細かい設定の数々
細かいところにもこだわりがあるエドガー・ライトの作品ということで、街を歩いている住民(老カップルやベビーカーの女性のようにすれ違うだけのモブも含む)が同じ動きで複数回登場したり、「空っぽ」集団が迫ってくる絵面とか目と口が光るところであったり、マジギレしてからのアンディの大立ち回り、そしてエピローグの雰囲気など「あれ、なんかどっかで見たようなw」的な演出がいちいち効いていて面白い今作。
そういった枝葉的な箇所のみならず、そもそもの本筋部分となる12のパブの名前とそこで起きる出来事がリンクしていたり、ゲイリーたちの名前からしてちゃんと意味付けがされていたりして、そこが分かるとより楽しめるものとなっています。
ってかアンディの場面についてはどれも本当に面白いんですよね(笑)。
両手に椅子を持ってブチ切れるアンディがやたらと軽快な動きで「空っぽ」たちをボコっていくところや、11番目の「壁の穴」で裏口の割れたガラス部分から逃げ出すときの身軽なデブ感、そしてオリーが「空っぽ」になったと気付くシーンでのイラついてる顔のアップが続くところとかマジで大好きなんですけどw
両手に持った椅子をバコーン!とぶつけて椅子の足を壊して武器にするところ、あれ絶対何かの映画で似たような気がするんですけど出てこない……『エイリアン』シリーズだったかジャッキー映画だったか『パシフィック・リム』だったか(ってこれは同年公開の映画なので関係ないかw)、はたまた別の映画か………何だったけなぁ~。。
ちょうど今CSで放送している『インクレディブル・ハルク』で同じような場面がありましたが、この映画はあまり好きではないので自分が見たのたぶん別の映画です(笑)。
あとエピローグで若者たちに、あの日の後に世界で起こったことなどを語る場面もなにかの映画みたいだったし(個人的には『マッドマックス2』のナレーションが思い浮かびました)、なんかやたらとアンディがカッコよくなっちゃってるところなんかも笑えます。
名前の意味
では5人それぞれの名前と学生時代の設定をみていきましょう。
ゲイリー・キング(サイモン・ペグ)
通称「キング」…ってか苗字がキングなだけw
アンドリュー・ナイトリー(ニック・フロスト)
ゲイリーの相棒
スティーブン・プリンス(パディ・コンシダイン)
モテ男
ピーター・ペイジ(エディ・マーサン)
家が金持ち
オリヴァー・チェンバレン(マーティン・フリーマン)
額に数字の「6」形のアザがあるためにあだ名が「オーマン」
…お気付きになりましたでしょうか。それぞれの苗字の繋がりを。
・ナイトリー=ナイト/騎士
・プリンス=王子
・ペイジ=騎士見習い
・チェンバレン=侍従
5人それぞれがそういうチームだったのですね。そしてさらにピアース・ブロスナン扮する恩師ガイ・シェパードも
という名前の通り、物語の中でも指導者でありエイリアンに協力することを説く立場となっていました。
パブの名前とそこで起きること
ゲイリーたちが順番に訪れる12のパブの名前が、そこで起こる出来事にリンクしているのも面白いところです。
それぞれのパブへ入るときにしっかり店の看板が店名のテロップ付きで映されるところからも、そこにちゃんと意味があってのものであることが分かります。
ということでそれぞれみていきましょう。
「出発点」
ここから「ゴールデン・マイル」への再挑戦が始まる。その宣言ともいうべき場所
「昔なじみ」
オリーの妹サムが登場。ゲイリーとスティーブはかつての恋敵
※1~2軒目では店に入ってからの店内を見回すショット、カウンターやテーブル席にいる人の位置・動きが同じ
「名のある雄鶏」
変わり者の老人・バジルがいるのを見つけて声をかけるが、彼は少し迷惑そうな様子
※3軒目はゲイリーが出入り禁止のため飲めず。ただしゲイリーは店の外のテーブルに置いてあった客の飲み残しのビール(ジョッキ3つ)を飲んだことでここでのミッションは完了とみなされる
「クロスハンズ(組手屋)」
ゲイリーの母が死んだというのが嘘だと分かり、ゲイリーに怒って問いつめる4人だが、昼間にすれ違ったときに手で挨拶したゲイリーを無視した若者5人とトイレで乱闘。何やら大変なことになっていることに気付く。またアンディがここでついに酒を飲む
「良き仲間」
街中の人々の様子がおかしい。パブの客も同様で、ゲイリーたちはカウンターでビールをあおってさっさと店を出る。一応ここで5人は団結して(怪しまれないように)ゴールデン・マイルを目指し次へと向かう
「忠実な召使い」
カウンターでひとりで飲んでいたトレバーに探りを入れる(ついでにハッパを買う)目的でゲイリーが話しかける。トレバーはサラッとした情報を与えるも横の客に「喋り過ぎだ」と咎められ、その後店にかかってきた「監督」からの電話でどこかへ呼び出されることに。またゲイリーがカウンターに行く前にトイレに行っていたオリーがテンション高めになって戻ってくる
「両頭の犬」
サムと再び合流。ゲイリーはトイレに連れ込んで街の人間がロボット化していることを話すも、それを信じないサムは同じタイミングで店に入ってきた双子の女と外のテーブルで飲むことに。そこにゲイリーが突入し、スティーブも交えて双子との乱闘に。
「マーメイド」
“スクール・ディスコ”イベントで大盛り上がりの店内に、かつての同級生、二人のブロンドとその間の赤毛という組み合わせの“マーマレード・サンドウィッチ”が当時の姿で現れる。スティーブはバジルに店の外へ連れ出され、この街に起こったことの真実を聞かされる。また「マーメイド」を出て次のパブへ行く途中の会話でピートが「野原で死ぬのはイヤだ」と言う
