【ジム・ジャームッシュ監督作】映画『デッド・ドント・ダイ』──思いのほかロメロ風味【DDD】

ENTERTAINMENT

ジョージ・A・ロメロ監督の2作との関連・共通点

 コメディであり不条理感が漂う変な(笑)映画ではありますが(というかゾンビという設定自体がそもそも不条理なわけですがw)、ジョージ・A・ロメロ監督が初期の2作で描いていた要素──『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』での「根深い人種差別問題」であったり、『ゾンビ』で強烈に風刺していた「人々が大量消費社会のプロパガンダに染まっていくことの滑稽さ」などが、この『デッド・ドント・ダイ』には描かれていました。

現代社会の問題点を描く

 スティーヴ・ブシェーミ演じる白人至上主義の農夫ミラーは共和党支持者の(というかトランプ大統領のスローガンが書かれた)赤い帽子を被っていて、自宅にライフルをたくさん所持しているという「いかにもな描写」で、アメリカの映画業界総出のいつもの反トランプ思想がモロ出しで正直「またかよ」という感じでしたが、まぁそこは割り切って映画を楽しむことにします。

 …と思いきや、パンフをよく見たらこの赤い帽子に書かれている文言は「KEEP AMERICA WHITE AGAIN」でした。。トランプ大統領が掲げていたスローガンは「KEEP AMERICA GREAT AGAIN」なのでエラい違いです。いやはや露骨ですなぁ…。

 ロメロ監督の『ゾンビ』で、大型ショッピングモールに吸い寄せられて徘徊するゾンビたちの姿は、

 

自分で考えることを放棄して

 

「人が集まるところに何となく集い」、そして

 

「新しいものが発売されるたびに何かを買い、古いものは大切に扱わずにすぐ捨てる」

 

 という、大量消費社会のプロパガンダにすっかり乗せられて物欲を満たすためにフラフラと彷徨う現代人の姿を風刺したものでしたが、今作で登場するゾンビも

 

「生前に執着していた欲求(飲食物やスポーツ、インターネットなどなど)に従って行動する」

 

 という特徴を持っています。

 彼らのそのような姿は滑稽でありつつも、決して人ごとではないという…。

 今の自分がゾンビになったらきっとこう言うでしょう。

 

「YouTube……」

 

 なお、映画評論家の町山智浩さんが有料配信している音声でのデジタルコンテンツ「映画ムダ話」の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』の回では、この映画の中で描かれている人種差別問題のことを当時の世相なども交えて実に詳しく解説されています。興味がある方は1話¥220ですので購入して聞いてみてはいかがでしょうか。

 私はこのサイトを始めて間もない頃はよく購入していたのですが、自分でレビューを書くようになるとそういったところから得た情報を無意識にでもパクってしまうことがないようにと、今は聞くのをやめています。まぁでももう書き終わった映画とか書く予定がなさそうなものはまた聞いてみようかなとは思っていますけど。

ゾンビ出現の原因

 今作では、エネルギー関連の企業が行った北極での水圧破砕工事が原因で地球の地軸が動いて様々な悪影響が出たことがゾンビ化の原因ではないかとされていますが、ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』と『ゾンビ』も似たようなことが原因として描かれていました。

 『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』では、月ロケットの実験が失敗し放射能がまき散らされたためとされています。

 かたや『ゾンビ』のほうはオープニングでの惑星爆発のシーンと、その惑星からの光線が影響して死者が蘇った──という描写が“日本劇場公開版”に含まれています。

映画「ゾンビ-日本初公開復元版-」本予告

人の描き方が「ゾンビ映画」っぽくない

 ジャンル的には「ゾンビもの」または「ゾンビ・コメディもの」という部類となるのでしょうが、冒頭の場面からすでに

 

「登場人物の描き方がゾンビ映画のそれとは違う」

 

 という印象を受けました。やはりこれは「ジム・ジャームッシュ映画」であり、登場人物のキャラクター描写やそれぞれの特徴などは「いかにも」な感じです。実はとくに意味深でもないような場面やキャラクターもじっくり撮る、みたいな。

 そしてクリフ、ロニー、ミンディの3人の警察官の飄々としていてなおかつ無感情・無表情っぽい人物像は、ただ単に田舎町に暮らす人々という設定だけでは語れないものがあるように思えます(笑)。

 

 ちなみにこの3人、ファーストネームはそれぞれロバートソン、ピーターソン、モリソンといいます。田舎はやっぱり同じようなルーツを持つ人ばっかりなのでしょうか。

 さらにダニー・グローヴァー演じる金物屋の紳士的な男・ハンクのファーストネームはトンプソンです。だから何だよw というわけでもないのでしょうが、その辺にも遊び心のようなものを感じます。

 もっと言うとティルダ・スウィントン演じる謎の葬儀屋の名前はゼルダ・ウィンストンといいます。本人の名前をアナグラム的に並べ替えたような役名と、よそ者で謎めいている人物というキャラ設定のバランス感がなんかいいんですよね(笑)。

comment

タイトルとURLをコピーしました