三崎町三丁目通信

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映画『藍色夏恋』──公開から16年、あらためて見て思うこと

投稿日:2018年8月13日

 

 今年の4/28から新宿K's cinemaで開催され、その後同じく東京のユジク阿佐ヶ谷、愛知のシネマスコーレ、大阪のシネ・ヌーヴォ、そして仙台のフォーラム仙台と展開していった「台湾巨匠傑作選2018」。昨年にもこれよりやや小規模な企画で台湾映画の特集があり、そのときは『牯嶺街少年殺人事件』『恐怖分子』『台北ストーリー』の3作を観たのですが(『牯嶺街少年殺人事件』以外は初見)、今回のラインナップに『藍色夏恋』があったので迷わず鑑賞。

 

 台湾の青春映画の中でも名作に数えられる『藍色夏恋』ですが、私も2002年に観たときには、高校生ならではの爽やかさと少し前の日本を追体験するような懐かしさみたいなものを感じたものでした。

 

 この90年代後半に見た『牯嶺街少年殺人事件』が自分の中では絶対に外せない映画の一本になっていたこと、そして90年代にブームとなったウォン・カーウァイの作品が大好きだったこともあって、2000年代初頭は香港や台湾、中国の映画を以前よりも見るようになっていた時期だったんですが、この『藍色夏恋』を見たことで、それまで台湾という国に対して抱いていた好印象がより強まったように記憶しています。

 

今回の「台湾巨匠傑作選2018」の総合パンフと2002年公開時の前売り券

 

 

16年経って2度目の鑑賞

 

 というわけで台湾映画の中でもイチ推しの一本であった『藍色夏恋』なのですが、今回改めて観てみるとストーリーの流れをかなり忘れていたことに気付かされました。。。核となる部分はもちろん覚えているのですが、この子たちの三角関係(?)って最後どんなふうに収まるんだっけ…っていう大事な部分がすっかり抜けていたり…。まぁ逆にそれくらい忘れていたことで、もう一度新鮮な気持ちで鑑賞できたっていうのもあるのですが。

 

 ただし、やはり以前に観たときと違い、今回は主人公のモン・クーロウ(孟克柔)ちゃんの「秘密」を知っているので、最初の場面からずっと「あぁー」とか「そっかぁ~」といったように、彼女の切ない気持ちに寄り添うように見ることになるんですよね。「何にも悪いことしてないのにどうしてこう、人生ってうまくいかないもんなのかねぇ…」と。

 

 あと『藍色夏恋』以降に見た他の台湾の青春映画と比べて、絵的な面で大きく違っていたのは、この『藍色夏恋』はとにかく「南国っぽい」という点。街路樹や差し込む日光の強さに、他の映画にはない「夏の台湾のキラキラ感」を感じます。

 

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2000年代初頭という時代

 

 2002年公開なので、それからもう16年も経っていることに驚くというか、ちょっとショックだったりもするのですが、この2000年代初頭という時代には、今とそんなに変わっていないようにも感じつつ、でも結構年数は経ってるんだよなぁ~っていう近くて遠い、妙な感覚を持っています。いろんな面での“ミレニアム”の大騒ぎを越えた後という時代で、ケータイも普通に持っていればネット環境もそこそこ、今も続いている夏の主要ロックフェスもこの時期に出揃った感じがありましたし、髪型やファッションなんかも流行り廃りはもちろんあるものの、割と今に繋がるものが出来上がっていたなぁというのが2000年代前半の個人的な印象です。

 ですので、モン・クーロウのローライズな着こなしや「O型で蠍座、水泳部でギタークラブ」チャン・シーハオ(張士豪)のダボパンなんかは「そうそう、そういう着方してたよね」って思いながらも、古い映画を見て感じることが多い“ファッションのダサさ”みたいなのはそれほどでもないというか。ただモン・クーロウ役のグイ・ルンメイちゃんの若さと素朴さには「あれ、ここまで幼かったっけ!?」と軽く驚きましたが(笑)。

 

 

 

エンディング曲は懐かしの「Frente!」

 

 

 またエンディング曲もなんか聴き覚えがあるなぁ~と思いながらクレジットを見て「あぁ~」と。そうそう、Frente!(フレンテ!)でした。懐かしいなぁ。ってかそういえばCD持ってたような…と急に思い出して探してみたらやっぱり持ってました(笑)。

 

 このエンディング曲は『Accidentally Kelly Street』というタイトルで、アルバム『オーディナリー・エンジェル』('94)に収録されています。

 

 

 

 

で、フレンテ!といったら上記のアルバムのタイトルでもある『Ordinary Angels』が一番有名だったような。

 

 

 

 エンディングで流れる『Accidentally Kelly Street』は、今聴いてみるとフレンチ・ポップ風でもあり(英語ですが)、のちにブームとなるスウェディッシュ・ポップの流れのようにも聴こえますが(いや…そんなことないかもw)、紅一点のアンジー・ハートを中心としたオーストラリアのバンドです。ちなみにバンド名はスペイン語で、意味は「おでこ」。ふふふ。いかにも不思議ちゃん系の子がつけそうな名前ではないですか(笑)。

 

 アルバム『オーディナリー・エンジェル』はもう買えないかもしれませんが、iTunesストアでベスト盤的なアルバムが販売されており、その中の2014リマスター版を聴くことができます。

 

 CDが国内版だったので歌詞も読んでみたのですが、映画と大きくリンクするような内容ではありませんでした。ですが絶対に若者にしか書けない人生讃歌といったような歌詞と、無条件でウキウキするような軽快なサウンドが、決してハッピーエンドではないけれど、あの二人にはこの先たくさんのキラッキラした素晴らしい未来が待っているんだ──ということを約束してくれているような、前向きな気分にさせてくれる素敵なエンディングにマッチしています。

 

 

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LGBT映画として再評価?