「蜂の巣」
店では学生時代の先生ガイ・シェパードがゲイリーたちを待っていた。どこかへ誘い込もうとするシェパードと、それに賛同し皆を誘うオリー。オリーの額に手術で消した「6」の形のアザが復活しているのに気付いたアンディが、オリーの頭めがけて椅子を叩き付けると、彼は中身のないスカスカなロボットになっていた。シェパードと他の客が本性を現し、ゲイリーたちににじり寄ると、怒りがMAXに達したアンディが大暴れし、これまでにない大勢の「空っぽ」との大乱闘となる。その後二手に別れ、ゲイリーはサムを車で逃がしたあとアンディたちと合流する。
※ちなみにですが、蜂の巣の穴は6角形のハニカム構造となっています
「王の頭」
店の裏側に停めてある車で逃げようとするアンディとスティーブだが、ゲイリーは鍵を渡しひとりで次の店へ向かう。放っておいて逃げようというスティーブにアンディは「そんなことはできない」とゲイリーを追って走り出す。
「壁の穴」
アンディの助けによってビールを飲み干すことに成功するゲイリー。そこへスティーブが車で突っ込んできて二人を乗せて逃げようとする。しかしゲイリーは最後のパブへと走り去り、スティーブは街の連中とクレーンに車ごと引きずられていく。アンディも間一髪でドアの割れたガラス部分から脱出し、ゲイリーの後を追う。その途中で待ち構えていた“マーマレード・サンドウィッチ”の赤毛に「私の中に入って」と誘惑されたアンディは、彼女の腹に手を突っ込んで「マーメイド」で抜き取られた結婚指輪を取り返す
「世界の終わり」
最後の一杯をアンディに邪魔されて殴り合いとなり、そのなかでお互いに現在が幸せな人生ではないことを知る。するとどこからか声が聞こえ店の中心部が沈み込むと、円形の裁判所のような場所に着き、シェパードやオリー、ピートをはじめとする「空っぽ」たちとエイリアン「ネットワーク」に、自分たちに協力するよう要求される
と、こんな感じでエイリアンと対峙することになるゲイリーたちですが、どうしようもない酔っぱらいのゲイリーに今まで進めてきた手法が全く受け入れられず、さらに何を言ってもボロクソに言い返されるうちに「文明が高度に発達した知的生命体」であるはずの彼らが、ゲイリーの言葉ですっかり頭に血が昇ってキレてしまうというありえない展開に(笑)。
そんな簡単にカッとなってどうすんだよw
そして半ば投げやりにゲイリーに問う「じゃあ何が望みなんだ?」という言葉と、それに対するゲイリーの答えは、最初のほうでも触れたプライマル・スクリームの『Loaded』のオープニングでサンプリングされている映画『ワイルド・エンジェル』の台詞そのものでした。一番大事なところでこれを使うという絶妙さ加減。素晴らしいです。
俺たちは自由が欲しい
やりたいことをやれる自由を
酔っぱらって楽しみたい
それが俺たちの望みさ
最後の大真面目な問いに対してもこのような台詞を吐かれ、つくづく愛想を尽かした(笑)「ネットワーク」は高度な生命体とは思えない捨て台詞を残して消えていくのでしたww んなアホなw
その他
ゲイリーとスティーブが想いをよせるサムを演じているのはロザムンド・パイクですが、彼女が出演した『007 ダイ・アナザー・デイ』でジェームズ・ボンドを演じていたのがガイ・シェパード役のピアース・ブロスナン。
そしてまだ見ていませんが『ホット・ファズ~』のほうにはティモシー・ダルトンが出ていたりするようですね。
他にも「コルネット3部作」に複数出演している面々なんかも見てみると面白いので、気になる方はWikipediaの「スリー・フレーバー・コルネット3部作」をご覧ください。
またサントラのほうも当時のUKものがお好きな方々でしたら(時代的にはマッドチェスター〜ブリットポップあたり?)懐かしい名前が並んでいて、合わせて楽しめるかと思います。
ブラーやスエード、パルプといったバンドのほか、ストーン・ローゼスやプライマル・スクリーム、ティーンエイジ・ファンクラブなども収録されています。この短い説明で2つのグループに分けたニュアンスはもちろん分かる人には分かるのではないかと(笑)。別にどっちが好きでどっちが嫌いということでもないんですけどね。
ちなみにこちらはロザムンド・パイクさんが出演しているマッシヴ・アタックのMV。鬼気迫る一人芝居はさすがといったところです。こういうのって撮影時は何もないのに、目の前に「それ」が存在するものとして演じるわけだからきっと相当な演技力がいるのでしょうね。
動画のコメントにもありましたが、このシチュエーションというか設定みたいなものはイザベル・アジャーニ主演の1981年の映画『ポゼッション』からインスパイアされたものみたいですね。その場面の動画も探すとすぐに出てきますが、あまり脱線しすぎても何なのでここには貼りません。
っていうか何も期待しないで見てたら美脚をいっぱい拝めてなんか得した気分(笑)。
さて、そんな感じで大変素晴らしいコメディ映画であったこの『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! 』ですが、今回また改めて見てみたら以前には気付かなかった大事な点があることがわかりました。
といっても少しオカルトや陰謀論・都市伝説系の話になるかもしれませんので、その手の話題に興味がない方はここで終わりにしていただければと思います(笑)。続けて読まれる方はこの下のほうにある「次のページへ」からお進みください。
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