なんていうか……最初に見たときは想像してたのと全然違う展開・映画の主題にいい意味で驚いたのですが、レビューを書くためにもう一回見てみたら今度はどっと疲れてしまいました……。
こういったどこで切り取ってみても救いようがないと思われる主人公に感情移入してしまうと、どうにかしてこの人が救われるポイントを見つけられないだろうか──とか、どの時点で何をやったら(または何が起きたら)この人は救われるのか──といったことばかり考えてしまうんですが、最終的に結局そんなものはどこにもないという結論に行き着いて疲れてしまうんですよね。。
タイトルの意味について
映画のタイトルである『Predestination』ですが、辞書を引くと「予定説」「宿命」そして「運命」などの意味があるそうです。
「運命」という意味を持つ単語だと「Destiny」のほうが私たちにはなじみのある単語のように思えますが、辞書に「運命」と出ていても「Predestination」と「Destiny」のふたつはだいぶ意味合いに違いがあるようです。
「Predestination」は基本的にはキリスト教の思想、聖書に基づく「予定説」「聖定論」という意味で用いられるようで、その予定説とは
とする考えなのだそうです。ただしこれには解釈が分かれる…というか人によって都合のよい解釈をしたり本来の聖書の教えとは別の受け取り方をする者が出てきたりと、その意味については判断が難しいところなのかもしれません。
それに対して「Destiny」のほうは、人の行動や自然界の流れとか成り行きなど、何かしらの作用によって起こる結果──というニュアンスで、「運命を左右する」なんていう言葉があるように
という意味合いとなるようです。
「Predestination」は人の行動や判断などで変わるようなものではなく、絶対的で不可避なもの──という意味を持つことから「運命」という意味の「Destiny」とはやはり大きく意味は異なるようです。
またそういった「人知を超えた不可避なもの」であるという意味だけでいえば「Destiny」よりも「fate」のほうに近いのかもしれません。(間違っていたらスミマセン)
なお赤ちゃんが寝ている病院の廊下でのバーテンダーとロバートソンによる会話の中で、ロバートソンが言う「プリデスティネーション・パラドックス」というフレーズは、字幕では「タイムトラベルの矛盾」と訳されていました。日本はキリスト教の国ではないので「予定説」という言葉ではピンと来ないからなのでしょうか。
でもこの「予定説」という言葉の意味するところを調べたあとでは「プリデスティネーションの矛盾」と「タイムトラベルの矛盾」にはずいぶん言葉の重みが違うような印象も受けます。前者は単なるSFとかオカルトの範疇のものではありませんからね…。
宣伝・ポスターのミスリード
これは日本語版だけに限った話ではないようですが、今作の宣伝文句とかキャッチコピーやポスタービジュアルなどが、実際の映画の主題とは違った路線の内容を匂わせるものとなっていました。
これらを前情報として頭に入れて映画を見てしまうと、最初に書いたように実際の映画が「想像していたものと全然違う展開・内容」であるために結構驚かされることになります。おそらく今これを読んでいただいている方も同じように感じたのではないでしょうか。
日本語版のキャッチコピーはこのような文言でした。
時空(どこ)へ逃げても
追い詰める──
そしてサブキャッチはこちら。
最後の任務は、爆弾魔の阻止。
これでミスリードしないほうが逆にどうかしてると思うのですが(笑)。
バーテンダーにジョンが自身の身の上話をするところまでで映画の半分以上の時間が割かれているし、その身の上話も
という、妙な胸騒ぎがしてくるのでした。ちなみに昨年夏にザ・シネマで放送されたときの番組情報に出ているあらすじはこんな感じ。
1970年11月6日。連続爆弾魔の脅威に市民が震えるニューヨークのバーに、物書きの青年ジョンが現れる。バーテンダーから面白い話をせがまれたジョンは、自らの半生を打ち明ける。彼はもともと女性として生まれたが性別違和から男性に性転換し、突然姿を消したかつての恋人への恨みを今も抱え続けていた。実は爆弾魔を追う時空警察の捜査員だったバーテンダーは、タイムマシンで元恋人に復讐するチャンスをジョンに与える。
………ん??
性別違和から男性に性転換し
いや違うだろw
二重にミスリードしてどうするw
これを読んでしまったから途中で「あれれ???」ってなったんですよね。なぜこういうミスリードが起こるのか…。まぁでもこういうあらすじは配給会社から送られてくる資料を元に書く場合が多いし、キャッチコピーなどからしても意図的に内容がばれないようにやってるのでしょうね。
といってもWikipediaを見るかぎり原作の小説通りの内容みたいですが。
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