映画『記憶探偵と鍵のかかった少女』──結末を知ってから気付く様々なこと【検証】

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あらすじ

 人の記憶の中に入ることが出来る特殊能力を持つ人間が、対象者に起きた出来事から事件を捜査する「記憶捜査」と呼ばれる仕事を請け負っているマインドスケープ社。

 そこで「記憶探偵」として働いていたジョンは、2年前に妻が自殺したことによるショックが仕事に影響するようになり、しばらく休養していた。

 妻と暮らしていた海辺の家を売らずにいたこともあって金欠となったジョンは、上司のセバスチャンに掛け合いアナという絶食中の少女に食事を摂らせるという「簡単な」仕事を請け負う。

 資産家の娘であるアナは非常に頭がよく、特別な才能を持った少女だった。母と継父のほか、メイドや看護師などがいる邸宅で24時間モニターで監視されている生活を送るアナの記憶に入ったジョンは、彼女の過去に幾つかの事件が絡んでいることを知り、アナを助けようと考えるようになる──

© 2014 – Vertical Entertainment
人の記憶の世界に入る、というと『ミッション:8ミニッツ』のほか『インセプション』などにも近いものが

感想

 最初に見たときはとにかく「やたら頭の切れる美少女ってマジで怖ぇな………」と思いました。。

 でも最後はアナの良心なのか何なのか意図は不明ながらも、とにかくジョンはシャバに出られて、ジュディスという寄り添う相手も居て──というエンディングとなっていたことは救いでした。オルテガは……可哀想だけど自業自得な部分もあったのでしょうね。

 結局アナは、人とは違う才能・能力を持っているために施設へ入れられそうになったため、自由になりたくてこの計画を企てたのでしょうけど、そのために行なったことというのが実に準備周到で、かつえげつなくて怖い。

 また過去にアナの身に起きた出来事と、寄宿学校時代に起きた殺人未遂事件の真相はどういうことだったのか、これも結局判らずじまいでした。

 スーザンの証言からしてアナの犯行であることは間違いないのでしょうけど、できればその真相についても触れてほしかったですね。

 

 あとは薔薇の花や絨毯、絵画、血、海辺の家などなど、全体的に「赤」が印象的に使われている映画でしたが、それと同時にアナの姿が絵画的に描かれているのも印象的でした。

 ときにはモナ・リザのように見えなくもなかったり、最初にジョンが訪れたときの、机に向かっていたアナの姿(とくに振り返ったときなど)やオルテガに撮られた写真などがフェルメールの絵のような構図だったり光の当たり方をしているように感じたりもしました。

 そしてこれは余談ですが、アナのファイルに入っていた動画で、床に飛び散った血のことを

 

「ジャクソン・ポロックの絵みたい」

 

 と言っているのも気になりました。こういう子が言うとポロックの絵の印象がガラッと変わって怖いっす……

検証ポイント

 さて、結末を知ってから改めて映画を見直していくと、至る場所に様々なヒントが散りばめられていたことに気付きます。

ジョンの記憶の中だったという事実

 私たちがこの映画で見ることになる、ジョンがアナと関わってからの出来事は全て

 

ランドグレンによる、ジョンの記憶を辿る捜査

 

 であったことが最後に判明しました。

 それを証明するような場面が幾つも登場するのですが、

 

「偽の記憶の中では、繕った感が出る」

 

 という、ジョンのアナに対する説明によれば、窓の外の風景が抜けていたり時計の針が止まっていたりする──とのことでした。

 ジョンの記憶が偽のもの、というわけではないのでしょうが、少なくとも「これは現実ではなく記憶の中」というのが分かる点として、

 

・ジョンの車にナンバープレートがついていない

・アナの部屋の本棚にある本が全て同じ色・質感で、タイトルなどの文字が一切ない

・ジョンが自分の部屋でアナのことを調べているときの時計の針の動きが遅すぎる

 

 といったものが挙げられます。さらに、

 

・2回目の記憶捜査をした日に、アナの部屋で「ジュディスを送った直後にアナの姿を見た場所」のスケッチを見つける。そのスケッチにはジョンが見たアナの人影らしきものも描かれているのだが、実際には葉が生い茂った植え込みの樹木だったものが花をたくさんつけた薔薇の木になっている

 

 といった場面もありました。

 さらにジョンが何度も目撃する謎の男が、記憶探偵としてジョンの記憶に入っているランドグレンだったという事実が、これまで見てきたものがジョンの記憶の世界だったという証明となっていたわけですが、これは最後の取り調べのシーンだけがジョンの記憶の世界ではない、ということが以下のことから判ります。

