タイムパラドックスの発生
最初に見たときは全く気にならなかったのですが、何度も見ることで辻褄が合わない箇所が出てきていたことに気付きました。もちろん「科学的にあり得ない!」とかそういう話ではなく(笑)、映画の設定・タイムライン的に噛み合ない、いわゆる「タイムパラドックス」が起きている──という意味です。科学的にあり得ないとかいう話になったら映画そのものが成立しませんので(笑)。
まず実際に起こった事実をおさらいします。(図説と合わせてご確認ください)
デレク・フロストを逮捕することに成功したことで、次なる爆破テロは未然に防がれた。
そのあとに「せめてプログラムの中だけでも列車の乗客を救いたい」と願うスティーブンスによって、最後にもう一度だけプログラムに入ることとなり、そこで理論上ではあり得ないとされていた現実世界への干渉がなされる。(グッドウィン宛てにメールを送信→メールが現実世界のグッドウィンへ届く/すでに起こったはずの列車爆破テロ自体を阻止→そのままショーンの身体で生き続けるスティーブンス)
この最後の8分間での結果によって「朝の列車爆破テロ“も”起こらなかった別の時間軸(平行世界)」が誕生。
そして、ミッションを遂行し、新しく誕生した「テロはひとつも起こらなかった」平行世界の中で、(プログラムを使う当日の朝に)出勤したグッドウィンは、プログラムの中からスティーブンスが送ったメールを読み、今日列車爆破テロが未然に防がれたのは自分たち二人が協力して解決したからだ──ということを知る。
矛盾に気付く前は、メールを受け取っていたグッドウィンは、実は(この映画の冒頭に)スティーブンスが“最初に”爆死して戻ってきたとき、すでに自分たち二人でこの事件を防ぐことを(メールによって)知っていた──という、「おぉ!そういうことだったのか~!」と、最後に観客が盛り上がる“タイムリープものによくある仕掛け”に、特に疑問も持たず納得していました。
「すでに知っていた」ことを証明する描写がこちら。
最初にカプセルに戻ってきたスティーブンスが「あなたは誰?」と聞いたときに
グッドウィンは「知っているはずよ」(実際には「もうあなたはその情報を持っているはずよ」といった感じの台詞だったような…)「私の名前は?」
と答え、逆に問いかけています。もちろんこれはあのメールを朝に受け取っていたから出てくる言葉であり、そうでなければ面識がなく、アフガンで事故に遭うまでの記憶しか情報として持っていない、植物人間状態のスティーブンスがこの時点でグッドウィンの名前を知るはずがないからです。
んん???
いやちょっと待って……
映画の最後では、列車爆破テロ自体が防がれましたよね。
ということは、ラストでグッドウィンがメールを読んだ世界(列車爆破テロが防がれた世界)は、映画の冒頭の世界(列車爆破テロが起きた世界)とは同じ日ではあるけども、別の世界ということになりますよね。
ですので、映画の冒頭にそのまま戻ったのだとしたら、列車爆破テロの犯人探しをする世界はもう存在しないはず。よって、このままの流れだと映画のラストで今後スティーブンス大尉とグッドウィン大尉が協力して事件を解決するのは「何か別の事件」となるはずで(ラトリッジ博士もラストでそういった趣旨の発言をしている)、映画の冒頭と同じ世界に戻ることはないはずです。だからグッドウィンの「知っているはずよ」の台詞は矛盾していることになります。
頭が混乱してきました(笑)
ですが映画の設定的には、時間軸が「列車爆破テロが起こった日(デレク・フロスト逮捕後)」→「映画冒頭の、2次テロが起こる前の時間」へとループする──というふうにしたいのでしょうから、どうにかしてこの矛盾を無くす設定・解釈が必要になってくるのです。なんでこっちがそんなことをしなきゃいかんのか、という気もしますが(笑)。
で、そこで導きだしたのが
要はグッドウィンに「知ってるはずよ」なんて言わせなければいいだけのこと(笑)。
が、そうしないと「この物語は過去に起きたことがループしていたものだったのか!」という驚きを見る側に与えられなくなり、映画的に深みがなくなるので外せなかったのではないかと。
