ドイツの国営放送ZDFのドキュメンタリー番組に「愛とセックス」をテーマに、様々な国の愛のかたちを取り上げるシリーズがあります。
その中に日本で取材した回があったので見てみたのですが、何ていうか……こういったものを日本に住んでいる日本人が見ると
「耳が痛い話なんだけど、でも現実なんだよなぁ」
と納得してしまう部分があるのと同時に
「いやそれはさすがにごく一部のマイノリティだけの話だろ」
と感じる部分があったり、さらには
「ってかそもそもその人たちって仕込みなんじゃね?」
という疑念が湧いてしまう箇所などが色々と目についてしまいます。
ちなみにこのシリーズの幾つかはVPNを使わなくても日本から見られるのですが、この回は残念ながらVPN無しでは見られません。私がVPNを導入したときのことやおすすめのVPNと割引クーポンについては以下の記事に書いていますのでご興味があるかたはそちらもどうぞ。
『Liebe und Sex in Japan』
この『日本の“愛とセックス”』は2020年の9月に放送されたものらしいのですが、取材したのはどうやらコロナ禍以前のようです。ですがここでクローズアップされる日本の姿は、まるでコロナ禍を経験した世界で新たに生まれた特徴・問題であるかのように見えてしまいます。
ただでさえ欧米社会と比べて人と人のダイレクトな接触が薄い日本人社会が、コロナ禍での生活様式の変化によってますます人と人との物理的接触が減ってしまい、すっかりコミュニケーション不全に陥っているように私には感じられますが、結局のところ日本という国ではコロナ禍以前からそのような未来が訪れるのは時間の問題だったのかもしれません。
とはいえ、日本人がこの番組を見たらここに登場する人たちの多くは決して世の中のマジョリティではない、ということはすぐに分かります。たしかにそういう人たちも存在しますが間違ってもそれが現在の標準的な日本人というわけではありませんし、中にはいささか度を越していると感じる人も登場します。
しかしそういうことを伝えず、ただ面白おかしく奇妙な日本人たちを紹介するだけだと、海外の人たちに「これが日本のリアルな姿」なのだと思われてしまう恐れがあります。たまたま自分が今回これを見つけただけで、きっと今までもいろんな国で同じような情報発信がされていたのだろうなと思うと、ちょっと頭が痛くなってきます。。
というわけでここで語られる「日本人の愛とセックス」の現状はこんな感じです。
これについては大変由々しき問題ではありますが概ね事実なので、そこについては否定するつもりはありません。しかし問題なのは、それらの例として出てくる人たちです。彼らは少数派であり中には特殊な人(上の画像の男性みたいな人)であるにも関わらず、この「事実」と絡めて取り上げているため、彼らが特殊な人ではなく一般的な現代の日本人であるかのような描かれ方をしている点です。登場する人たちは
・ひとりだけの結婚式を挙げる、彼氏のいないアラサー女性
・レンタル彼氏に毎月お金を払ってデートをする若い女性
・アニメやゲームが好きで、三次元の女性と恋愛したいと思わない男性と、オタク仲間の友人たち
・夫婦またはカップル間の性欲を刺激し親密な関係を作るためにリノベーションされたマンションを提供する人と、カップル向けのセックスカウンセラーとして働く女性
・男女の出会いを提供するイベントツアー(田舎の学校を宿泊施設として再利用している場所での1泊2日のイベント)に参加する恋人を探す若い男性
・妻の合意のもと2体のラブドールと暮らす、結婚20年を過ぎた中年男性
・日本人女性と外国人のカップル成立や国際結婚を推進すべく銀座で仮面パーティ(場を盛り上げるためにマッチョの外国人ストリッパーを用意したりする)を主催するフランス人男性
といったような方々。
恋愛から遠ざかる若者たち
24歳の未経験男性・イノウエさんは、同世代の女性とのセックスに興味がなく、マンガやアニメのヒロインが好き──という設定。
若者に限らず、現代の日本ではそういった考え方を持つ男性もある程度存在するのは事実だとは思います。ですがこのイノウエさんと、彼のオタク仲間については仕込み臭がプンプンしました。
イノウエさんはルックスは全然悪くなく、むしろモテるほうの部類であるように見えます。
