1991年公開(日本での公開は翌92年)の映画『ふたりのベロニカ』。
ポーランド出身のクシシュトフ・キェシロフスキ監督は今作のあと「トリコロール三部作」と呼ばれる3本の映画『トリコロール/青の愛』『トリコロール/白の愛』『トリコロール/赤の愛』を発表し様々な映画祭で賞を受賞しますが、今作『ふたりのベロニカ』で主演を務めたイレーヌ・ジャコブを再び主演に迎えた『~赤の愛』から2年後の1996年、54歳という若さでこの世を去っています。
同じ日にポーランドとフランスという全く別の場所で生まれ、瓜二つの容姿と「ベロニカ」という同じ名前を持つふたり。
その「ポーランドのベロニカ」と「フランスのベロニカ」の数奇な運命を描いた今作は、一度見ただけでは分かりにくい様々な要素が散りばめられているのですが、それらを知ることでふたりの関係性や起きてくる出来事の意味が見えてくる──そんな作品となっています。
ポーランドとフランスに暮らす「ふたりのベロニカ」の不思議な繋がりとそれぞれが持つ役割、物語に登場する順番やオープニングとエンディングの関係、さらにはふたりに直接会っている人物がいたことなど、今回改めて見直してみることで、今まで気付かなかった多くのことを見つけることができました。
また、この数奇な運命のふたりはスピリチュアル的な解釈で見ると、ポーランドとフランスのベロニカは
「ツインレイ」と呼ばれる関係
だったのではないかと思われる点も、大変興味深いところです。以前見たときはそのような言葉すら知らなかったので、そういったことを知ってから見るとまた新たな発見を得ることが出来、より理解が深まったように感じます。
なおここで書いている内容は映画の中で実際に描かれているものを元としてはいますが、あくまで私個人の考察によるものですので、公式な解釈というわけではありません。
また「ベロニカという同じ名前を持つ」と書きましたが、ポーランドのベロニカの綴りは「Weronika」で、フランスのベロニカの綴りは「Véronique」となっており、読み方も少し違います。
ふたりは“ツインレイ”なのか
占いやスピリチュアルなどに興味がある方はよくご存知かと思いますが、この「ツインレイ」と呼ばれるものをものすごく簡単に説明すると、
“ひとつの魂がふたつに分かれて、同じ時代にこの世に生を受けた存在”
なのだそうです。容姿や特徴、誕生日などが共通する場合もあれば、反対にまったく逆の性格や特徴を持っていたりすることもあるとか。
今作でのふたりは完全に前者のケースで、実に多くの共通点を持っています。
・生年月日が同じ
・容姿が瓜二つ
・母親を早くに亡くし、父は再婚せずひとりで娘を育てた
・音楽の才能がある
このような「以前から持っていた(ある種普遍的な)共通点」に加えて、映画の中で描かれるシンクロする出来事や癖のようなもの、そして全く知らないはずのお互いの存在を心のどこかに感じるという現象が数多く登場し、それらを見ていくと
やはり彼女たちは「ツインレイ」だったのではないか
としか思えなくなってくるのです。
今作での「ふたりのベロニカ」たちの、ツインレイとしての悲しい宿命(あくまでも映画での描かれ方という意味ではありますが)についてはまた後で述べますが、まずはそのシンクロする出来事や持っている癖、お互いに「もうひとりの自分」を意識する点などについてを上げていきます。
ふたりの共通点とシンクロする出来事
一部、時系列的に映画の流れと前後するところもありますが、以下のような点が共通するところとして挙げられます。
【ポーランドのベロニカ】
「黒い紐」を指にくるくると巻き付ける癖がある
【フランスのベロニカ】
ある日封筒に入った「黒い紐」が届けられる
【ポーランドのベロニカ】
叔母に「夕立でずぶ濡れになった日に、金髪の男と寝た」という話をする。だが実際にそのときに寝たボーイフレンドは金髪ではない
【フランスのベロニカ】
心に大きな喪失感を感じた日、ボーイフレンドと寝ていた。しかし職場である学校へ行くと、そこには彼氏のようにふるまう別の男がいる
【ポーランドのベロニカ】
星の模様が入った透明なラバーボールを持っている
【フランスのベロニカ】
星の模様が入った透明なラバーボールを持っている
【ポーランドのベロニカ】
リップクリームを常用している
【フランスのベロニカ】
リップクリームを常用している
【ポーランドのベロニカ】
指輪で目の下をなぞる癖がある
【フランスのベロニカ】
指輪で目の下をなぞる癖がある
【ポーランドのベロニカ】
コンサートで着る服を選んでいるとき、窓の外に老婆が歩いているのを見かける
【フランスのベロニカ】
教え子たちに演奏させているとき、窓の外に老婆が歩いているのを見かける
【ポーランドのベロニカ】
コンサートで演奏されていたのはオランダのヴァン・デン・ブーデンマイヤー(架空の音楽家)の楽曲
【フランスのベロニカ】
学校で子供たちに教えていた楽曲はオランダのヴァン・デン・ブーデンマイヤーの楽曲(ベロニカのお気に入り)
【ポーランドのベロニカ】
コンサートの最中に倒れ、そのまま息を引き取る
【フランスのベロニカ】
あるとき突然、大きな喪失感と悲しみに襲われる。そして突然音楽をやめる
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