【Netflix】『マニアック』第1話~第2話 【ネタバレ&伏線の解説と考察】

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 2018年921日にNetflixcで全世界同時配信されたドラマシリーズ『マニアック』。監督はキャリー・フクナガ、主演はエマ・ストーン、ジョナ・ヒル、サリー・フィールド、ソノヤ・ミズノほか。

 

1話がだいたい40分弱の全10話からなるドラマシリーズですので、休みの日に全話イッキ見してもたいして時間はかからない長さではありますが、架空の世界やパラレルワールド系のドラマなどによくある「唐突に始まる別の時間軸やキャラ設定」が途中から連続するため、注意して見ていないと「え、何この設定…」と流れが理解できなくなり、話の展開が分からなくなって物語を楽しめなくなってしまうかもしれません。

 

 正直なところ、私も一通り見終わってからの正直な感想は「まぁそれなりかなぁ…」という程度でした。ですがこれを書くために最初から何度も見直してみたところ、実は細かい伏線や序盤から出てきたキーワードが一貫してストーリーに絡んでくるものっだったり、謎の世界観も意味があるものだと分かり、実は結構面白いドラマだったということに気付きました。

 

 というわけで、ここから2話ずつに分けて、その時点ごとの登場人物紹介や見落としがちなポイント、その他考察や補足説明などを書いていこうと思います。

 

 

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全体のあらすじ

 

 病気や家族との問題など、うまくいっていない人生を送っているオーウェン・ミルグリムアニー・ランズバーグの2人は、日系の製薬会社ネバーディーン・バイオテックが行う新薬の実験に参加する。この実験は3つの薬の作用と、独自に開発されたAIのGRTA(ガーティー)の導きによって人が抱える問題を解決させ、被験者の心を健康な状態に変えることを目的としているが、ガーティーを開発したネバーディーン社の科学者たちと、さらにはガーティー自体も問題を抱えており、それもオーウェンとアニーの2人に大きく関わってくることに。この3日間の実験は2人に、そしてネバーディーン社の科学者たちやガーティーに一体どのような変化をもたらすのか──

 

 

舞台設定

 

「新自由の男神」なる像がある架空のNYが舞台。ハイテクなのかローテクなのか謎の世界で(パソコン、電話、テレビ、使い捨てカメラ、企業の機械など、旧時代的なものが多数)、現金に代わる「アド・バディ」なる支払いシステムがあったり、「フレンド・プロキシ」と呼ばれる仮想友達サービスのようなものも存在しています。仮想友達ビジネスは実際に現在の日本に存在しているところが何だかなって感じですが……

 

 そしてネバーディーン社が日系企業ということから、いたるところで日本語や日本っぽい仕種・設定(ちょっとおかしいものの、これまでよくあったトンデモ系ニッポン描写とは異なる面白い世界観)といったものが登場し、なかなか面白かったです。

 

 被験者たちが寝るスペースは間違いなく日本のカプセルホテルのイメージでしょうし、やたら狭い博士たちの就寝スペースや、それを開け閉めするときのパンパンと手を二度叩くところなどは神道の参拝方法にインスパイアされたものかもしれませんね。

 

 ほかにも食事や雑談、就寝など、いちいち細かく規則で区切られているところや、その説明がドット絵なのも日本っぽかったりします(笑)。さらには博士たちが時折叱咤激励する日本語がヤ◯ザ映画風だったり、CEOが社員に話すときの日本語が独り言みたいな敬語になっていたりと、トンデモ系よりも日本に近づいていながらも、でもやっぱり少し変という、絶妙な日本風世界観が展開されています。個人的には被験者を選定するテストで行われる「最後の質問」がツボでした(笑)。

 

© Netflix

第1話:選ばれし者

 

 

内容

オーウェン・ミルグリムがネバーディーン・バイオテック社の新薬実験に参加するまで

アニー・ランズバーグについてはとりあえずその存在と、オーウェン視点での二人の出会いまでを

 

主な登場人物

オーウェン・ミルグリム(ジョナ・ヒル)

