執拗なジョブズネタはフィンランドの監督ならでは?
映画の中でもまさかの超重要アイテムとなるNOKIAのケータイ。ノキアといえばフィンランドのメーカーであることはもちろんご存知かと思います。
かつては優れたデザイン性と品質の高さで世界の携帯電話市場を席巻したノキアですが、iPhoneの登場とそれに続くAndroidスマホにその座を奪われ、2013年にはケータイなどのデバイス事業をマイクロソフトに売却することになりました。
最近また復活してきているのは嬉しいところですが、日本では現時点ではまだ公式には使用できないようですね。
そんなフィンランドを代表するNOKIAについては監督もおそらく思うところがあるのでしょう…。ひたすら続くジョブズネタにさらっとNOKIAを絡めて大活躍させるという、なんともいじらしい展開にしています(笑)。
物資も食料もマンパワーも足りない月面基地で「ジョブズ教」なる禍々しい宗教(?)が信仰されているのも皮肉ですが、教祖(?)のドナルドがいちいちジョブズ語録を連発し、さらに全ての場でITビジネス用語を使って話を進めようとするところが笑えます。少し腹立つんですけどw
このドナルド率いる「ジョブズ教」の連中もどっかで殺されるんだろうなぁ~なんて見ていたら、主人公オビの「途中で死んでくれるかも」というセリフ通り、勝手に死んでくれました(笑)。
予想よりもエグい死に方だったみたいでそれはそれで不憫ではありましたが、こういうところで何の後ろめたさもなく、そして一切躊躇することなくこのような「人が喰われる」描写を映画にブチ込んでくるところが、私たち日本人と西洋人の持つ感覚というか倫理観の基準というか、そういったものが大きく異なっているところなのかなぁと思っています。まぁ最近は日本もその辺が麻痺してきているのかもしれませんが…
B級ホラー映画やアサイラム系のサメ映画などでは当たり前のように人がバンバン喰われますし、ゾンビ映画もまたしかりですよね。まぁ普通に考えて、どうかしてますわw
それにしても最初の脱獄ネタが最後にああいう形で回収されるとは思いませんでした…。
でも信者の男が「破門」されたときはその場の数メートルが被害を受けただけで済んだのに、コーツフライシュが持っていたドナルドのiPhone(?)が「破門」されたときはあっという間に巨大な宇宙船が爆破するという、あまりにも都合良過ぎな展開だったのは「いやいやいや」と思いましたけど(笑)。
…ってかドナルド、教祖のくせにお前も脱獄してたんかいw
地下世界(アガルタ)パート
地球内部に存在する都市・アガルタでのパートは、月の裏側以上にやりたい放題(笑)な設定・描写となっており、このパートはさしずめ「異世界冒険モノ」とでも言いますか……
どこかに存在する幻の文明都市での宝探しとか、何らかのアクシデントによって迷い込んだ巨大生物や未知の動植物が蔓延る世界からの脱出劇といったジャンルの映画みたいな展開になっています。サブタイトルの「第三帝国の逆襲」はどこへいったのか(笑)。
ところどころで『インディー・ジョーンズ』シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、そして『センター・オブ・ジ・アース』シリーズ(これは2本だけですが)などを連想させる場面や世界観が登場して、それはそれで楽しいですけどね……でもそういう映画じゃないだろっていう(笑)。
そういえば聖杯からセントラル・サン(ですよね? 設定的には)へ向かってエネルギーが昇っているところは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でスターキラーがエネルギーを充填しているときのようにも見えました。充填する方向が逆ですが。
またこの作品でのアガルタはレプが支配する世界ということになっていますが、基本的にみんな見た目はほとんど人間なのであんまり異性物感がないのも弱い気がします。しかもそれほど強くないので怖いのは恐竜だけという。。
で、その支配層のレプ軍団が全員集合となった食事風景では「最後の晩餐」風の構図で並んで談笑しているのですが、後ろの壁がウロコっぽくなっていて、実にレプらしいキモさとなっておりました。
それぞれのキャラの人選についてはベタといえばベタ、狙い過ぎといえば狙い過ぎにも思えるものの、言わせているセリフなどは分かりやすいくらいにバカらしく、それでいて割と細かいので笑えます。
支配者層が乗るらしい恐竜馬車(トリケラトプスらしき恐竜が引く車なので「馬車」ではないのですがw)でのレプ・セレブリティ(笑)たちとのカー(一応)チェイスで、[ヴリル]ローマ法王と[ヴリル]オサマ・ビン・ラディンが一緒の車に乗って追いかけてくるのも皮肉が利いていて「バカだなぁw」と思いながら見ていましたが、その[ヴリル]ローマ法王の断末魔の叫びが
「ホーリー・シット!」
だったのはバカらし過ぎてさすがに笑ってしまいましたw ジョブズ語録といい、こういった短いセリフで笑わせにくるタイプのバカバカしさは嫌いではないです。
前作の設定に「ヴリル・ヤー」を追加
前作でクラウスに殺されたと思われた月面総統コーツフライシュがキャンディのようなものをコソコソと食べていたのは、てっきり
