強烈なバッドエンド作品
さて、この秋で公開から20年が経ち、99年に公開された後も何度も何度も見た今作ですが、いま改めて見直してみてもどうしようもないくらいに救いがないバッドエンドなストーリーで、最後まで見ると気持ちが重くなってぐったりしてしまいます。
ですが、たとえどこにも救いがなく、血の川の濁流に飲まれるが如くその身を落としてゆくことになっても、運命の存在と出会い、人生の限られた時間をともに生きたピエールとイザベルの物語は、当時まだ20代後半と若かった自分にとっては大きな衝撃を与えるものでした。
しばらくは映画が頭から全く離れず、熱にうなされたように関連書籍を読みまくり、原作も仕事をしている時間以外ほぼぶっ続けで読み、映画も結局3回観に行くという入れ込みよう(笑)。
ここで恥ずかしいのを覚悟で白状すれば、当時の自分はこの『ポーラX』のイザベルに心を奪われたのでした。
思い返すとマンガやアニメ、映画などのキャラクターに恋をしてしまう(と言ってもガチなのはせいぜい中学1~2年まで)場合、その対象の特徴はだいたいこれらの要素のどれかに当てはまっていました。
- 突然どこかから現れる(転校生、別世界からやってきた、など)
- 普通の人間ではない(別次元の人、機械、人間以外の存在、など)
- ずっとここには居られない人
- 訳あり風で憂いがある
- 細身である
- いじらしいことを言う
では今作のイザベルとはどのような人物像だったのかというと…
- ピエールの前に突然現れた謎の黒髪の女性
- ホームレスのような身なり(東欧からの戦争難民)
- 強制送還される対象ではないようだが、ここで生きていくのは困難と思われる身分
- 生い立ちの不幸さに加え、内戦ですべてを失った女性
- 細身で儚げである
- いじらしいことを言う
なるほど……そら好きになるわ(笑)。
このイザベルの幸薄さと健気さ、そして魔力がかったような女性としての美しさ、ピエールに「自分がこの(姉かもしれない)女を守らねば!」と思わせる殊勝さ、いじらしさは小説のほうがはるかに勝っているのですが、それでも『ポーラX』のイザベルも厨二病の男の心を鷲掴みにする魅力を十分に持ち合わせていたのでした(笑)。
さて、上に挙げた項目の最後にある「いじらしいことを言う」ですが、闇夜の森でのイザベルの独白の最後、彼女が何と言ったか覚えていますでしょうか。
最後に振り返り、後ろを歩いているピエールに向かって泣きながら放った言葉とは、こうでした。
お願い…
お願い……
赦して
あまりに悲しいその生い立ち、そして戦火を逃れ大変な苦労をしてようやく安全なフランスまでやってきた難民なのに、その自分の父親の国であるフランス(最後まで確証はないが)で非常に厳しい生活を強いられているイザベル。彼女自身は何一つ悪いことはしていないのに。
その状況を鑑みれば母違いの弟(かもしれないとされる男)には、もしかしたらもっと別の言葉が出ても不思議ではないのかもしれません。
それは例えば「助けて」かもしれないし、「信じて」なのかもしれません。(「信じてほしい」という願いは後に語られます)
ですがこのときイザベルが泣きながら口にした言葉は「赦して」だったのです。
…念のため書いておきますが、私は今まで「ヤバそうな女につかまってエラい目に遭った」というような経験はとくにしていませんのであしからず(笑)。ちなみに3回目の劇場鑑賞時は当時の彼女と一緒でしたがもちろんちゃんとした人でした。こういうのに弱いわりには地雷は踏まないタイプなのかもw
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