なんか身も蓋もない話になってしまいましたが(笑)。
じゃなければ、「知ってるはずよ」とは言わずに、でも表情などで何か含みを持たせたりすれば成立しそうな気もしますが、それだときっと弱いんでしょうね…。
あとは最後の8分間に行かせてもらえず、デレク・フロストは逮捕できたけど列車爆破は止められない、そしてメールは爆破する前に送信した──っていうタイムラインになったらループも成立しますね。もちろんメールの内容は違うものになり、スティーブンスにとって満足のいく結末にはなりませんが…
おまけ:ヴェラ・ファーミガさんの出演作
少し前にYouTubeでとってもステキな動画をUPしているチャンネルを見つけました。新旧交えた名だたる女優の、これまでの出演作を短くまとめた動画です。気になった女優がどんな作品に出ていたのかを確認するのに非常に役立ちます。またコメント欄も(整理しているのかもしれませんが)概ね好意的なものばかりで、「○○は世界で一番ゴージャス」とか「自分はこのとき恋に落ちたんだ」といった感じの、本人が読んだら高評価ボタンを押しそうな(笑)ものが並んでいて雰囲気も良くおススメです。
というわけでヴェラ・ファーミガさん出演作のダイジェストがこちら。サムネだと何やらいかがわしい系の動画に見えなくもないですが、いたって健全な動画です(笑)。
なんかめちゃくちゃ整っている美人というタイプではないのかもしれないんですけど、加齢による顔の変化も含めて、とっても奇麗な歳の取り方をしているなぁという印象でした。ドラマのほうで有名になっているのか何なのか分かりませんが、他と比べても再生回数がだいぶ多めなのでアメリカではもしかしてかなり人気なのでしょうか。
<※追記:2020年2月、YouTubeの規約の変更により、これまでの動画のほとんどを削除されてしまったようです>
この「Wonderful Actors」さんの動画はどれも本当にクオリティが高くて(ちょっとBGMがうるさいのが気になってはいましたがw)、さらに上にも書いていますがコメント欄も好意的なものばかりで、もし本人が自信をなくして落ち込んでいるときにコメント欄を読んだらきっと元気になるに違いない、という素晴らしいものだったのですが…非常に残念です。
ご自身のサイトを立ち上げてそっちに過去の動画を公開しているようなのですが、有料ということと、何と言ってもこういうのはYouTubeという完成されたプラットフォームがあってこそ人が集まって見てくれるものだと思うので、こういう自サイトへ誘導して見てもらうというのはなかなか厳しいものがありそうです。
というわけでその説明動画はこちらです。これまでのほぼ全ての動画を淡々と削除していくこの動画…それがいかに無念であるかがビンビンに伝わってきてちょっと怖いっす…
ちなみにクリスティーナ役のミシェル・モナハンさんは『M:i:III』でイーサン・ハントの妻ジュリアを演じている女優で、今作のクリスティーナも重要な役ではありましたがやっぱり主演はスティーブンス&グッドウィンの二人かな、と。
実はキアヌ・リーブス主演の人気作『コンスタンティン』にも出演しています。
こちらはヴェラ・ファーミガさんの妹タイッサ・ファーミガ主演の映画
comment
突然、すみません。
ミッション:8ミニッツについての考察、
拝見させていただきました。
素晴らしい考察だと思いました。
自分自身、初めて観た時、いまいち分からなくて、考察頼りで面白みが分かったのですが、理解してからはすごく面白くてすきな映画の一つです。
ところで、この映画の考察の中で、三崎町さんは、グッドウィンの冒頭のセリフ、
知っているはずよ、についての疑問視していました。
まだ三回くらいしか観てないので素人考察レベルなのですが、以下のような解釈はどうでしょう。
冒頭〜スティーブンスの生命維持装置を外すまでの世界線、この世界線をαとします。