というような理由なのかと思っていたら違ったんですね。
実はあれは動物の急激な進化を促したり病気や怪我を治したり、さらには惑星間移動のための動力源にもなるという未知なるエネルギー「ヴリル・ヤー」が入ったものであることが判明。…ってか完全に後付けでしょうけど(笑)。
そしてそのコーツフライシュがそもそも人間ではなく、太古の昔に「ヴリル・ヤー」の力によって人類を創造した爬虫類型の地球外生命体・ヴリル族だったのでした。
この「ヴリル・ヤー」ですが、元のセリフでは「ヴリリア」のようで、綴りは「Vrilia」だそうです。ヴリル族の所有しているエネルギーということで「ヴリリア」という名称なのでしょう。
日本語訳で「ヴリル・ヤー」となっているのは、この元ネタとなっているエドワード・ブルワー=リットンの小説『来るべき種族』(英語題は「The Coming Race」で、今作の英語のサブタイトルと同じです)の中に登場する地下世界の文明「ヴリル=ヤ」から来ているものと思われます。小説ではエネルギーの名称が「ヴリル」となっているようですが、映画だと逆なんですかね…読んでないので未確認ですが。。
で、この「ヴリル」という名前は例の「ヴリル協会」の由来にもなったもので、ナチスとオカルトの関連についての話題では「トゥーレ協会」と並んで必ず耳にする名前ですが、由来については知らない方も多かったのではないでしょうか。
「聖杯」の扱いの酷さ(アガルタの存続に必要不可欠なエネルギー源である「聖杯」を自分たちのために奪い、地上に続いて人間はアガルタも破滅させることになる←ヴリル族の差し金ではあるものの)と、そこに至る展開の適当さ(笑)には失笑しますがヴリルやアガルタについて、そして地球外からやってきた種族と人類創世の設定など、オカルト界隈で広く言われていることをよく盛り込んでいてニヤリとさせられます。それが定説と合っているかは別にして(笑)。
サブタイトル&キャッチコピー詐欺w
先ほどちらっと触れましたが、この映画のサブタイトルである『第三帝国の逆襲』というフレーズはまるっきり違いますよね。。さらにチラシの表面に記載されている映画のキャッチコピー、
「ナチスが恐竜に乗って攻めて来たッ!!」
これも完全に間違いです(笑)。戦う相手は第三帝国じゃなくレプティリアン軍団ですし、月にやって来たのはナチスというかヒトラーただひとりで、戦う武器として恐竜を一匹連れてきただけです(笑)。なので「攻めて来た」というのも微妙に違います。
聖杯を奪いにやってきたのが[ヴリル]ヒトラーだっただけで、元々は地球に最初にやってきた3人(匹?)のレプの一人に過ぎません。「ナチス」の軍隊はほとんど皆人間だったのでしょうから、どうしてもこのフレーズを使いたかったら
「ヒトラーが恐竜に乗って攻めて来たッ!!」
とするのが正しいのでしょう。ま、どっちでもいいんですけど(笑)。
あとはあれですね、今作はたしかに前作『アイアン・スカイ』の続編として、舞台となった月の裏側の世界や、主人公のひとりであるレナーテをはじめ、何人かのキャラクターも登場するにはしますが基本的に全て脇役で、全て新しいキャラによるストーリーとなっているのが今イチですよねぇ。もうナチスもアーリア人もドイツも関係なくなってるし、そもそも主要キャラ3人が地味だし(笑)。
前作の何がウケたのか、制作費をカンパしてくれたファンたちが何を見たがっているのか、もしかしたら製作陣はちゃんと分かっていなかったのでしょうか。。。
主人公のオビアナ(なんかオビ=ワンとアナキンを合わせたような名前w)は、チラシを見たときは『マトリックス リローデッド』『マトリックス レボリューションズ』のナイオビ役の人に似てるなぁと思っていたんですが、役名も少し似てますね。
関係ありませんがナイオビの中の人、旦那はウィル・スミスだったんですね。今回Wikipediaを見て知りました。
前作から結構時間が経ったことで、レナーテ役のユリア・ディーツェさんも加齢によるそれなりの変化はあるとはいえ、多くの人がもっと彼女を見たいと思っていたはず…。前作を見たあとYouTubeで彼女のインタビュー映像とかテレビのトークショー的な番組に出演した映像とか見まくりましたが(見たんかいw)、海外の野郎どものコメントを読んでそのことを確信しました(笑)。
前作のあとユリア・ディーツェさんは、ドイツ映画以外ではダニー・トレホ主演のアクション・スリラー映画『弾丸刑事(デカ) 怒りの奪還』なる作品(劇場公開ではなくBD&DVD映画?)に出演されていたようです。
また昨年はオムニバス映画『パリ、ジュテーム』『ニューヨーク、アイラブユー』などの「Cities of Love」シリーズの新作である『Berlin, I Love You』にも出演されているようですが、こちらは現時点では日本で公開されていないみたいです。『Berlin, ~』の他の出演者はヘレン・ミレン、キーラ・ナイトレイ、ミッキー・ローク、ディエゴ・ルナ、ディアナ・アグロンなどだそうです。
ちなみにユリアさん、父親がドイツ人で母親はフランス人、年齢は39歳だそうです。誰のための情報だよって話ですが(笑)。
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