レビュー①のほうがだいぶ長くなってしまったので(あれでもかなり削ったのですが…)映画の内容と直接関係のない話題はこのレビュー②のほうにまとめました。
内容についての話題、とくにラストの解釈が気になる方はレビュー①のほうをどうぞ。
最初にこの『プラットフォーム』を見たときは、ストーリーとは直接関係ない2つの点にかなり意識がいってしまい、レビュー①で書いたような考察ができるほど頭が回りませんでした。。とくに後半で触れる2つ目の要素が気になってしまったんですよね。。。
というわけで気になった点の一つ目から。
それは今作に登場する人物の中で最も謎なキャラクターであり、最後までその行動の目的や理由が解らなかった「ミハル」という日本人の名前を持つ「アジア人」女性の存在です。
常に身の危険が伴うリスクに晒され、料理が乗った台座に乗って下へと降りていくミハルは、ぐちゃぐちゃになった料理や人の血などでいつも汚れていて髪もボサボサ。目つきは獣のように鋭く、さらに顔の右側にはブラックジャックのような傷跡もあって、
何を考えているのか全くわからない……
もしこちらが何かひとつでも選択を誤ったら殺られる……
そんな怖い印象を与えるキャラクターでした。
いつも汚れていてちゃんと顔が見える場面も限られているし、登場シーンの多くは物騒な状況ばかりのミハルですが、それでもセンサー(何のだよw)が働く人なら気付いたはず──
彼女が美人であることを。
というわけで早速調べました(笑)。
ミハルという日本人女性の名前を与えられてはいますが(ただし由来は女性名の「ミハル」ではありません。各キャラの名前の由来はレビュー①のほうに書いています)どう見ても日本人顔とは違う目鼻立ちのくっきりした顔をしており、アジアはアジアでも東南アジア系の顔立ちをされているようにも見えます。
ちょっとだけ話が逸れますが、YouTubeで「アジア人の特徴的な目について」を解説している白人(個人ではなかったと記憶しています)が作った動画をいくつか見たことがあります。動画自体は解説系の内容でとくに差別的な意味合いはなかったのですが、コメント欄はまぁ様々といった感じでした。
その中でかなり多かったコメントが、フィリピンとかタイとかマレーシアとか、そういった東南アジアの方々による
「それは東アジア人の特徴であって私たちは違うんだけど」
というものでした。まぁそうですよねっていう(笑)。
それでこのミハル役の方も、きっとアジアにルーツはあるんだろうけど普通にスペイン人で、せいぜい両親や祖父母の中の誰かが東南アジアの人だったのかなというふうに思っていたのですが、フィリピン系スペイン人とのことでした。歴史的に見てもフィリピンは昔スペインが統治していましたし、言語の中にもスペイン語が取り込まれて残っていたりもするので両国の間にはそういう結び付きがあるのですね。
バルセロナ生まれで国籍もスペインなので当然スペイン語が母国語なんですが、インタビュー動画のコメントを見ると「スペイン語がうまいね」みたいなアホな書き込みが多く、そこから「いやスペイン人なんだが」「でもフィリピン系なんだろ?」「ルーツはどこでも生まれ育ちがスペインのスペイン人なんだが」「それは単に国籍がスペインってだけだろ」みたいな噛み合ないやり取りが続いていて、あぁ…こういうバカは日本も含めて世界中にいるんだろうな~と、うんざりさせられたのでした。
きっとこういったことを常日頃から言われてきたのでしょうね。
彼女の名前はアレクサンドラ・マサンカイといい、スペインの有名なタレントオーディション番組『オペラシオン・トゥルインフォ』(Operación Truinfo:通称OT)の2011年大会で4位になったそうです。
3時間弱くらいある↑の動画に当時のアレクサンドラさんが出てきますが、長くて画質も良くないこの動画をわざわざチェックする方もほとんどいないとは思いますが一応貼っておきます(笑)。
たまたま私はスペイン語をゆるく長く勉強していたためこのOTは以前から知っていましたが、こういうところで昔チェックしていたものと繋がってくるとなかなか面白いものがあります。他にもスペインのオーディション番組やものまねグランプリ系の番組には「おっとこの人がこんなところにw」みたいなことがあったりするので油断できません。ま、そんな話題は誰とも共有できなくてひとりでニヤつくだけなんですが(笑)。
