ブランドン最後のインタビューより
レビュー①のほうでも取り上げた雑誌『エスクァイア』日本版1994年9月号に掲載されていた、ブランドン・リーが事故死する一週間半前に行われたインタビューから一部引用して紹介します。
この映画で、死後の世界から2日間だけ蘇ることとなったエリックというキャラクターを演じるにあたり、死生観についてや「もし」エリックのような立場に置かれたらどうするか、ということを語っていますが、その後まもなく彼の身に起こった悲劇を考えると言葉を失ってしまいます。
『シェルタリング・スカイ』(1949年ポール・ボウルス作の小説)に、こんなすばらしい一節がある。
「われわれは、自分たちがいつ死ぬのか知らないから、人生を涸れない泉か何かのように考えがちだ。しかし、何であろうと数に限りはある……。幼かった頃の、ある午後の日のことを、これから何度思い出すだろう?……あの大切なひととき。あれなしでは自分の人生は語れない、と思えるあの午後のことを。あと四回か五回? そんなものだろうか? では、あと何回、満月が昇るのを見るだろう? おそらく、二十回ぐらいだろう。それでもなお、われわれは際限なく見られる気でいるのだ」
ちょっと回りくどい表現だけど、言っていることはよくわかる。人は誰でも永遠に生きつづけるような気でいるから、何もかもあって当然のこととして受けとめがちだ。友達を失ったり、死にそうな目にあったりして初めて、世の中の出来事や、まわりの人たちの大切さがわかる。この人とはもう二度と会えないかもしれない、と思ったり、外に食事に出かけるようなありふれたことも、これが最後かもしれないと思ったり……そういうことさ。そう思って初めて、人生の一瞬一瞬の大切さがわかるんだ。
そして、思った。もし僕が死んで、1年たって生き返るとしたら、誰に会いたいだろう、って。もちろん、フィアンセのエリザだね。彼女とは、この撮影が終わったら結婚するんだ。ところがエリックの場合は、一番会いたい人がこの世にいない。そこに彼の悲劇性がある。
サントラについて
1994年の作品ということで、当時の音楽シーン、とりわけ「グランジ」「オルタナティブ(~ロック/メタル)」などの単語とともに語られるバンドがサントラに数多く名を連ねています。
個人的にはメタル系は聴かないので詳しくは知らないものの「有名だということは知ってる」というバンドの曲も多数収録されています。
有名どころだとこんな感じ。
ジーザス・アンド・メリー・チェイン
キュアー
ナイン・インチ・ネイルズ
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン
ストーン・テンプル・パイロッツ
ロリンズ・バンド
ヘルメット
パンテラ
ジザメリからNINあたりまでは好きだったのでわりと聴いていました。レイジは嫌いじゃないけどとくにCDを買ってきくことはなかったです。それより下に記したバンドはほとんど聴かなかったのですが、当時仲の良かった友達がメタル系も好きだったので「何度か聴いたことはある」程度の知識はありました。
前にどこかのレビューに書いた気がしますがNINはライブを一度観たことがあり(トレント・レズナーのソロプロジェクト?もあったかも)、またジザメリについてはアルバム『マンキ』発売のタイミングで行われたツアーのチケットを買ったりもしました。
が、例によっての兄弟ゲンカで兄貴が脱退していまい(笑)、それじゃあ見てもつまんないかもなぁ…と思って払い戻しに応じてキャンセルすることに。ですので結局観ずに終わって今に至ります。
このメンツを見て分かる人には分かってもらえると思いますが、実にうまい具合のグラデーション加減で多方面に訴求する顔触れとなっています。
私のようにシューゲイザーやグランジ系が好きだったらNIN、曲によってはレイジあたりまではイケる。でもメタル系はちょっと…という人もいれば、バリバリのメタル好きだけどレイジやNINも結構好きだよ、っていう人もそこそこの数でいたはずなので、その辺のバランスもよく出来てるなぁという印象です。
ちなみに90年代のアメコミ映画のサントラだと1997年の作品『Spawn』のサントラも、時代を象徴するなかなかの顔触れとなっていました。
DVDに入っているブックレットには、サントラについても少し書かれていて当時10代~20代だった世代、所謂「ジェネレーションX」(バンドやコミックの名前じゃなくて)について触れている箇所がありました。この世代を描いた映画だと『リアリティ・バイツ』あたりが有名でしょうか。エリックがギターをかき鳴らしては叩き壊す場面やアジトの下で行われているライブの様子など、なんとなくその時代の雰囲気が出ているように感じられます。
作品面で見逃してはならないのが、この映画が、いま話題の“Xジェネレーション”と呼ばれる新世代の若者たちのカルチャーを積極的に取り入れている点。とりわけサウンドトラックには、彼らから熱狂的支持を得ているオルタナティヴ・ミュージックやハードコアロックのホットなナンバーが贅沢に盛り込まれ、「クロウ」のアンダーワールドを強力に支えている。
またサントラにも当然収録されている、ジェーン・シベリーによるエンディングテーマ『It Can’t Rain All the Time』のタイトルは、劇中エリックの曲として象徴的に使われる台詞「止まない雨はない」からきています。
というわけで2回にわたって『クロウ/飛翔伝説』について書いていきましたが、他の映画のレビューでも何度か今作についてちょこっと触れてたりします。
そこで書いていることと被ってしまいますが、ガッカリ感満載だったドラマ版『クロウ・天国への階段』で主人公エリックを演じていたのが、昨年公開され大ヒットを記録した人気シリーズの第3作『ジョン・ウィック:パラベラム』で暗殺者ゼロを演じた日本人の血も引いているマーク・ダカスコスであることや、ちょうど『クロウ/飛翔伝説』が公開された頃に「さくら銀行(現在の三井住友銀行)」のCMに出演していたジュリー・ドレフュスさんが出演しているというのは、今になってみれば興味深いところではあります。
まぁだからといってあのドラマの評価が変わるわけではありませんが(笑)。
YouTubeでクロウ関係の動画を少し見てみたら、コメント欄に「ブランドン・リーが演じる『マトリックス』のネオを見てみたかった」みたいな書き込みがあったりして、なるほどなぁ…と思いました。もちろんキアヌのネオは素晴らしいんですけどね。
続編はよほど納得できるキャストと内容じゃなければ見たいとは思いませんが、この『クロウ/飛翔伝説』を現在の特殊効果や映像処理などを駆使した「再編集版」的なものとして作るのであれば絶対観に行くんですけどねぇ。
IMAX 3Dで観る『クロウ/飛翔伝説』とか最高だろ…と。
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