女性との関わり方や距離の取り方/詰め方が分からないという設定ですが、取材スタッフとの受け答えなどは堂々としたもので、コミュ障タイプ独特のキョドり方も全く見られません。もちろん二次元に逃避する童貞の全てがコミュ障だとは思っていませんし、社交性のある人も多くいることでしょう。でもこのイノウエさんについてはとにかく怪しいんです。どこかの劇団員とか、タレント事務所に所属していてエキストラなどがメインの経歴、みたいな雰囲気を漂わせています。見てもらえればいいたいことは分かると思いますので、VPNを入れている方はぜひチェックしてみてください。
またオタ友の二人も今どき珍しい、肩から脇の下くらいまであるロン毛+ヒゲという風貌(痩せ体型)なのですが、そもそもそんな風貌のアニメオタクってあまりいないような…。髪の毛は長いけど不潔感は全くなく、着ているTシャツもヨレていたり何日も着ているような感じもしません。彼らの仕込み疑惑についてはまた後ほど触れますが、見れば見るほど怪しく感じられます。
なおそのうちの一人はYouTubeで1100万回以上再生されている『人を怒らせる様々な「はい」』という動画に出てくる男みたいな顔をしているため、仕込みだと疑っていることも相まって「もしかして本人じゃないのか?」とも思ったんですが、両方確認してみたら全く違う人であることが判明しました(笑)。
現実世界の女性との恋愛よりもマンガやアニメの中の女性に魅かれる、というイノウエさんと絡めて、番組では日本人の50%が定期的なセックスをしていないことと、同時に日本が最大のポルノ映画製作国(年間30,000本制作されているとのこと)であるということをZDFは「奇妙だ」と表現しています。
まぁたしかに奇妙なのかもしれませんが、海外でもポルノ中毒の問題は深刻化しているようですし、インターネットやスマートフォン、VRなどの進化と普及でこういったバーチャルなものに人が流れていくのは日本に限ったことではないはずです。もちろんその中でも日本は特に先を行ってしまっているという可能性は否定できませんが。
29歳の女性・ナオコさんは素敵な結婚に憧れ、ドレスを試着してみたりウェディングプランナーのユキコさんに色々な相談をしたりと積極的に行動していますが、彼氏がおらず、また彼氏を作りたいとも思っていません。
どういうことなのでしょうか。
現在、日本では「ソロウェディング」が流行っています(と番組では言っています)。ウェディングプランナーのユキコさんがこの「ソロウェディング」を思いついたのは1年前で、以来100人以上が利用しているとのこと。なお料金は2,400ユーロ。
メイクアップアーティストやスタイリスト、カメラマン、送迎などの人的費用の他、ドレスなどの衣装代と会場費などもろもろ合わせてのこの価格が高いか安いかはさておき、パートナーはおろか家族や友達すらいない、一人きりのウェディングドレス姿の写真って虚し過ぎるのでは……
いやー、さすがにこれはマイノリティ過ぎるでしょう(笑)。でも番組のナレーションが本当に正しいのなら、これまでに100人以上がこの「ソロウェディング」をやったというのですから驚きです。
3年前に「レンタル彼氏」を斡旋する事業を始めたタロウさんの代理店はとても成功しているそうです。
24歳のユイさんは彼氏いない歴=年齢。彼女はそこの売れっ子の一人であるリクさんと新宿で待ち合わせてデートをします。料金は2時間で120ユーロ。ユイさんはこれまでも月に一度のペースでリクさんをレンタルしており、今回が3回目とのこと。
彼女はレンタルしたリクさんと過ごす時間を通じて男性との過ごし方やコミュニケーションの取り方などを経験しているそうですが、彼女のルックスの絶妙さ(見た目には全く問題が見当たらないが陽気さとか快活さはあまり感じない)といい、これまた大勢の人がいるところで外国の取材陣にカメラを向けられていても割と平然と過ごしている点といい、こちらも仕込みである可能性を疑ってしまいます。
男女問わず、24歳でセックスの経験がないこと自体は別に悪いことだとも思ってないし問題だとも思わないんですが、とくに強烈な過去のトラウマ体験などがあるわけではないのに、異性とのコミュニケーションが自然に出来ない──そのようなことが一般的な傾向となっていくことは大きな問題だと思っています。さらにそれを拗らせてミソジニーとかミサンドリーみたいな方向に行ってしまうと余計に複雑になってしまいます。そういった現象は支配者たちに対して人々が抵抗しないように社会を分断させ、団結力を弱めていくために操作・誘導されて生み出されるものなので気をつけないといけません。