 ランドグレンが出現した場面は次の通り。

・最初にジョンがアナと会ったあと、上司のセバスチャンと川沿いの遊歩道を歩くシーンで、ふたりの進行方向の先に立っている

・スーザン・メリックに会いにいったとき、厩舎の先に立っている

・夜に自宅で人の気配を感じ、アナの邸宅へ確認しに忍び込んだときに遠くで見ている

・ジョンが逮捕された晩、邸宅に入ってアナを探すジョンの背後に立っている(監視モニターにも映っている)

・取り調べ中に現れる(ここでセッション終了)

アナの恐ろしさ

 腕利きの記憶探偵であるジョンを完全に罠にはめた16歳のアナ。

 恐ろしいまでの知能に加え、記憶の世界というジョンがコントロールする空間でさえも自分が主導権を握れるようにしてしまう能力を持つ、非常に恐ろしい少女でしたが、最初にジョンと会ったその日からすでにアナは「仕掛けていた」ことが分かります。

 

 「記憶捜査」のセッションに入る際、自身が普段から集中するときに使用していたメトロノームを鳴らしていましたが、これはアナが記憶探偵がコントロールするセッションの中でも、主導権を自分が握れるようにしていたものと思われます。

 メトロノームの音が聞こえ続ける状態でいることで、アナは自身の自我意識を維持したまま記憶の世界に入っていくことが出来たのでしょう。そうすることで自身の記憶を都合のいいように置き換えていった、と考えられます。

 もちろんこれは普通の人間には到底出来ることではなく、IQが子どものころからずば抜けて高く「ギフテッド(能力者)」であるアナだからこそ出来たことなのでしょう。

※アナが「ギフテッド」であるという説明は、ジョンが母親と最初に話した場面で語られています

 

 また、記憶の世界に入っていないときでもアナはジョンに対して「仕掛けて」います。

 

 最初にジョンが部屋にやってきたときのアナは、カーディガンにパジャマのようなものを着ており、露出がほとんどない格好でしたが、2回目の訪問時からは髪をアップにしたり、ショートパンツやキャミソール姿で肌の露出が多い格好をするようになり、ときにはスケスケのショートパンツを履いていることも。

© 2014 – Vertical Entertainment
こんな子が「あなただけが頼りなの」とハグしてきますw

 

 またジョンに対して好意や感謝の念を抱いていること、ジョン「だけを」頼りにしているということを度々伝えたり、自分からハグするなど、ジョンにつけ込む隙を少しずつ作っていきました。

 これは明らかに、腕利きの記憶探偵である「能力者」のジョンを罠にはめるため、ファーストコンタクトの時点から計画してアナが行なった「一連の仕掛け」であったものとみてよいでしょう。

 もっと言えば、最初の記憶操作のあと、ジョンの妻の写真を見るためにサンドウィッチを食べるという交換条件を呑んだことも、彼に

 

「自分は問題なくアナをコントロールできている」

 

 と思わせるための計算づくな行動であったのでしょう。本当はすでに操られつつあったというのに…

 

怖ぇ…

 

 さらに、記憶の中の世界でアナは本来その存在に気付かないはずのジョンに視線を向ける場面が2度ありました。

 

①寄宿学校の廊下で先生にお酒が盗まれたことについて問われ「お酒は悪魔の名刺です」と答えたとき

②写真の現像をしている教室で、トレーの水を捨てたあと

 

 これはアナが、今自分がいるのは記憶の世界であるということを認識していて、その場をコントロール出来ている──ということの証明であると思われます。

 

 

 ところで、ジョンが釈放された理由について疑問に思う方はおそらくいないとは思いますが、念のため説明すると

 

セッション後のランドグレンの言葉

「彼女が生きていることが証明されれば、無実であることの証明ができるかも」

 

→アナから「Thank you」と書かれた、彼女が新聞を持った写真が届く

→新聞を持っていることによって現在の写真であることの証明となり、アナが生きていることが立証される

ジョンは殺人犯ではなくなり、記憶捜査の証拠もあり保釈が認められる

 

 という経緯があってのことと思われます。

 

 っていうかそもそもの話…

 

なんで学校のアルバムとかもっとちゃんと見ておかなかったんだよw

 

とツッコミを入れたくもなるんですが。

 マウシーが誰なのかとか、アルバム見たらすぐ分かるじゃん! っていう(笑)。

 

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