ベン・スティラーが監督・主演・制作を務めた2013年の映画『LIFE! (原題:The Secret Life of Walter Mitty)』公開時のキャッチコピーはこんな言葉でした。
生きてる間に、生まれ変わろう。
こんなことがしてみたい、こんなふうになれたらいいなと思うことはあっても、いつも「どうせ無理」とか「時間がない」「お金がない」「自分にはまだ早い」「もうそんな年じゃない」といった具合に、一生懸命「自分がそれをやらなくてもいい理由」を見つけてきては、これまでと何も変わらない人生を送っている──
そんな人にオススメなのがこの映画。(自分をはじめ、世の中の大部分の人が当てはまりそうですが…)
同じように一歩を踏み出す勇気がなく、空想の中でだけ冒険をしていた中年男がついに新たな世界に飛び出し、その最初の一歩を踏み出したことで世界が変わり、本物の冒険をして人生を変えた男の物語です。
ウォルターの境遇と仕事
地味で平凡、ただし風変わりな空想癖あり──パンフレットの中にはこのような見出しがついている主人公のウォルター・ミティ。原作の短編小説や、それを元にした1947年のダニー・ケイ主演の映画『虹を掴む男』のリメイクで、といったことは内容とは直接関係ないので今回のレビューでは触れません。
雑誌『LIFE』の写真管理部に長年勤めているウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、NY郊外から地下鉄で通勤している。片思い中の女性が住むマンションが火事になったときは、駅のホーム(そこは地上駅)からマンションへダイブして彼女の愛犬を救うヒーローとなる……という妄想をしているうちに電車に乗り遅れたりする42歳の中年男。
メディアのデジタル化が進む昨今の影響を受け、『LIFE』誌も休刊となり今後はオンラインの写真アーカイブとなることが決まり、その最終号の表紙に使う写真を探すために(予期せぬ)冒険に出ることになるウォルター。
と同時に片思いの相手シェリル(クリステン・ウィグ)との関係も何とかしたいウォルターだったが、思いもよらないところで彼女との距離を詰めることになる。自身が少年時代に大会で賞を取ったこともあるスケボーのスキルが、シェリルの息子の心をガッチリ掴むことに。そしてそのスキルが自身の冒険でもしっかり役立つことになるのでした。
「ウォルター・ミティ」とは
「Walter Mitty」という名前は、それ自体が比喩の言葉になっているようです。もちろん原作の『The Secret Life of Walter Mitty』からきているのですが、辞書によれば
「Walter Mitty」
《a ~》自分を有能だと勘違いしている人、(実現性はないが)自分の成功を夢想する人
「Walter Mitty dream」
平凡な人が見る夢
「Walter Mitty fantasist」
(実現性のないことを夢見る)夢想家
とのことです。
comment
Kさん、どうも。スーダラです。
大好きな作品です。
主人公が「変わる」「成長する」のではなく、変わることなくプロとしての矜持を全うし、内なる自分のパッションを解放する形になっているところが実に良心的で、且つリアリティがありましたね。
こういう骨太な雑誌や、それを支える本物のプロフェッショナルたちが隅っこに追いやられるばかりでは味気ないですね。
https://cinemanokodoku.com/2018/03/31/life/
スーダラさん
ありがとうございます〜。
ホントそうですよね…。たしかにウォルターの人生が動き出すきっかけはあったとしても、結局のところ自身がそれまで真摯に取り組んできたプロとしての仕事や、父の代わりに家族を支えてきたことなどが大事なところで報われたり役に立ったりしたからこその物語で、決して「都合よく幸運がやってきて冒険の主人公になった」という男の話ではないところが良かったです。
そういう意味でも、あの最終号の表紙のメッセージは強いなぁと思いました。