【格式と矜持】映画『ジョン・ウィック:パラベラム』──どいつもこいつもあっち側【そして犬】

ジョン・ウィック:パラベラム ENTERTAINMENT
スポンサーリンク

スポンサーリンク

またしても「犬」

 モロッコのコンチネンタル・ホテルのオーナーで、元殺し屋のソフィアが飼っている犬のうちの一頭が撃たれましたが、その後のソフィアの修羅っぷりからも、てっきりその犬は死んでしまったのかと思いきや、パンフを読むと次のような一節が。

 

~だが、見返りとしてソフィアが連れている愛犬を要求し、彼女が断ると、犬を銃で撃つ。幸い、犬は防弾衣のおかげで無事だったが、ソフィアの怒りが爆発。~

 

 あ、無事だったのね。よかったよかった。その後の戦闘シーンで犬が2匹いたから「あれ、連れてた犬って3匹だったっけか…」などと考えながら観ていたんですが助かってたということでしたか。ぼんやりしてると見逃しますね。。

ジョン・ウィック:パラベラム

© Lionsgate
無事でよかったね

 

 で、「犬を撃たれんでガチギレしました」っていうのは『ジョン・ウィック』シリーズ的にはやはり

 

「ですよね」

 

 っていう感じなんですけど、あれだけ主席連合に狙われないように気をつけていたソフィアが、理屈での忠告に全く耳を貸さず

 

「うるせぇ馬鹿!」状態

 

になる動機付けとしてはやや弱かったようにも思われたのですが(ジョンと違って番犬として飼ってるようだし、彼女が犬をどれだけ大事にしていたかの描写がとくにないため)、途中で

 

「あ、そうか。飼い犬が撃たれたんだった……うむ、ならば仕方ない」

 

とグダグダ言わずに納得することにしました(笑)。

 だってこの一大闘争のそもそもの始まりとなった「理由は犬」なのですから。つーかどんだけデカいバタフライ・エフェクトだったんだよっていう。

トンデモ日本と最強の殺し屋

 闇社会の中でも上位の者たちが集う、いわば「本物のみがここに居ることを許された世界」であるはずのこの映画で、残念なことに「トンデモ日本」が登場してしまいました(笑)。

 日本人で、普段はNYの片隅で寿司屋を営む“現役最強の殺し屋”ゼロと、その弟子であるシノビ1、シノビ2たちです。

 ただしゼロを演じているマーク・ダカスコス自身は、そのキャリアも素晴らしいもので、さらに日本人の血も引いているようなので配役的には問題ないんですが、あの寿司屋の店構えとたどたどしい日本語はいただけません(笑)。

「どこの世界に窓も仕切りもなくて雨水やら土埃やら排気ガスなんかがモロ被りしそうな吹き抜けの寿司屋があるんだよw 屋台のラーメン屋ですら暖簾があるっちゅーにw」
「可愛いからフィクションとしてはいいけど、寿司屋のカウンターに放し飼いの猫がいちゃまずいだろw」
「ってかなんでNYなのに品書きの値段が「円」なんだよw」
「なんで板前があんな小さいまな板で捌いてるだよww ってかその板って客に寿司を出すときのやつだろw」

 …と、言い出したらキリがないレベル。。日本通のキアヌ的にあれはOKだったのだろうか?…と思ったらパンフ情報によれば、このゼロの寿司屋設定はキアヌのアイデアとのことです(笑)。

 しかも弟子が「シノビ」だけにBGMも『にんじゃりばんばん』ってあーたw

 

 また問題のセリフはちょっと忘れてしまったんですが、ジョンとの決闘の場面でゼロが言い放つ拙い日本語が、その場のシリアスさとあまりにも釣り合わない脱力さ加減だったのがねぇ…。

 さすがにこれには近くの席で観てた若い女の子が声だして笑ってましたw……そらまぁ笑うわなw

 

 といった残念なトンデモ描写こそありましたが、それでもゼロ&シノビたちとの最終決戦のシーンは彼らの強さに加えて、決戦の舞台も前作での(『燃えよドラゴン』へのオマージュ感バリバリだった)鏡の間の進化版といった感じで、防弾ガラス越しの目くらましや次々に投げ飛ばされてガラスが粉々に砕け散る豪快で美しい演出、ふっと姿を消して別の角度から襲いかかるという忍者のような動き(?)など、その空間の非現実さと相まって実に見応えのあるものでした。