αの世界線で、列車爆破事件は起きていますが、その前に他のテロ未遂事件が起きていて、その未遂事件の直後、グッドウィンはスティーブンスからラストシーンのようなメールを受け取っていたのではないでしょうか。
また、スティーブンスがメールしたのはスティーブンスが8分を超えて生存している世界(中身だけですが)線、βなので、グッドウィンがメールを受け取ったのはβであり、αのグッドウィンはこの作中のスティーブンスからのメールは受け取って無いと思います。
αもまた現実世界のプログラムから派生した並行世界だったのです。
あくまで私見の域を得ないのですが、
αの世界線では、スティーブンスが基地に運ばれ実験が行われるまで2カ月経ったことが分かるので、その間に似たようなテロ事件が起きていても不思議じゃない気がします。
以上の解釈について、疑問点や矛盾点があれば教えて頂きたいです。
突然、長々としたコメント、本当にすみません。
また、こういうコメントをするのはなにぶん初めてなものなので、サイトに何を記入するのか分からず、三崎町さんの考察ページを記入させて頂きました。
Bookazuさん
コメントありがとうございます!
そして大変興味深いご考察、ありがとうございました。
なるほど…そういう解釈もありますよね〜。
自分には考えつけなかった考察ですごく興味深いです!
いただいた解釈と少し違うかもしれませんが、言われてみれば
ぶっつけ本番でこのミッションに送られたと考えるよりも
接続実験や予行練習などが行われていたと考えるほうが自然ですし、
脳とか神経系への負担が大きくて本人の記憶に障害が起こるとか
もしくはそのときの記憶が、博士がやろうとしていたようにリセットされるなどして
スティーブンスがグッドウィンのことを覚えていない、ということも十分考えられますよね。
(もちろん、書いていただいたように別の事件などが起きていたという可能性も)
グッドウィンについては、スティーブンスの姿をこの日の朝に初めて見たようなので
あくまでモニター(的なもの?)とマイク越しのやり取りでのみ
スティーブンスのことを知っていた、ということになりそうですね。
ところで、コメントをいただいて改めて考えてみたところ、
大きな見落とし…というか間違い?があったことに気付きました…。
メールを読んだあとで博士のいる部屋へ入ったグッドウィンが、メールに書かれていた
「列車爆破テロは未然に防がれ、犯人のデレク・フロストは逮捕された」
ということが事実だと知る、というくだりを重要視していませんでした。。これは、
・スティーブンスとグッドウィンのふたりで列車爆破テロを防いだ(メールに記載)
・スティーブンスはショーンの身体に入った状態でグッドウィンにメールを送った
という2つの事実により、事件を解決してからループして当日朝に戻ったあとの世界観でも
列車爆破テロは「この2人によって防がれる」ことが絶対的な事実となる、ということに今気付きました。
もちろん最初にスティーブンスがあのミッションに送られるためには
一度爆破テロが行われてしまった世界が設定として必要となるわけですが、
あのミッションを発動した瞬間から「列車爆破テロがふたりによって防がれる」という
不変のゴールが作られた──と考えられます。
このミッションを発動した時点で必ずこのゴールとなることが決まっているので
グッドウィンの「知ってるはずよ」というセリフも何らおかしい点はない、という……
スティーブンスがグッドウィンにメールを送ったことで、過去に転送された男から(直近の)未来の人間にメールするという、ある種禁断の「情報の往復」が行われてしまい、永遠のループ地獄が発生してしまったのではないかと(笑)。
今回コメントをいただいたことで、新たな解釈を教えていただけたことに加えて、
自身の考察の穴(笑)にも気付くことができて、嬉しく思います。
こういう反応をいただけるのはとても楽しいです。
改めまして、ありがとうございます〜!
http://blog.livedoor.jp/thx_2005/archives/51802585.html
残念ながらこちらが真実です。よく読んでくださいね。