『スター・ウォーズ』サーガ全7作(2017年10月時点)をリアルタイムで劇場にて鑑賞していることだけがささやかな自慢っていう、その辺にいる普通の中年なんですが(笑)、それでも一応SWに対する思い入れはそれなりにあったりします。
ep1〜ep3の公開時はもちろんSWの新作という一大イベントに十分乗っかって楽しみました。でも「子どもの頃に夢中になったあの感じとはなんか違う」という感覚もあり、年を追うごとにそこが引っかかるようになりました。
そしてep7での壮大な焼き直しを見て、あぁ…やっぱり旧3部作以降は「SWという鋳型の中で作られた“お約束”を満たすオフィシャルなコンテンツ」を楽しむだけのものなんだな、と諦めのようなものを感じたのでした。
ただし、ep7ではじめてSWというものに触れた子どもたちにとっては、あの作品はかつて自分がep4を見たときのどうしようもない興奮を、新作映画として体験できるという意味ではとても良い作品なんだろうとは思います。実際なんだかんだ言って私も劇場で3回観ましたし(笑)。
という流れのあとでの、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』──。物語の内容からして完全に「おっさん向けのお接待映画」だと思っていました。もちろんそれを理解したうえで存分に楽しむ気まんまんで観に行ったわけですが…
率直な感想
いやー、感動しました……。まさか「スター・ウォーズ」で泣かされるとは。。
もしこれまでの全作品と比べた場合、自分の中では『ローグ・ワン』の順位はこうなります。
『帝国の逆襲』と並んでの2位
1位はもちろんep4『新たなる希望』で、それに次ぐ作品ということでep5『帝国の逆襲』と同順位にしました。
『帝国の逆襲』は映画としての完成度や、『新たなる希望』で掴んだファンの期待をはるか上まで飛び越えていった傑作であり、またep4ではまだぼんやりとしていたSWの世界観を確立させた金字塔的作品であることは間違いありませんので、ファンの方々の「『帝国の逆襲』こそNo.1」という意見に対して一切否定するつもりはありません。
ですが個人的には、やはり「最初の物語があってこそ」だと思っていますし、何よりep4を観たときの感動と興奮に勝るSW作品は今後もないだろうと思っています。
ではなぜこれほどまでに『ローグ・ワン』に感動したのかというと、それは「SW作品としてどうなのか」ということを考慮して整合性を保ちつつも「純粋にひとつの映画として心が震えるものがあった」からです。
【追記】スター・ウォーズ全11作品の個人的ランキングを書いてみました。
戦争映画だった
ep4『新たなる希望』は子どもから大人まで楽しめる壮大なスペース・オペラであり、古典的な“冒険とロマンのファンタジー”といった、いわゆる「おとぎ話」でした。まぁ、最高ですよね。いつの時代も子どもたちは冒険物語に夢中になるものですから。
その後の作品は全てep4を元にして、世界観の辻褄を合わせながら作られた「銀河系のはるか彼方で繰り広げられる、テクノロジーと魔法(フォース)が共存する世界の一大歴史ドラマ」みたいなものでした。ですから死や別れ、善悪の戦いなどの要素はあっても基本的に「おとぎ話」としての軽さというか、無責任さみたいなものがあったように思います。
そこへ突然『ローグ・ワン』が、“名もなき戦士たちが正義のために命を懸けてミッションを遂行し、そして死んでいった”という、非常に重たいテーマの戦争映画として乗り込んできたわけです。
物語の世界は間違いなくスター・ウォーズです。フォースを使うものも出てきます。ですが主役は、これまでのSWではほとんど焦点が当たることなどなかった連中です。
そして何よりも他のSWと違う点は「彼らが何のために命を懸けて戦い、何を為して死んでいったのか」をちゃんと描いているところではないかと思います。
反乱軍の賛同を得られず、ボーディとチアルート、ベイズの4人だけで設計図を奪いに行こうとするジンにキャシアンがかけた言葉は、もしこれが他のSW作品でのものだったら薄っぺらく感じるところですが、今作で語られる台詞だと本当に重みのあるものとして響きます。劇場で2度目に観たときは、結末を知っているだけにこの辺でもう泣きそうでした。
我々の何人か
いや ほとんどが──
反乱軍のために手を汚してきたスパイ
破壊工作
暗殺全て反乱軍のためだった
後ろ暗い任務を終えるたびに
大義のためと自分に言い聞かせたでなければ──
全てが無意味になる自分たちのしてきたことが
自分と向き合えなくなる我々の誰もが
中盤までの間延び感と後半の盛り上がり
個人的に大絶賛の今作ですが、それでも初回鑑賞時の中盤あたりまでは(おそらく世界中で同じことを感じた人がいたと思いますが)
「あれ、なんか面白くない……」
という、ここから先に対する不安がむくむくと湧いてきたのも事実……
スター・ウォーズ的に言えば「いやな予感がする」というやつです。
がしかし。
後半の「ならず者集団=ローグ・ワン」が団結して惑星スカリフへ乗り込んでいく辺りからは話が一気に加速してきて、そこからはもう全てが最高でした。心が震えるというのはこういうことか──という、何かこう、熱いものがこみ上げるあの感じ……
監督はハリウッド版ゴジラの監督を努めたギャレス・エドワーズですが、撮り終わったバージョンの出来がよくなかったらしく、なんでも後半の40%くらいを別の人が撮り直したのだそうです。ってことは面白かったのはその撮り直したところかいっ、って話ですが…まぁそういうことなんでしょうね。。
すべての始まりである『スター・ウォーズ 新たなる希望』のオープニングロールと、惑星ヤヴィンでちょっと語られただけの“名もなき勇者たち”ローグ・ワンの活躍に焦点を当てた作品ですが、「活躍」と呼ぶにはいささか地味なミッションではあります。
帝国軍の本丸というわけではない場所から、ひとつのデータを盗むという、“スター・ウォーズ”の看板がついた作品にしては非常に小さい出来事についての物語…。
ジェダイも出てきません。帝国軍の主要艦隊や基地を壊滅させたりもしません。大役を果たして帰還し、英雄として勲章を授かったりもしません。
そしてep4以降の作品に彼らは登場しないことから分かっていたことではありますが、全員死んでしまいました。
ですが、のちのサーガに繋がる大きな大きな意味を持つこのミッションを、それぞれがそれぞれの役割を命と引き換えに遂行し、それをリレーのように繋いでいったその先が、あのルークがデス・スターに放ったプロトン魚雷の一撃となったわけです。
かれらローグ・ワンの面々が、それぞれどのような役割を担い、それを遂行し、そして散っていったのかは次のページにて。
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