強を(ゆるく)始めたこともあってようやく鑑賞しました。

 いやー、予想通り皮肉たっぷりで面白かったです。

 

 …が、感想はそれだけではなく。。

 

 

 個人的にもういい加減うんざりしていた

「エンタメ業界やメディア界隈でのナチスに対する(逆の意味での)特別扱い」

 と、それを支える世界規模の刷り込みについても改めて考えさせられる作品となったのでした。

 というわけで今回はこの作品の「愛すべきバカ映画」的な部分と、そろそろこの現象・暗黙の了解が「おかしい」ことに気付かないとね、という点、そしてオカルトや陰謀論、都市伝説などで語られている要素と絡めて興味深く感じたところなどについて書いていこうと思います。

 いざ書いてみたら10,000字を軽く超えてしまいました(笑)。後者の真面目な内容は5ページ目からになりますので、そこまではバカ映画のレビューとしてお楽しみください。

 それにしても最近はオカルトや陰謀論、スピ系についてずいぶん堂々と書くようになったなと我ながら思います(笑)。まぁ2020年も残すところあと1/4ほどとなった今、世界は大きな変換点を迎えようとしていますからね…

 

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わりと全方位に向かっての皮肉が利いている

 これについてはあとで触れますが、映画や海外ドラマなどのエンタメ業界でのナチスに対する扱いは異様なものがあります。

「ナチスに対してだけは何を言っても・何をやっても絶対に批判されない(=完璧なサンドバッグ)」

 このように大変使い勝手の良い存在ですから、映画界でも引っ張りだこです。

 ですので、相手がヒトラーおよびナチス軍であればどれだけ酷い扱いをしようが、どんな手段でぶっ殺そうがお構い無しです。むしろ正義の戦いとして賞賛されそうな勢いです。今回これを書くにあたって続編の『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』のチラシを探していたら、コレクション(ってほどでもないけど)しているチラシの中の、ナチスについて扱った映画のなんとまぁ多いこと多いこと。

 

 あらかじめ書いておきますが、ナチスドイツ軍が行ったことを肯定するつもりなんてもちろんありません。「おかしい」と思うのはそれとは別の話であり、何か言ってくる人はお得意の「論点ずらし」です。

 

 おっとこういう話は最後のページでするんでした(笑)。

 というわけで「月の裏側に逃れていたナチスが地球に向けて攻撃してくる」という、表向きには斜め上の発想(笑)でナチスを取り扱った作品ですから、当然(いつものように世界中からボロクソに言われる対象として)皮肉もナチスへ向けての一点集中となるものかと思いきや、案外バランスよく(?)分散していて…というか全方位に対して皮肉が利いているというか、バカにしているというか…(笑)。そういった点がアメリカでもなくイギリスでもなく、さらにドイツでもなく(一応フィンランド・ドイツ・オーストラリアの合作らしいですが)フィンランドの監督によるフィンランド映画ならではの、比較的フリーダムな感覚なのかもしれませんね。

 

アメリカへの皮肉

 オバマが掲げていたスローガンは「YES, WE CAN.」でした。今作でのアメリカ合衆国大統領は女性が就任していて、主人公のひとりである黒人のモデル、ジェームズ・ワシントンが月に着陸した際にポッドからわざわざ垂れ幕を下ろさせていた自身の写真付きスローガン

「YES, SHE CAN.」

 でした。「我々には出来る」というオバマの言葉に対して「彼女には出来る」という、まるっきり国民そっちのけになっているところが笑えます(笑)。

 ちなみにこの女性大統領(名前は不明)は、かつてオバマと大統領選を争って敗北した共和党のジョン・マケイン氏に副大統領候補に指名されていたサラ・ペイリン氏のパロディキャラとのこと。ペイリン氏は2008年の大統領選当時まだ40代前半の美熟女としてルックスについてもけっこう話題になりましたので、今作での大統領も大概なキャラではあるものの(笑)、スタイルも良く大統領としてはだいぶ若い印象です。

 関係ありませんが、この大統領を演じたのはニュージーランドの女優&コメディアンのステファニー・ポールさんという方だそうですが、モデルとなったサラ・ペイリンと奇しくもイニシャルが同じという。…だから何だよって話ですがw

 そういえばジェームズ・ワシントンと一緒に月へ降り立った船長の名前がサンダースということで、ここにも大統領繋がり(候補含む)の小ネタが含まれています。

 また後半に登場する“未来の探査船”の名前が

「USS ジョージ・W・ブッシュ」

 というのもだいぶ風刺が利いています。探査船どころか強力なレーザー兵器を備えていて、しまいには核兵器すら搭載しているという…。まさにその名に偽りなし! といった感じの戦争する気まんまんな超極悪宇宙船(笑)。

 そして月からやってきたナチスの親衛隊准将・クラウスとなぜか結託して堂々とNew World Orderへ向けた政策を取ろうとしているあたりも何気にエグいんですが(ポスターにモロに書いてある)、支持率が上がって再選出来るからという理由で「いつ戦争をしようかと考えていた」っていうことをアメリカ合衆国大統領がサラッと言うのも相当です(笑)。でも全然ジョークじゃないんですよね……オバマやブッシュといった、少なくともトランプより前の大統領たちの多くは実際に思いっきし戦争してきましたし。。

 ブッシュについてはある程度認知されている感がありますけど、オバマのエグさとかは知らない人も多いみたいですし、印象操作で人を欺くのって支配層にとっては容易いことなのでしょうね…。

 攻撃対象には女子供もいますが…と核兵器の使用命令に躊躇する部下の声も無視して核ミサイルを発射してしまう、っていうのは全然フィクションになっていなくて私たち日本人にとってこの辺りはあまり笑えません。まぁ愚かさを皮肉るという意味では笑ってやるところなのかもしれませんが。。

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