前回のレビューではブランドン・リーの遺作であり今なおカルト的人気を誇る『クロウ/飛翔伝説』について、原作との関連性やバイレンス以外の「善なる部分」が物語に大きな魅力を与えていた点についてなどを書いていきましたが、今回は
・ブランドン以外のキャストについての情報
・2枚組のデラックス・エディション版に付いている特典DVDに収録されていたインタビューやDVD同封のブックレット、雑誌『エスクァイア』の特集記事などで語られる様々な要素
・豪華なメンツが揃うサントラについて
などを取り上げて書いていこうと思います。
ブランドン以外のキャストについて
ブランドン以外の登場人物で有名な俳優となると、『ゴーストバスターズ』のメンバーとしておなじみのアーニー・ハドソンくらいではないかと思われますが、他にも『ツイン・ピークス』シリーズや『ジョン・ウィック』にも出演している人や、B級バカ映画の傑作『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』でとても同一人物とは思えない容姿になっていたあの人など、脇役ながらも個性的なキャラクターを演じている俳優が出演しています。
アルブレヒト
警官アルブレヒト役のアーニー・ハドソンは『ゴーストバスターズ』で、ゴーストバスターズのメンバーのひとり・ウィンストン役として有名なほか、レベッカ・デモーネイ主演のサイコスリラー『ゆりかごを揺らす手』での知的障害者ソロモン役でも知られています。
シェリー
エリックの婚約者シェリーを演じたソフィア・シャイナスは、元々はシンガー・ソングライターとして活動していましたが、今作で映画女優としてのキャリアをスタートさせました。この翌年に日本でも公開されたチャーリー・シーンとナスターシャ・キンスキー主演の『ターミナル・ベロシティ』にも出演しています。
Tバード
Tバード役のデヴィッド・パトリック・ケリーは、ドラマ『ツイン・ピークス』シリーズでベンジャミン・ホーンの弟ジェリー・ホーン役で有名。2017年の『ツイン・ピークス The Return』にも同役で出演しています。さらにキアヌ・リーブスの人気シリーズの第一作『ジョン・ウィック』では、裏社会の“掃除屋”チャーリーを演じています。(報復を怖れたドラ息子が手下にジョンの自宅に襲撃をかけるも全滅、その後ジョンの依頼で家の中を「掃除」しにやってくる業者のボス役。もちろんこの映画のお約束で“あっち側”の世界に生きる者として、リスペクトし信頼できる間柄同士の場合はお互いに「ジョン。」「チャーリー。」と名前で呼びかけあいますw)
トップ・ダラー
トップ・ダラー役のマイケル・ウィンコットは『トーク・レディオ』『7月4日に生まれて』『ドアーズ』などのオリヴァー・ストーン作品のほか、リドリー・スコット監督の『1942 コロンブス』や、『蜘蛛女』『三銃士』などにも出演しています。
マイカ
トップ・ダラーの異母妹・マイカ役の中国人女優バイ・リンは今作が映画初出演。その後も様々な作品に出演しているようですが、個人的に今作との落差にビックリしたのがジェイソン・ステイサム主演のハイパーB級バカ映画『アドレナリン』の続編『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』での、完全に頭のイカれた鶏ガラ女役です(笑)。今作ではあんなに妖艶な姿だったのに……
ダーラ
サラの母親ダーラ役のアンナ・トムソンは、クリント・イーストウッドの『許されざる者』で、顔を切り刻まれる娼婦役を演じたほか、同じくイーストウッド監督作であるチャーリー・パーカーの伝記映画『バード』や、『マドンナのスーザンを探して』『危険な情事』そしてオリヴァー・ストーン監督の『ウォール街』『トーク・レディオ』『7月4日に生まれて』などにも出演。
それ以外にもハル・ハートリー監督作でイザベル・ユペール主演の『愛・アマチュア』にも出演しています。これはパンフレットがあるのでどこに出てたっけ…と探してみたところ、どうやら倉庫にいた若い女の役だったようです。昨年ザ・シネマでハル・ハートリー特集が組まれて多数放送されていましたが、この『愛・アマチュア』は放送されず……。残念。
