映画『火の山のマリア』(ネタバレ)──人の業や愛はどこに生きる人間でもだいたい同じ

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グアテマラと火山

 

©Celine Croze

 

 

 原題の『IXCANUL』はカクチケル語で「火山」、英語タイトルもそのまんま『VOLCANO』です。ちなみにスペイン語だと『volcán』になります。

 

 ときに噴火する活火山があり、地震国でもあるところは日本と共通しています。そして2018年6月にフエゴ火山が噴火し、多大な被害と大勢の犠牲者が出てしまいました。日本ではあまり詳しく報道されていなかったようですが、私は噴火した日の朝(日本時間で)から『カナルアンティグア』というテレビ局のサイトで現地の報道をずっと見ておりました。

 

 日本のニュースでは絶対に流せないようなショッキングな映像も目にすることとなりましたが、そのうち国内から物資がたくさん届き、配給の列に並ぶ人たちや捜索の手伝いをしようとする現地の人々、避難所でボランティアとして働く方々など、日本で同じような災害が起きたときに目にするものと同じような光景も報道されるようになっていました。

 

 自分の拙いスペイン語能力でなんとか意味を理解できた現地ボランティアさんのインタビューでは、

 

「この災害は非常に残念で辛いものだけれど、こんなふうに協力して助け合おうとする人が沢山いることを知りました。ですからこんな状況であっても、私は希望を持っています」

 

といったようなことを語っておられました。

 

 メキシコほど大きくはないけれど、他の中米諸国と比べると比較的安定していて、アメリカ文化の影響が強く(私はしょっちゅう先生とレッスンでハリウッド映画の話をしていました)そういった都市部の人々と、この映画の舞台のような田舎の素朴な生活を送る先住民族の人々が、それぞれの環境で異なった暮らしを送っている──そんな国がグアテマラです。(行ったこともないくせに偉そうに書いていてすみません 笑)

 

 また映画の中でも、貧困層の先住民族に対する優遇措置みたいなものの存在がひとつの大きなポイントとなっていましたね。

 

 

あらすじ

 

 

©Celine Croze

 

 火山のふもとで農業を営む両親と暮らすマリア。家には電気も水道も通っておらず、自然の恵みに感謝して生きるアニミズム信仰を持った先住民族で、スペイン語は話せない。作物が収穫できなければ借地を追い出されてしまうため、両親は地主のイグナシオ(妻と死別し3人の子どもを男手ひとつで育てている。スペイン語が話せる)に嫁がせようとしている。またイグナシオもマリアのことを気に入っている。

 

 しかしマリアはコーヒー農園で働く若者・ペペに惹かれていて、ペペに抱かれることを条件に彼のアメリカ行きに連れていってもらう約束だったが、短絡的でダメ男体質のペペはマリアを置いて一人で旅立ってしまい、しかも「初めてなら大丈夫」といういい加減な理屈で避妊をしなかったため、マリアは妊娠してしまう。

 

 妊娠がバレたらイグナシオとの結婚が破談になってしまうため、母親は最初のうちは子どもを堕ろさせようとするが、お腹が大きくなってからはイグナシオとの縁談は諦めて子どもを産んで育てるよう勧める。

 

 そんな折、農場ではヘビが多く出てくるようになり、農民たちは畑にも出られないと頭を抱えていた。マリアと母親も、ヘビに噛まれた牛が道に倒れていて今にも息絶えようとしているところに遭遇する。イグナシオが用意したアメリカ製の農薬も効果がない

 

 このままではここで暮らしていけなくなるので、他の土地の地主に雇ってもらえないか画策する両親だが、ヘビを追い払って農地に種を植えてしまえば土地を追い出されることはないだろうと、マリアは母親が言っていた「妊婦が発する匂いでヘビを追い払う」という話を真に受け、霊術師の祈祷とともに農地に入る。だがマリアはヘビに噛まれてしまい、生死の境を彷徨うことに。

 

 イグナシオに街の病院まで車で運んでもらい、一命をとりとめたマリアだが、通訳として医師と話したイグナシオは、母子ともに無事であり、さらに貧困層の農民には国からの補償が出るということをマリアたちには告げずに「子どもは死んだ」と嘘を伝える

 

 悲しみに打ちひしがれ、葬儀の際も見せてもらえなかった亡き我が子を一目みようと墓を掘り起こすマリア。そして持ち帰った棺に入っていたレンガを見て、子どもは実は死んでいないのではと疑い、イグナシオを介して警察に相談しに行く。しかしここでもイグナシオは本当のこととは違うことを通訳し、うやむやにしてしまう。

 

 映画のオープニングと同じ場面。結婚式を前に母親から装飾を付けられ、ベールをかぶせられるマリア。その顔に喜びの色はないが、自身の運命を受け入れ、そこに幸せを見つけて生きてゆくのだろうか。

 

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