 

 

 当時はただただ「おっと!そうきたか……」という、予想だにしない展開に意表をつかれたものでしたが、いやはや時代は変わるものですね。今だったら「あーはいはい、そっち方面の映画ですか」といった感じで、とくに驚きもしないというか。。

 

 でもこの『藍色夏恋』が公開された2002年はまだ今ほど世の中に認知されていない時代です。(今もまだまだなんでしょうけど)ですのでまさかあの年代を主人公とした映画で、しかもあんなフツーの高校生がフツーに恋愛して友情と恋愛に挟まれて…みたいないい意味でオールドスクールな展開にしか見えなかった雰囲気の中でそれをぶっ込んできましたかー、と驚かされたわけです。

 

 ちなみにロシアのお騒がせデュオ、推定s…じゃなくてジュエm…じゃくて、t.A.T.u.の『All The Things She Said』がヒットするのはここからちょっと後くらいのことで、Mステをドタキャンしたのは2003年のことです(笑)。この曲で二人がキスするところが話題になったりしてましたけど、自分も周りも皆、あんな商売っ気たっぷりなパフォーマンスにいちいち食いつかんでも…という感じで冷ややかに見ていましたね(笑)。

 

 

 

あの二人のその後はきっと…

 

 

 高校生じゃなくても、男の立場からしたらモン・クーロウが打ち明けた“秘密”は、自分を傷つけずに振るためのウソだと誰だって思います。合コンとかで気になった子にLINEか何かの連絡先を聞いて「ごめん、私ケータイ持ってないから」とか言われるよりよっぽど優しい断り方だと思います(笑)。

 

 でもそうじゃなかった。本当にそうだったから、振られたチャン・シーハオにしてみれば「そういう理由ならもうどうしようも出来ない」となるでしょうし、そもそも一番切ない状況にいるのはモン・クーロウなので、彼女にとってはチャン・シーハオに好かれても困るし、親友であり自分が恋している相手でもあるリン・ユエチェン(林月珍)が、本人の望み通りにチャン・シーハオとくっ付いても嫌──という、完全に詰んだ状態になっていて可哀想になってきます。

 

 それでも深刻に同情するようなところまでいかないのは、きっと高校生の彼女にとってこれはまだ本当の愛ではない、というのが見てる側にも分かるからなのだろうと思います。

 

 と、そんな感じで成就することのなかった二人の恋ですが、それでも二人にとっては、とりわけモン・クーロウにとってはかけがえのない経験となった夏だったことと思います。

 

 たとえ恋敵?であったとしても、誰かに「好きだ」と言ってもらえるのは本当に嬉しいことですし、勇気をもらうことでもあります。そして誰にも言えなかった秘密を打ち明けた相手として、チャン・シーハオのことは特別な人となったはず。もちろんチャン・シーハオにとっても、そんな理由であれば仕方ない──と受け入れた上で、それでも「いつか男を好きになる日がきたら、まず自分に連絡をくれ」と伝えることで彼女の背中を少しだけ押してあげつつ、自分もちょっぴり成長した夏となったのではないのかなぁと。

 

 これは男目線での解釈ですが、チャン・シーハオはきっと「彼女が自分を恋愛の対象として好きになることはない──」と心の中では悟っているはずだと思うんですよね。でもこれから先、彼女がもし傷付くことがあったときに心の拠り所になる誰か(自分)が必ずいるんだから心配するな、というような意味合いもそこにあったんじゃないかなと個人的に思いました。

 

 

 あと、これは2002年に見たときにも感じたことですが、今回改めて見てやっぱり思ったのは、

 

 

この二人はこの先、きっと「お互いの人生にとって、とても大切な、いい友達になる」

 

 

 

 ということ。おそらく多くの方がそう思いましたよね。そう思うからこその、あのちょっとほろ苦くも爽やかで前向きな気分になれるエンディングだったのではないでしょうか。

 

 

 

幻のムック『NEUTRAL』の記事より

 

『NEUTRAL』No.2 2004年11月刊

 

 毎回ひとつの国や地域を取り上げ、奇麗な写真と独自の取材記事、そしてそこの歴史を面白く読ませる図解入りのデータページなどが特徴の講談社ムック『TRANSIT』には、前身となった『NEUTRAL』(白夜書房)というムックがありました。私も出版業界で長く仕事をしていることもあり、両社様ともお仕事をさせていただいたことがあり…というか(以下省略)

 

 で、その『NEUTRAL』の2004年に出た第2号「特集 美女のルーツ」で、台湾の美女としてモン・クーロウ役のグイ・ルンメイちゃんが紹介されていました。掲載当時大学生で、フランス語を専攻する典型的なインテリ女性の“台湾版ヒロスエ”と書かれています。時代を感じます(笑)。なお、もう一人紹介されていたんですが、そちらはジェイソン・ステイサムの『トランスポーター』でヒロインを演じたスー・チーさんでした。

 

『NEUTRAL』No.2の誌面より

 

 最後に余談ですが、チャン・シーハオが“秘密”として認めてもらえたアレ……

 

 実は私にも同じ秘密が(笑)。

 

 

 チャン・シーハオくんへ。それ、たぶん治らないけど確率的には1/10か2/10くらいまでには下がるから気にしなくていいよ(笑)

 

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三崎町三丁目通信主筆・K

三崎町三丁目通信の主筆(個人運営ですが)をしておりますKです。映画の感想を中心に、趣味で続けているスペイン語学習(DELE A2取得で止まっています)と最近始めた英語学習のことなどを書いています。本業はフリーランスのグラフィック&エディトリアルデザイナー。びっくりするくらい将棋が弱いです。

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