そんなアレクサンドラ・マサンカイさんは女優のほか歌手やダンサーとしても活躍されているようで、YouTubeで検索してみると結構出てきます。上のOTの映像の他、自身のYouTubeチャンネルもあるようで、かなり若い頃(といってもまだ20代なので今でも十分若いですが)の映像や『プラットフォーム』より前に出演した映画のものまで、色々見つけることができます。昔と今とであまり変わっておらず(というか全然変わらない)、昔から美人であったことがわかります。
こちらは今作でのミハル役についてのリモートによるインタビュー動画です。(昨年の5月ということで、ちょうどスペインが厳しいロックダウンをしていた時期のため、そういう話題から始まっています)
こちらもほぼ同時期のリモートによるインタビュー。カメラのアングルがかなり下からのものになっていて、こういう画角だと人によってはブサイクに見える場合もありそうですが普通にかわいいです。
そしてこちらは以前に出演した映画『1898, Our Last Men in the Philippines』(原題:『1898, Los últimos de Filipinas』)の時期のインタビュー動画。上の動画からは4年くらい前のものになりますが全然変わってないですね。
その映画のプレミア上映時のレッドカーペットでのインタビュー動画がこちら。彼女の登場は5分41秒あたりからになります。ちなみにサムネもアレクサンドラさんです。
さらにこちらはおそらくご本人のチャンネルによる最初の動画と思われます。9年前のものですが、コメント欄には『プラットフォーム』を見た連中がいろいろ書き込みにきて、本人の歌そっちのけで映画の考察なんかを語ってたりするんですが(笑)、めちゃ核心をついている人もいて意外と侮れませんw
っていうか冒頭のその表情はなんなんだよ…やめてよそういうの………
赤の他人のおっさん(自分)が何かの間違いでどっかの女の子のプライベート映像でも見てしまったような雰囲気になって気まずくなるんだが……(笑)
……さすがに貼りつかれました(笑)。っつかこのページだけ重くて表示されるの遅そう。。
さて、そんな彼女ですが、映画の中では「アジア人」ということがやや強調された役(名前も日本人風)となっており、愛犬を殺された恨みと悲しみが込められているとはいえ、イモギリに
「細い目でウクレレを弾くイカれたアジア人」
といったような差別的発言をされてしまっています。
つーか単純に目の大きさでいえばミハルのほうがイモギリよりも大きいと思うんですが、あちらの人たちはそういう意味で言っているのではないんでしょうね。蒙古襞の他にも眉頭から瞼あたりの堀の深さなど、骨格面なんかも含めての立体感と大きさ、形なんかで判断してるんでしょうか…。うるせーよって言いたくなりますが。
ちなみに上に貼ったインタビュー映像などをみると、本人もその辺をカバーしようとしているのか、眉から瞼にかけてと鼻筋に立体感が出るようなメイクをしているのが分かります。
それとイモギリ役の方についても触れると、この方はペドロ・アルモドバル監督の『オール・アバウト・マイ・マザー』で性転換した娼婦を演じていた女優さんです。名前はアントニア・サン・フアンさん。顔を見てすぐ「あれっ、この人って…」と気付くほどに『オール・アバウト~』での役が印象に残っていますが、やはり同じように感じる人は多いようです。Wikipediaには
『オール・アバウト・マイ・マザー』では体当たりで性転換者を演じて強烈な印象を残したために、彼女のことを男性だと思う人が多いが、実際は本当の女性である。
といったことが書かれています。まぁ……言いたいことはよく分かります(笑)。
アルモドバル作品はちょっと苦手…という人はそこそこいるのではないかと思うのですが、あの独特のエグさが生理的にキツいところがあるんですよね。。あの元男性の娼婦なんてその代表格みたいな感じで、私もすっかり男(もしくは本物の元男性)だと思っていました(笑)。
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