映画『アスファルト』──落ちて、ちょっと前進して、また上がる。

『アスファルト』 ENTERTAINMENT
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※公式サイトの著名人のコメントページに「団地ともお」の作者のものがあって笑いましたw

 

来週WOWOWで放送するらしいので、観に行ってからずいぶん経って記憶も怪しくなっていますが放送前に書いておこうかと…

 

 こちらの映画『アスファルト』、最初チラシを見たとき「うわ、イザベル・ユペールさすがに老けちゃったなぁ…」と軽くぎょっとしたのですが、これは宇宙飛行士を迎えにきたNASAのヘリコプターが飛び立つとき、部屋に風がぶわっと入ってことによる(扇風機の前で口を開けたときのような状態になったところなので)あの顔なんですよね。映画を見てホッとしました(笑)。

 

 私がイザベル・ユペール主演の映画を最初に見たのは、94年に日比谷シャンテで見たハル・ハートリー監督『愛・アマチュア』なのですが、こういうときにすぐ確認できるからパンフレット買っておいて良かったなと思います(笑)。

 

 パンフレット繋がりでいうとこの『アスファルト』のパンフ、コンテンツがいい意味でちょっと古くさいです。

 

 それとこのメインビジュアルに使われている場面ですが、思いっきしラストシーンなんですけど、最近ラストショットとかを予告や広告に堂々と出す作品が多いですよね。。悪いとまでは言わないけど、個人的には楽しみを先に出されるのはちょっと勿体ないように感じています。

 

 

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率直な感想

 

 全体としては、なんか久しぶりにクラシカルな映画を見たなぁという印象です。大きな事件が起こるわけでもなく(宇宙飛行士の件は大きな出来事ではあるけれど)、メリハリがきいた起承転結の振り幅の大きいストーリーというわけでもない、ひと昔かふた昔前のヨーロッパ映画のようなこじんまりとしたスケールの映画、っていう感じ。嫌いじゃないです。懐かしい匂いがします。

 

 とは言っても、物語の舞台となるのはリアリティのある現在のフランスの団地で、立地的にも不便な場所にあり、様々なところからやって来た移民が多く住んでいるところからしても、ある程度どういった場所なのかは想像はつきます。

 

 補修もちゃんとされないまま老朽化が進んで、住民にとっては困ったことになっていたりします。それらの無機質な団地は一部取り壊しが始まっており、アスファルトむき出しで全体に彩りが足りない、リアルな郊外の風景というか。空もいつも曇ってばかりです。

 

 

登場人物とそれぞれのストーリー

 

 故障したエレベーターを住人みんなで負担して直しましょうという提案に、身勝手な理由でひとりだけ反対したことでエラい目に遭ってしまうケチなおっさん・スタンコヴィッチと、何やらワケあり風情の夜勤の看護師

 

 母親と暮らしているものの、ほとんど家庭内離婚ならぬ家庭内自立といった感じでほとんど一人暮らし状態の少年シャルリと、こんな団地に唐突に引っ越してきたお隣さんの女優ジャンヌ

 

 それよりも唐突に(笑)、団地の屋上にいきなり落ちて来た宇宙船の着陸用カプセルに乗っていたNASAの宇宙飛行士ジョン・マッケンジーと、息子が投獄中のアルジェリア移民マダム・ハミダ

 

 

 

 モーターサイクルマシンを漕いでいる最中に意識が落ちて病院送りとなり、しばらく車椅子での生活となったスタンコヴィッチは本当にダメなおっさんなんだけど、惚れた勢いでダメなおっさんなりに夜勤の看護師のためにあれこれ頑張ってみたりなんかする。(頑張る方向にかなり問題はありますが…)

 

 同じ日々の繰り返しでいつも気分が沈み気味の看護師も、いきなり現れた自称カメラマンの車椅子のおっさんと出会い、どこまで信じていたかどうかはともかく、「君の写真を撮らせてほしい」というお願いにまんざらでもない様子。いい関係になるかどうかはともかく(笑)、少しは気分が上がっていつもと違う出来事を受け入れている。

 

 

 表舞台から落ちてしまった女優ジャンヌは、隣の鍵っ子少年シャルリの助言で一歩踏み出す決心をし、今の自分を受け入れ、年相応の女優として新たに進んでいくことに。

 

 そしてシャルリもにとっても、今まで欠落していた、親とか大人たちと触れ合う時間という、この年代の少年にとって必要なはずなのにこれまでほとんど得られていなかった経験をしていくことに。

 

 

 唐突に宇宙からフランス郊外の団地屋上に落ちて来た宇宙飛行士のジョンは、早くアメリカに帰りたいのに英語の通じないアラブ系移民のおばさんと数日過ごさなければならないことに困りつつも、その困った居候生活の中で、言葉は通じないながらも相手の優しいもてなしに少しずつ心を開いていく

 

 またジョンをもてなす側のマダム・ハミダも息子と過ごすことができず落ち込んでいて、その寂しさを埋めてくれるジョンのおかげで生活が活気づいてくる

 

 

 実際には同じ団地とかマンションに住んでいる住人との交流って、家族同士の付き合い(子どもや年寄りを介してとか)がないと結構難しかったりするものですし、ましてやおっさんと看護師みたいなシチュエーションで親しくなるなんてことはそうそうありません(笑)。

 

ですが「袖振り合うも他生の縁」といったように、もし何かきっかけがあって、自分と誰かが“近くにいる赤の他人”ではなくなったとき、この映画みたいに停滞していた人生がちょっと進むようなことが起きるかもしれない──

 

 と思うと、変わらないように見える日常にもどこかで楽しみが待っているような気がしてきます。

 

 

単純か(笑)。

 

 

ところで夜勤の看護師役の女優さんはヴァレリア・ブルーニ・テデスキさんというらしいのですが、妹さん(モデルで歌手のカーラ・ブルーニ)はサルコジ元仏大統領夫人だそうです。だから何だよって話ではありますが(笑)

 

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