『プレミアムカフェ「旧東ドイツ 激動の日々」』に見る、当時の旧東ドイツの人々
この番組は、当時様々な立場でベルリンの壁崩壊とその後の東西ドイツの統一を体験した人々への取材をもとに作られたドキュメンタリー番組で、ほとんどは旧東ドイツ人の視点で語られているものでした。
・アレックスの母のように社会主義に傾倒していた、社会主義統一党の党員だった女性
・西側の男性と恋に落ちて結婚した旧東ドイツの女性
・旧東ドイツの秘密警察・シュタージが保管していた住民の情報を開示させるべく本部に忍び込んだ活動家たち
(映画で父が亡命したあと家にやってきて母にしつこく問い質していたのはシュタージの男たちです)
こういった人たちの証言から当時の様子が語られていくのですが、資本主義という西側の社会に飲み込まれていった旧東側の人たちの問題と、東側・西側の両者の間に生じた「心の壁」という、私たちがあまり知ることのなかった現実を見ることができる番組となっていました。そして、
・旧東ドイツは当時破産状態で、西側の同胞たちによる援助頼みであったという事実
・旧東ドイツ出身者を「OSSI」(オッシー)と呼び、旧西ドイツ出身者を「WESSI」(ヴェッシー)と呼び、両者には隔たりのようなものがあった
・西側の人の中には東側の人たちを「ダサい」「怠け者で役立たず」と見下していた人たちがいた
・旧東ドイツの人々は当時すっかり自信とやる気を失っていた
・1993年に旧東ドイツ出身の音楽プロデューサーが旧東ドイツのもので埋め尽くした懐古的なイベント「オッシーパーティ」を開き、世界中に報道される
といったような流れで、旧東ドイツの人々が
「かつての暮らしのなかにあった良い部分」
「失われつつあった自分たちのアイデンティティ」
みたいなものをもう一度見つめ直そう──という動きがあったことも、この番組によって知ることができたのでした。
ちなみに私が仲良くしている(まぁ直接会ったことはないんですがw)ドイツの方は、先に書いたように旧東ドイツ地域の人なので、ベルリンの壁崩壊当時のことやその前後の変化とか、旧西ドイツ地域の人との違いやお互いにどう思っているのかなど、本当はずっと前から聞きたくて仕方ないのですが、それについては全く話してくれません。
何となくその話題に行くように話を振ってみたりしたこともあるものの、ちっともそれには乗ってくれないんですよね…。
ネットで目にする情報などでは、旧西側地域と旧東側地域では経済的な格差が大きいという話ですし、その辺りは都市の規模や人口などにも如実に表れているようにも感じます。
私のその友人は子どもが2人いる女性(そして美人)ですが、仕事で成功しているようで国内外問わずしょっちゅう旅行に行っており
「やっぱ今のドイツって豊かな国なんだなぁ…」
と思わずにはいられないのですが、それでも私たちのような現代の日本人にはない素朴さのようなものも感じられたりします。最初のうちはこういうところに気付けなかったのですが、この『グッバイ、レーニン!』やNHK-BSプレミアムの番組などを見たことで、その素朴さの出どころみたいなものを感じ取ることができたような気がしています。
キャストについて
アレックス役のダニエル・ブリュール
アレックス役のダニエル・ブリュールは、私が好きな俳優のひとりであることは以前にも他のレビューで書きましたが、この映画での成功を皮切りにその後数々のヒット作品に出演している、ドイツ人の売れっ子俳優です。
ドイツ人の父親とカタルーニャ人(カタルーニャは以前から独立運動が盛んなスペインの州のひとつで州都はバルセロナ)の母親を持つダニエル・ブリュールは、ドイツ語はもちろん英語、スペイン語、カタルーニャ語を流暢に話すことが出来てさらにポルトガル語も理解出来る(Wikipediaより)という語学力を活かして、スペイン語やドイツ語を話す役を多く演じています。
『サルバトールの朝』
『パリ、恋人たちの2日間』
『イングロリアス・バスターズ』
『EVA<エヴァ>』
『ラッシュ/プライドと友情』
『コロニア』
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』
『クローバーフィールド・パラドックス』
などなど、やはり数カ国語を話せると世界中の様々な国(宇宙もw)が舞台の映画に起用されて重宝されるようですね。
ララ役のチュルパン・ハマートヴァ
アレックスの恋人ララは、役の中ではソヴィエト人という設定だったのでてっきり知らない女優さんだろうと思っていたんですが、見終わってからWikipediaで名前などの確認をしていたところ、彼女の名前を見てビックリ!
チュルパン・ハマートヴァ
チュルパン………
もしや! と思って見てみたらやっぱりそうでした。
彼女はドイツ人監督ファイト・ヘルマーの映画『ツバル』でヒロインのエヴァを演じていたあの美少女でした。おぉぉ……、なんと感慨深い。。
この『ツバル』は1998年製作の作品ですが、日本での公開は2001年なので『グッバイ、レーニン!』の公開とあまり離れてはいないものの、自分が『グッバイ、レーニン!』を見たのが今ということで勝手にひとり盛り上がっているという(笑)。
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