映画『恋恋風塵』──数々の名作が並ぶ台湾青春映画の先駆け的作品【ホウ・シャオシェン監督作】

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台湾映画の十八番とも言えるジャンル

 さて、この『恋恋風塵』をはじめ、台湾映画には思春期の少年少女による美しくて切ない純愛ストーリーの名作が数多く存在します。

 こういった青春純愛物語は、台湾映画の定番ジャンルと言えるものなのかもしれません。

 

 ホウ・シャオシェンと同じく「台湾ニューシネマ」を代表するエドワード・ヤン監督の『牯嶺街少年殺人事件』や、2002年の『藍色夏恋』、2011年の『あの頃、君を追いかけた』、そして2015年の『若葉のころ』などなど、珠玉の名作が並ぶこのジャンル。

 これについて「台湾巨匠傑作選2018」公式パンフレット内『あの頃、君を追いかけた』の解説文に、実に的確な説明が書かれていたので引用します。

 

(~略)『恋恋風塵』(87)『藍色夏恋』(02)など青春映画の絶品を数多く生み出し、ティーンエイジャーを主人公とする青春ものが地元産映画の代名詞的イメージとなってきた台湾映画界(その特長は、同種の路線の名作が極めて少ない香港映画界と、好対照をなす)。本作によって、その伝統に新たな一頁が刻まれた。と同時にこれは、青春真っただ中の時期にいる観客のみならず、既に自らの青春時代は過ぎ去ってしまったという感慨──そして自身の青春時代に対する後悔や恥じらいの念──にとらわれて生きている中高年層の観客にも訴えかける内容であった点に、独自性がある。(略~)

 

 なるほど……そう言われてみれば香港映画ってティーンエイジャーの純愛モノ、青春モノ映画の代表作ってすぐには思い浮かばないような気が。

 あくまでも個人の感想ですが、このジャンルの台湾映画に見られるティーンエイジャーの恋愛観とか行動の純粋さみたいなものって、もともと日本にもあったものなのでしょうけれど、それらは

 

生活の便利さや快適さと引き換えに失った、個々人ならびにコミュニティ規模での大切な何か
 
西洋文化への憧れとコンプレックスが混ざり合い、反転して生まれた独自の価値観

 

 などによって絶滅寸前になってしまい、今の日本ではほとんど見られなくなってしまったもののように感じます。

 そしてこれら台湾の青春映画の中にかつての自分が持っていた、もしくはかつて自分も体験した

 

懐かしくてキラキラしていて、そして胸の奥にまだ残っているちょっと切なくて甘酸っぱい思い出

 

 といったものを追体験させてもらえるようなところが、日本でも人気となっている理由のひとつであるように思います。

 

 核家族化が進んで他人はおろか家族とのコミュニケーションも希薄となり、映画や音楽などで語られる「軽くてドライ」な洋風(?)の恋愛観を取り入れたものの、それが西洋社会のどこでも当てはまるものと勘違いして独自の解釈をしてしまった結果、台湾の青春映画に見られるような純愛はあまり見られないものとなってしまった現代の日本。

(アメリカやヨーロッパでも、そんな「軽くてドライ」な恋愛観がまかり通っていない保守的な地域なんていくらでもあることを私たちはずいぶん後になって知ることになります)

 

 日本映画の中でも、純愛を貫く系の作品は「余命わずか」とか「実は同じ時間・同じ世界に生きる人間ではない」などといった、あらかじめ終わりや別れが用意されたなかでの恋愛物語が多く、

 

そりゃそんな設定だったら軽いノリの恋愛なんてしてる場合じゃないだろうよw

 

 と思わずツッコミを入れてしまいそうになります。

 普通の生活の中ではもう純愛など成立しないのか、やたら盛りまくってドーピングし過ぎたせいで「もうこれぐらいやらないと効かなくなっちゃって…」みたいな状態になっているところが日本の残念なところです(笑)。

 『あの頃、君を追いかけた』は日本でリメイクされましたし(見てませんけど)、この分野では日本よりも台湾のほうがずっと優っているように個人的には思います。ですがそれはただ単に「隣の芝は〜」ということではなく

 

やはり日本人が無くしてしまった大切なものを台湾人はまだ持ち続けているのかもしれない

 

 と考え、謙虚にそのことを受け入れてみるという姿勢が大切なのかもしれませんね。

 

 

 

 …って隣のクラスの田中くんの弟の友達が言ってましたw

 

 

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