 そんな息詰まる場面にも関わらず「そこで止めるんかいw」みたいな、ときどき笑える要素をブチ込んでくるところもさすがといった感じ。

まさかのシンクロ

 っていうかゼロ役のマーク・ダカスコスについてちょっと調べてみたら、なんと彼は(個人的に)残念だったドラマ化作品の代表格とも言える『クロウ・天国への階段』の主人公エリック役だったことが判明! そういえばこんな顔だった~!

 偶然でしょうか…『ジョン・ウィック』のレビューに、私が大好きな映画『クロウ/飛翔伝説』との類似性について少し書いたのですが、こんなところで『クロウ』シリーズと繋がってくるなんて。。。

【理由は犬】映画『ジョン・ウィック』──始まって15分で観客から許可が下りる
...

 このドラマ版『クロウ』は、映画やコミックが持っていたダークな世界や、過去の映画2作(まぁ続編もアレでしたけど)の魅力のひとつでもあった「闇とゴシック的世界観の融合」みたいな映像美がすっかり抜けていて、普通に太陽さんさんの日常で(エリックは死の世界から蘇った男なので夜に活動する)、車の修理屋か何かをやっている主人公という実にアメリカンな設定(笑)が『クロウ』の雰囲気を見事にブチ壊してくれた作品だったので、もちろん最後まで見ることもなく、1~2話で脱落したのでした。いや〜、あのときのエリックが「ゼロ」の人だとは…

映画『クロウ/飛翔伝説』①──原作との関連性、そして今なお支持される魅力の理由とは【ブランドン・リー】
...
映画『クロウ/飛翔伝説』②──DVDの特典映像やブックレット、雑誌の特集などから作品を紐解く【本棚通信⑨】
...

 

© Lionsgate
ズラリと並ぶ「Guns, lot of guns.」

 

続編があるかどうかについて

 これはもう言わずもがなですよね。

 NYコンチネンタルの支配人ウィンストンが退任宣告され、バワリー・キングが7回切られたあたりで「これ絶対続編あるだろww」と確信しましたよ私は(笑)。

 

この流れ、この勢いでこのまま完結するはずがねぇ!!!

 

 と。もう最高ですw

 

  • 飼っていた犬を撃たれたことで逆上した結果、主席連合に追われる身となったソフィア(&犬)
  • ジョンの“育ての親”であるディレクター
  • 主席連合と対立する気まんまんのバワリー・キング(&部下と鳩)
  • 最後、裁定人を欺いたとしか思えないNYコンチネンタル支配人(&コンシェルジュ)
  • ソフィアの元ボスで犬を撃った主席連合のベラーダ
  • 今イチ威厳が感じられなかった主席連合の上に立つ“首長”
  • 今作では本人のスキルを見ることはなかった“裁定人”

 

 これらの大物クラスがみな生き残っていて、それぞれが一触即発の火種を抱えているこの状況……次作が楽しみで仕方がありません。

 あと可能性は低そうですが、今回お互いのリスペクト精神によって命が助かったシノビ1と2も、もしかしたらまた登場するかもしれませんね。…ないか(笑)

 そのほか、NY・ローマ・モロッコ以外にも「コンチネンタル・ホテル」は沢山ありそうですし、主席連合の他のメンバーもまだまだいるでしょうから、しばらくはキャラやネタが枯渇することはないでしょう。

 個人的には“アカウント部”のおねえさんたちが戦う場面も見てみたいっす(笑)。

 

 まーでもシリーズ物として考えると今作がピークなのかもしれないな〜という気もしますけどね。

 

映画とドラマのレビュー一覧はこちら(更新日時順)

 

映画『コンスタンティン』──『エンド・オブ・デイズ』との類似点や服装の考察、あと最近のオカルト謎解き合戦について思うこと【キアヌ】
...
【考察】映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』──ラストシーンの解釈について【最後はどうなった?】
...

comment

タイトルとURLをコピーしました