ところでユイさんが帰る場面で、昼間のホスト風ルックスのリクさんはユイさんの頭をポンポンしていました。レンタル彼氏はそんなこともするとは思いませんでした(笑)。
先述の24歳の未経験男性・イノウエさんは「三次元の女性には興味がない」と言っていましたが、なぜかメイド服を来た女の子に膝枕やハグが出来るお店に行きます。こういうところは何と呼ばれているのか私は知りませんが名称みたいなものがあるのでしょうか。
そこは狭い雑居ビルの1フロアをカーテンで細かく仕切った作りとなっていて、各ブースの面積はシングルベッドくらいの広さしかなく、隣とはカーテンで区切られているだけです。間違いなく他の客の会話なども丸聞こえでとてもリラックスできる空間とは思えないのですが、イノウエさんは終始落ち着いていました。初めて来たのにも関わらず。
女の子がブースに入ってきて挨拶するところから始まり、胡座をかいた膝の上に乗せたメニューらしきものを見ながら「いろいろあり過ぎてどうすればいいのか分からない…」みたいなことを言ったあと、ごく自然に女の子の目を見つめるイノウエさん。
そのあとも女の子とちゃんと目を合わせながら自然な会話をし、メイド姿の女の子の膝枕に頭を乗せる前後のやりとり、そして最後のハグでの落ち着きぶりと、童貞の若者とはとても思えないハイパフォーマンスを見せてくれます。
またその後に映ったイノウエさんの一人暮らしの部屋の様子も、微妙にわざとらしいものがありました。
中途半端なアニメグッズ、ぶら下がっている室内干しのトランクス(うまく文字で説明できませんが、映画のセットのようないかにもそれっぽく作りました感が出ているのです)など、微妙な違和感が感じられる部屋なのです。
テレビの横の収納ボックスにはゲームやら電気シェーバーやら充電コード類やら何やらがごっちゃりと無造作に突っ込まれていて、いかにもあまり掃除もしなさそうな、そして女の子が遊びにくることもなさそうな一人暮らしの男の部屋という印象を持たせようとしているのですが、そういったごちゃっと積まれたガジェットやら何やらには埃が全くついていないように見えました。それらの多くは黒や濃いグレーなので埃は目立つはずなのですが、奇麗なんです。それにそういった整理整頓が全くされていないところはそもそも掃除できませんから、埃が全くないというのはおかしいんですね。
そして後日イノウエさんが秋葉原で合流する、先述のロン毛のオタク仲間2名というのもまた非常に怪しくて、ひとりはオタクというよりバンドマンっぽい雰囲気に見えます。
「昔のヒッピーみたいに髪が長いからドイツ人視聴者にはそれだけでオタクっぽく見えるだろう」
という理由でキャスティングしたんじゃないの?という感じです。
そしてもうひとりの、上の動画に出てくる男に似ているロン毛のほうは歩き方がとてもわざとらしく、まるで「オタクっぽく歩いてください」といった指示でも出ているかのような不自然な歩き方をしています。決して目立つわけではないのですが注意して見ると気付きます。カメラに撮られているから緊張している、というのではなくて、そういう設定を演じているような雰囲気がするのです。
彼ら3人が地下に売られているエロ同人誌(全然分からないので違ってたらすいません)を見に行った場面では彼らの後ろに本物の客が数人いて、その男性客たちを見てさらに気付いたことがありました。
彼ら「本物の客」はリュックを背負っていたのです。
イノウエさんはトートバックを肩にかけており、オタク仲間のふたりもバンドマン風情の男がキックボードを畳んで手に持っているだけで、どちらも手ぶらです。
手ぶらで秋葉原にいくオタクがいますかね?
ちなみに私はどこに行くにも手ぶらで出かけることはありません。近所のコンビニに行くときでさえ財布とスマホだけで出かけることは滅多にないです。手ぶらで出かけるのが好きな友人もいますが、ここに登場するようなタイプの男ではありません。
改めて秋葉原の路上のシーンを見てみると彼らの不自然さが分かります。他の人たちはリュックやボディバッグ、紙袋などを持って歩いています。
結局、海外で放送されるドキュメンタリーを見る日本人なんてせいぜい現地在住の人くらいだろうから、設定を盛ったりそれっぽい見た目にしておけば仕込みを使っても誰も気付かないだろう──くらいの感覚で作っているのではないかと。。
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