出演陣について
同じクリストファー・ノーラン監督による『インセプション』や『インターステラー』などと比べると、出演俳優の分かりやすい豪華さみたいなものはやや劣るのかもしれませんが、それでも同監督作品の常連でもある大御所マイケル・ケインや、名優でもあり映画監督としても活躍するケネス・ブラナー、さらには90年代のハル・ハートリー監督作品でお馴染みのマーティン・ドノヴァンもちらっと出ていたりして、なかなか興味深いキャスティングとなっていました。マーティン・ドノヴァンはあとでWikipediaを見るまで気付きませんでしたが(笑)。
そのWikipedia情報で主演のジョン・デヴィッド・ワシントンの父親はデンゼル・ワシントンだとことも知っわけですが、それよりも驚いたのは、部隊長のアイブス役の人が『キック・アス』の主人公デイヴを演じたアーロン・テイラー=ジョンソンだったということです。
強い信念で部隊を率い、その役目を負うものは命を引き換えにしなければならないという「生きて戻ることができない役割(=アルゴリズムの奪還)」を担う“別ユニット”を、仲間を犠牲にしないため自分ひとりで行おうとしていた、まさにリーダーの鑑とも言うべき質実剛健を絵に描いたようなあの男がキック・アスだったとは………
続編の『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』の最後では肉体改造に励んでムキムキになってはいましたけど、いやもうこれ全然別人じゃん…っていうくらいのキャラの違い。。やっぱり身体つきが大きく変わると演じる役柄も全然変わってくるんですねー。
主人公の相棒ニールや、最初に逆行武器についての説明をしていた科学者バーバラなどについては『トワイライト』シリーズや『ハリー・ポッター』シリーズを私がまるで見ていないのでほとんど知らないのですが、その辺の作品を好きな方には「おぉっ」という感じなのでしょうかね。
あとキャット役の人は絶対どこかで見たことあるなと思っていたら『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』で、本筋とちょい外れたところでガーディアンズを追いかける金色の女王役だとか『クローバーフィールド・パラドックス』(Netflix配信作品)に出ていた人でした。関係ありませんがこの方、身長191cmだそうです。
マイケル・ケインの登場シーンに隠された不可解な描写
さて、これはあくまでも余談ですが、こういう映画を見てしまうとついつい
「実は大きな意味のある隠された描写」があるんじゃないか
という疑いを持ってしまいます。別にそれを見つけてドヤろうとしているわけではありませんが(笑)。
それで一度最後まで見終わってからそういうネタを探してみたら、ロンドンのシーンでちょっと変なところがあるのを発見しました。
これはおそらくこのシーンを何度も撮影するにあたり、OKとなったカットを編集で繋ぎ合わせた際に起こった一種のミスみたいなもので、いわゆる“イースターエッグ”(隠し要素)というものではなさそうですが、まぁ一応ということで。
で、その変なところというのは、マイケル・ケイン扮するMI6の協力者、マイケル・クロズビー卿と主人公がレストランで会話するシーンの中にありました。
このシーンはテーブルを挟んで主人公とクロズビー卿が向かい合って座っている状態で、短い会話のキャッチボールがしばらく続く場面なのですが、話しているほうをカメラがその都度捉えるのでかなり頻繁にカメラが切り替わります。
そしてこのときクロズビー卿の後ろのテーブルにいる客がぼんやりと見えるのですが、この客の様子がちょっとおかしいのです。
先ほども書いたように、お互いが短いセリフを喋るたびにカメラが喋っているほうを捉えるので、かなり目まぐるしく視点が切り替わります。ふたりとも一度に喋るセリフが短いので、クロズビー卿を映したあとに主人公のカットを挟んで再度クロズビー卿が映るまでの時間は、長くても4~5秒程度です。
クロズビー卿の背後にいるその男が画面に映る回数は27回(たぶん)ありました。そのときの男の状態は以下の通りです。
①メニューを読んでいる。膝の上にナプキンはかけていない
②クロズビー卿をアップ目で捉えているので後ろがよく見えないが①と同じ状況で、奥(男の左横)にいる男性と話している
③これも②と繋がっていて、奥の男性と会話している。メニューを持ち、ナプキンはかけていない
④さらにアップになるので手元が映らないが、まだメニューを持っている
⑤メニューはテーブルの上に置いてある。ナプキンをかけていないのは同じで、カメラが切り替わる直前に男は再びメニューを手に取る
⑥男はメニューを見ているが、いつの間にか膝にナプキンがかけてある。⑤から⑥までの時間内にメニューを一度置いてナプキンをかけ、またメニューを持つことは不可能。さらにテーブルの上のグラスの数が増えている
⑦かなりアップとなるので一部しか見えないが、メニューを読んでいるのが確認できる
⑧⑥と同じ状況
⑨またかなりのアップとなるので一部しか見えないが、手でナプキンを畳んでいるような動きが確認できる。だが⑧から⑨までの間に手に持っていたメニューをテーブルに置いて膝上のナプキンを畳み始めるのは時間的に不可能
⑩⑨よりもさらにアップとなるので手先が見えないが、メニューを読んでいるようにも見える
⑪メニューはテーブルの上で、膝上にはナプキンがかけてある
⑫⑪と同じ状況
⑬⑫と同じ状況のように見えるが、膝上にナプキンがない
⑭⑬と同じ状況
⑮男が左肘をテーブルについてやや前屈みになっている
⑯アップのため少ししか姿が見えないが、まだテーブルに肘をついているのが確認できる
⑰男が腕時計を見る
⑱男がまたテーブルに肘をつく
⑲テーブルの上に畳まれておいてあるナプキンを手に取り、広げようとする
⑳これもかなりアップだが、男はメニューを読んでいるように見える。⑲で手に取ったナプキンは持っていない
㉑男がメニューをテーブルに置く。膝上にはナプキンがかけられている
㉒かなりのアップのため一部しか見えない。男が腕組みしたように見える
㉓男がまたメニューを見ている。膝上にあったナプキンが消えている
㉔メニューがテーブルの上に置かれている。膝上にナプキンがかけられている
㉕㉔の状況で、男が左手で何かを摑もうとしている
㉖男が左手でフォークを持つ
㉗男は膝の上で両手を重ねている。膝上にナプキンがない
要するにほんの数秒の間にメニューやナプキンの状態が変わったり、テーブルの上のグラスの数が変わったりしているということです。
もし万が一、これに何か意味があるのだとしたら面白いんですが……別に意味なんてないんだろうなぁ(笑)。
レビュー前半のまとめ
というわけでレビューその①は以上になります。その②ではクライマックスのスタルスク12での戦闘シーンの検証・考察のほか、
という、物語を読み解くうえで非常に重要となるポイントと、そしてこの『TENET』を見ていて思い出した2000年代中盤に作られたとある海外ドラマなどについても書いていますので、よろしければその②のほうもぜひお読みください。
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