映画『若葉のころ』(ネタバレ)──30年後にようやく受け取ったものとは

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 現代のリン・クーミン役のリッチー・レン氏は、おそらく撮影当時の年齢が今の私と同じくらいなので(んなこと誰も知らないって)、まぁ年相応の見た目かなという感じで、超個人的な同性の目線からの感想は「悪くはないけどとくにハンサムでもない」という印象なのですが、82年版リン・クーミンがめちゃめちゃイケメンなのでちょっとアレ?っていう…。現代のイエ(バイのことが好きな男友達)も悪くないんですが、男女ともに82年のほうが美しいという結果に(※個人の感想です)。

 それに対して現代のワン・レイ役のアリッサ・チアは、2003年に英国の男性雑誌「FHN」にて「アジアで最もセクシーな女優」に選ばれたというのも納得の美しさです。

 そして映画を見ていて「おや?」と気になったのが、バイの親友ウエンを演じたタレ目が特徴的なシャオ・ユーウェイ。もしかして…と思って調べてみたらやっぱり。ちょうど今「ホームドラマch」で放送されている台湾ドラマ『華麗なるスパイス』の主演女優ではないですか。今作ではおじゃま虫的な役どころでしたが人気のある女優さんだったんですね。

 というか今作での役柄も、主人公バイの立場から見れば“親友を裏切った子”という扱いなのかもしれませんが、彼女にしてみれば親友と同じ男の子を好きになってしまっただけであり、それについて協定を結んだわけでもなければ、そもそも「裏切った」わけでもありません。さらに言えば父親が浮気をしていることを知って、バイとはまた違う理由で心を痛めている一人の17歳の高校生、というだけなんですよね。まぁそこが理解されず関係が複雑になってしまうところが若さというものなのでしょうけれど。

 

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82年の台湾・台北

 

 17歳のリン・クーミンとワン・レイが生きた82年という時代、台湾ではまだ戒厳令が解かれていない頃ではありますが(解除されたのは87年)、ほぼ同じ時期の80年代前半~半ば頃が舞台となっているエドワード・ヤン監督『台北ストーリー』『恐怖分子』での台湾・台北の様子からしても、日本の80年代前半とそう大きくは変わらない社会・生活様式のように見受けられます。

 もちろん、生徒は軍服のような制服を着ていますし(女子が軍服風の制服のときと白ワイシャツ&黒or紺スカートの制服を着分けるのはどういう理由?という疑問が…)、表彰の際には敬礼をすることや、退学した後の身の振り方として兵役という選択肢があることなど、大きく違う部分もありますが。生徒が持ってきた弁当箱をぬくぬくに保管しておく「弁当保管室」なる場所があるのが斬新だなぁと思ったんですが、日本でも同じシステムを持った学校はあったんでしょうかね。

 

 また、映画でよく見る台湾の学校は(昭和世代の)日本人である自分が見ると、造りに特徴があるように感じます。

 先にも書いた『藍色夏恋』『あの頃、君を追いかけた』以外だと、例えば『牯嶺街少年殺人事件』の舞台となっている学校も、同じように中庭とかコートを囲むような造りで、そして通路のごつい柱なんかが日本の公立校の校舎とは違っていて趣があります。『牯嶺街~』は60年代の物語ですが、台湾の歴史を考えると、同じ時期に同じような造りの建築物がたくさん建てられたのだろうなということが予想されます。

 

映画『牯嶺街少年殺人事件』1992/1998/2017 〜過去の雑誌とチラシ、パンフレットより〜【本棚通信④】
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 ちなみに今作での学園祭のシーン(2013年)で、ステージの後ろに「開校50周年」的なことが書いてあったのでやはりここも60年代に出来た学校のようです。まぁそんなこと知ってどうすんだよって話ですが(笑)

 

 

時が経つのは早すぎる!

 

 これは卒業アルバムにワン・レイが書いていた言葉です。

 こういう言葉…卒アルや文集にさらっと書かれがちなセリフですが(笑)、その言葉の本当の重みを知るのはずいぶん年を取って「あぁ、もうあの頃には戻れないんだな、もうあんなに遠くなってしまったんだな」ということを痛切に感じたときなんですよねぇ…。

 

 青春時代に初めて心を通わせた相手が、30年経ってふたたび自分の人生に重なってくる──なんてことは現実ではまず起こらないことだけに(同窓会などでの一時のファンタジーはあるかもしれない 笑)、おじさん・おばさんになった現代のリン・クーミンとワン・レイに、ついつい自分の人生を重ね合わせて何とか幸せになってもらいたいと思うのかもしれません。

 

 

 “記憶の中の君はいつも17歳のまま”で、そして“決して振り向かない”

 

 そしてこれはワン・レイからのメールに返信したリン・クーミンの言葉です。

 

 

「決して振り向かない」

 

 

 自転車で追いかけたときも、バスで後ろに座っているときも、家の前までついてきて手紙を渡したときも、ワン・レイは少し後ろを気にするだけで決して振り向きません。だから彼にはそのとき彼女がどんな表情をしていたのかが分からなかったのです。

 

 そして机の中に入っていたレコードも、自分が渡したものを突っ返されたと思っていたため、それがワン・レイからのお返しだったことにも気付きませんでした。

 

 ようやく彼の想いが受け入れられ、成就したそのときも本来であれば夢心地で人生の最高潮の中にいるはずだったのに、彼らの純愛とは真逆にいるような大人たちの行為を目撃してしまったことによって、たった一度だけの儚い幸せな瞬間となってしまったのでした。

 

ですがこの経験を経てすれ違い、別の人生を歩むことになった彼が30年後、自分と同じように傷付いた少女──彼女の一人娘であるバイの心の扉を開くことになるという……

 

 

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