映画『LIFE! (The Secret Life of Walter Mitty)』──その一歩で、世界は変わる

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音楽が背中を押す

 

 

ホセ・ゴンザレス José González『Step Out』

 

 エンディングで流れる歌はホセ・ゴンザレス『Step Out』。映画を見てからこの曲を聴くと、印象的なリフレインが劇中の雄大な光景と重なって、じっとしていられなくなるような高揚感が湧き上がってきます。

 

 

デヴィッド・ボウイ David Bowie『Space Oddity』

 そして何といっても、劇中に何度も引用され、またこの映画で最も大事なシーンと言ってもいい“ウォルターが本当の一歩を踏み出す瞬間”に流れる曲──それがデヴィット・ボウイ『Space Oddity』です。

 

 

 グリーンランドの飲み屋?で、探しているカメラマン、ショーン(ショーン・ペン)の行方を知る手がかりとなる大男が乗るヘリコプターに意を決して飛び乗る場面

 

 せっかくここまで来たのに、及び腰になって立ち上がれないウォルターの前に突然、片思いの女性・シェリルがギター片手にステージに現れる。もちろんウォルターのいつもの空想ですが、シェリル(とボウイ)が歌う「トム大佐がカウントダウンとともに宇宙へ飛び立つ歌」の歌詞に駆り立てられるように、離陸寸前のヘリコプターにギリギリ飛び移ったウォルターの「やべぇ、俺本当に乗っちまったよ…」といった表情は実にリアルなものがあります。

 

 その一歩を踏み出すことがどれだけ勇気のいることか、見ている人はみんな分かっています。ですから見ている私たちは、最後はあれこれ考えるのをやめて飛び込んだものの、まだ気持ちが(意を決した自分の)覚悟に追いついてなくて「あぁ~やっちまったよ~!どうしよう~」と焦っているウォルターの心境もすごくよく理解できるんですよね。最初に劇場で見たときもエモーショナルなシーンだとは思いましたが、その後に起きることを知っている2度目の鑑賞時での気持ちの高ぶり・高揚感は相当なものでした。

 

 仕事場に貼られた写真のショーンが指をクイクイして呼んでいるのを感じ、会社を飛び出した場面も確かに最初の一歩ではありますが、本当の勇気と覚悟が試されて、未知の世界に踏み出した瞬間は間違いなくここである──と思っています。

 

 そして重要なのは、このあとに起こる様々な出来事、冒険も、このときの一歩に比べたら全然怖くなかった──ということ。もう車輪は回っているのだから、あとは走るだけ、といった感じでしょうか。

 

 つまり、人が勇気を持って乗り越えなければならないことは、結局のところ、最初の一歩「だけ」なのではないでしょうか。「最初の一度だけ」だからこそ怖いのかもしれませんが、そのジャイアント・ステップを踏み出しさえすれば「その一歩で世界は変わる」のでしょう。自分の場合もいつもそうです。最初はいつもビクビクして頭の中でシミュレーションしてはやっぱりやめて……の繰り返しですが(オープニングでシェリルのアカウントにウインクするだけで何度も思い悩むのもすごくよく分かります。あの行ったり来たりも切ないほどよく分かります)、いざ覚悟して踏み出したことは結局全て「やってよかった」と思えるものばかりでした。

 

 

YouTube動画のコメント

 

 この『The Secret Life of Walter Mitty』で使われている曲や名シーンの動画につけられている英語のコメント(ほとんどが短いものなので自分にも大体は理解できました)が賞賛コメントばかりで、「人生の中でとても大事な映画だ」というものであったり「この映画は私の人生を変えた」といったような言葉が並んでいます。読んでるだけで気分が上がってきますので、興味がある方は上記の原題で検索していろいろ見てみてください。やっぱり自分が出会ったとき、それを見ようと思ったとき=それが自分にとって必要なとき、なんだなとつくづく思います。

 

comment

  1. スーダラ より:

    Kさん、どうも。スーダラです。
    大好きな作品です。
    主人公が「変わる」「成長する」のではなく、変わることなくプロとしての矜持を全うし、内なる自分のパッションを解放する形になっているところが実に良心的で、且つリアリティがありましたね。
    こういう骨太な雑誌や、それを支える本物のプロフェッショナルたちが隅っこに追いやられるばかりでは味気ないですね。

    https://cinemanokodoku.com/2018/03/31/life/

  2. スーダラさん
    ありがとうございます〜。
    ホントそうですよね…。たしかにウォルターの人生が動き出すきっかけはあったとしても、結局のところ自身がそれまで真摯に取り組んできたプロとしての仕事や、父の代わりに家族を支えてきたことなどが大事なところで報われたり役に立ったりしたからこその物語で、決して「都合よく幸運がやってきて冒険の主人公になった」という男の話ではないところが良かったです。
    そういう意味でも、あの最終号の表紙のメッセージは強いなぁと思いました。

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