特典DVDより
2枚組のデラックス・エディション版に付いている特典DVDには、ブランドンや他の出演者と製作陣、そして原作者のジェームズ・オバーなどへのインタビュー映像も収録されていて、作品をより深く理解できるものとなっていました。そこでいくつかその中から引用して紹介していこうと思います。
今作のテーマと、エリックというキャラクターについて
“愛は死を超越する”
これが「クロウ」のテーマだ──
原作者:ジェームズ・オバー
※レビュー①のほうに書きましたが、オバーには婚約者を飲酒運転の車による事故で亡くすという過去があり、またデトロイトで起きたギャングによるカップル惨殺のニュース記事を読んだことが『ザ・クロウ』のコミックを描くきっかけであったと言われています。そのことからも原作者オバーが『クロウ』に込めた“愛は死を超越する”というこのテーマがコミックのために思いついた軽いものではないことが解ります。
原作のコミックは『スパイダーマン』や『スーパーマン』のような大衆マンガじゃない
エッジの効いた作品なんだ──
ブランドン・リー
映画の主人公は観客と共に復活した理由と使命を知る
原作では彼は最初からその理由を知ってるんだ──
原作者:ジェームズ・オバー
※レビュー①の「コミックのあらすじ」にも書きましたが、頭を撃たれたエリックは死の間際で、シェリーがギャングたちにされたことの始終を見ていたのでした。カラスの「見るな」という忠告を聞かずに……
エリック・ドレイヴンはどこにでもいる男で、特別じゃない──
生前に偉業を成し遂げたわけでもなく
死者の世界から復活し初めてヒーローになれるんだ
自分たちを殺した犯人に復讐することでね──
製作:ジェフ・モスト
映画の世界観について
「クロウ」を描く時は大抵“白黒”が基本なんだ──
カラーで描いたのは回想シーンだけだ
映画は原作の通りだよ──
監督のアレックスはフィルターを用いて余計な色をすべて削除していったんだ
荒涼としたイメージを出すために──
そして回想シーンも原作通り
赤や黄色で色鮮やかな映像に──
原作者:ジェームズ・オバー
アレックス(監督のアレックス・プロヤス)と最初から決めていたんだ
“緑と青は排除しよう”と
雨と霧を使ったお陰で色調を統一することができたんだ──
ここまでの過程が大変で
絵コンテ上で緑や青など不要な色を取り除いていって
白と黒と赤に絞ったんだよ
赤には復讐のイメージがある
だから悪役の背景には赤を使った──
プロダクション・デザイナー:アレックス・マクドウェル
※光の三原色(RGB)はレッド、グリーン、ブルーの3色で構成されています
原作の世界観を忠実に再現しているつもりだ
あの骨太な感じと独特のスタイルを表現したいね──
だが何より違和感を感じさせない映像が目標だ
コミックと映画は別物だし
原作のストーリーに固執する必要はない
イメージだけ生かして
あとは観客の想像力に任せればいい──
ブランドン・リー
脇役について
エリックはアルブレヒトの分身でもあるんだ
親子とまでは言わないが──
アルブレヒトはエリックに不思議な縁を感じる
“この人物は知ってる どこかで会ったぞ”と──
アルブレヒトは事件の日に現場にいたし
エリックとの出会いを運命のように感じる
彼の恋人の最期を見届けたんだから
宿命だね──
アルブレヒト役:アーニー・ハドソン
グランジは企業の殺し屋でベトナム戦争を経験してる
人を殺すことは彼にとってゲームなんだ──
蜜に群がるハエを追うように
金のためなら容赦なく人殺しができる男で
殺しに魅せられてる──
グランジ役:トニー・トッド
※グランジとはスーツにボルサリーノ姿の黒人で、トップ・ダラーの参謀役的な男
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