ジャクソン・ポロックの絵との関連性
ネイサンの部屋にジャクソン・ポロックの絵が掛けられていたのも、どこか象徴的なものがありました。
ジャクソン・ポロックといえば現代アートを代表する抽象画家で、2006年には彼の作品「ナンバー5、1948」が165億円で売買されたほど。その作風はとにかく異端であり、床に広げたキャンバスに筆などで塗料をポタポタと滴らせる「ドリッピング」と、塗料をトローッと垂らして線を描く「ポーリング」という手法で、他の絵画に存在する「意図して描かれた何らかの形」というものが存在せず、また、どこが絵の中心で、どこが上でどこが前、といったような“位置情報もない”という「オールオーヴァー」と呼ばれるスタイルなど、それまでの絵画の常識を超えた革命的なものでした。
UKものの音楽好きの人にとっては、The Stone Rosesの初期作品のジャケットがポロック風だったりして(歌詞にジャクソン・ポロックの名前が出てくる曲もありますね)、それで知ったという方もいるかもしれません。
2012年2月~5月に東京国立近代美術館で開催された『生誕100年 ジャクソン・ポロック展』を観に行ったのですが、その中の『インディアンレッドの地の壁画』というかなり大きな作品を前にして、本当にその場を動けなくなるくらいに心を奪われました。言葉では説明できない、このみなぎる躍動感と溢れ出る生命力は一体何なのか…と圧倒されたのを覚えています。
その後NHK-BSで放送された、海外のポロックのドキュメンタリーというか、検証番組みたいなものを見てなるほどと納得したのですが、それによると一見ルールもなく適当に描いているだけのようなポロックの絵には、実は自然界にある法則のようなものに則って描かれていることが科学的に実証された、とのことでした。
例えば木がたくさんの枝を張り、そこからさらにたくさんの小枝がついて葉が茂っていきますが、この枝の張り方を見て私たち人間が本能的に「気持ち悪い」と思ったり「不快」に感じることはありません。むしろ冬になって葉が全部落ちたあとの骨々しい様子をじっくり見ると、自然が生み出す造形の美しさに感動を覚えたりします。雪の結晶なども自然が生み出した造形ですが美しいですよね。
そのような「快」を感じる造形には、自然界で生み出される法則性のようなものがあるらしいのですが、なんとポロックの絵にもそれと似たようなものがあるとのことでした。逆に、他の人が「ポロック風に描いた」作品にはそれは存在しないのだそうです。
おそらくそういった自然が生み出す「快」の造形は、人間が考えながら描こうとしても出来ないものなので、ポロックはそれを意識と無意識の間の「感覚的な何か」で生み出していたのでしょう。
これを踏まえて映画を見ると、ネイサンが生み出そうとしていたものの方向性が少し見えてくるような気がします。人の姿をしていて「自然」に見えるもの=「快」を感じられるもの──を人工的に造り出すのは現実にはまだ無理でしょうが、この作品の中のAIはエヴァもキョウコもいわゆる「不気味の谷」はとっくに超えているように感じます。(そりゃ人間が演じてるんだからそうなるだろww っていうツッコミはなしでお願いしますw)
アリシア・ヴィキャンデルの過去の出演作
またしても個人的にお気に入りのYouTubeチャンネル『Wonderful Actors』さんの動画を紹介させていただきます。気になった女優(僅かながら男優の動画もあります)の過去の出演作を確認するのに最適であると同時に、動画はもちろんコメント欄もそれぞれの女優に対してちゃんと敬意を払っているものばかりで、見ていて楽しいです。他の記事でも書いていますが、女優本人が自分の動画とコメントを見たら絶対悪い気はしないだろうなと思います(笑)。
というわけで、主演のアリシア・ヴィキャンデルさんの過去の出演作をまとめた動画がこちら。ただし2016年5月に作成された動画のようですので、2016年の『ジェイソン・ボーン』や今年公開の『トゥームレイダー ファースト・ミッション』などは含まれておりません。
<※追記:2020年2月、YouTubeの規約の変更により、これまでの動画のほとんどを削除されてしまったようです>
この「Wonderful Actors」さんの動画はどれも本当にクオリティが高くて(ちょっとBGMがうるさいのが気になってはいましたがw)、さらに上にも書いていますがコメント欄も好意的なものばかりで、もし本人が自信をなくして落ち込んでいるときにコメント欄を読んだらきっと元気になるに違いない、という素晴らしいものだったのですが…非常に残念です。
ご自身のサイトを立ち上げてそっちに過去の動画を公開しているようなのですが、有料ということと、何と言ってもこういうのはYouTubeという完成されたプラットフォームがあってこそ人が集まって見てくれるものだと思うので、こういう自サイトへ誘導して見てもらうというのはなかなか厳しいものがありそうです。
というわけでその説明動画はこちらです。これまでのほぼ全ての動画を淡々と削除していくこの動画…それがいかに無念であるかがビンビンに伝わってきてちょっと怖いっす…
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