NYの富豪であるミルグリム家の五男であるが、統合失調症に苦しんでおり、またも仕事をクビになった。兄ジェドの裁判で彼を助けるため嘘のアリバイ証言をすることになっており、そのことで悩んでいる。ジェドの婚約者アデレードに好意を抱いている

ポーター・ミルグリム

オーウェンの父。ジェドが裁判に勝てるよう、オーウェンに嘘の証言をするように強要している

ジェド・ミルグリム

オーウェンの兄。社内の女性従業員からセクハラで訴えられているらしい

グリムゾン

オーウェンの幻覚で現れる男。見た目は兄ジェドである

 

アニー・ランズバーグ(エマ・ストーン)

オーウェンと同様、ネバーディーン・バイオテック社の新薬実験に参加する。オーウェンの幻覚によると、共に世界を救う任務を負う女諜報員とのことだが…

アズミ・フジタ博士(ソノヤ・ミズノ)

ネバーディーン社の科学者。ヘビースモーカーで猫背

ロバート・ムラモト博士

フジタ博士の同僚。気を失ったように突っ伏しているのが気になる…

 

ポイント&考察

 

オープニングのナレーションはジェームズ・マントルレイ博士によるものと思われる。ジェームズ博士は後に登場。

ここで語られる内容は、同社が開発しているAIと新薬による治療の目的が何なのかを説明している。なお最終話のラストパートに、ジェームズがこのナレーションの冒頭を語りだすシーンがある。

 

結びつきの潜在力は無限に広がるのだ この真理は人の心にも当てはまる」

「仮に 全人類がつながりを求めていたとして 心はそのことに気付いていない」

「仮に 生まれかけた全ての世界が この世界のように困難なら?」

「当然 それらの世界でも 我々はひどく苦しむ」

「友達との交流も 家族とのつながりも 失えば迷子になる」

「1人ぼっちでいるのは つらすぎる」

「つまり私は根絶したいのだ 無意味で不要な人類の痛みを」

「永遠に… 痛みから解放されるべきだ」

 

 

アニーが飲食店から出て歩いているときに通り過ぎる街頭広告(裏側)はグレタ・マントルレイ博士の著書『心地悪いハグもある』

 

ロシア人の観光ガイドがツアー客を引率する横で、グリムゾン(眼鏡と耳当てがエドワード・スノーデン風)から「世界を救うヒーローになれ」「任務は女諜報員が伝える」「会えばわかる」と言われる

 

ハトの餌がポップコーンになる幻覚を見る

 

 ここでの観光ガイドがロシア人だということは、「ダー」と言っていることでも分かりますが、字幕を英語にするとロシア語を喋っているということが判ります。また、このときのグリムゾンの風貌がエドワード・スノーデン風になっているのは、スノーデンが元CIAでロシアに亡命した人物であることからくるものと思われます。

 

仕事をクビになって自宅に戻ってきたオーウェンが見た街頭広告で、ゴルフをする女性が話す台詞「You made a promise to me, and you made a promise to yourself.」という部分は、第8話の重要な場面で登場する

 

帰宅したオーウェンが部屋で読んでいた本はグレタ・マントルレイ博士が書いた『直さず ただ喜びなさい』。

 

 グレタ博士は後に主要キャラとして登場。また、第4話でもオーウェンがグレタ博士の本を読みラジオを聞いていたことや、第5話で“ガーティー・ネバーディーン”に挨拶する場面は、最終回でオーウェンがグレタ博士に会ったときの会話に繋がってきます。

 

「パターン」「ポップコーン」など、幻覚で見聞きするキーワードが現実でも度々出てくることで、オーウェンがネバーディーン社の新薬実験に参加することになる。また「ポップコーン問題」は第9話で登場する

 

 

© Netflix

第2話:新しい自分に

 

内容

アニー・ランズバーグがネバーディーン・バイオテック社の新薬実験に参加するまで

ネバーディーン社でオーウェンと出会う

初日の実験でアニーのトラウマが判明する

 

主な登場人物

アニー・ランズバーグ

何人かとルームシェアしている。「A」という形の錠剤を砕いて鼻から吸引。右の肩甲骨あたりに痕がある。妹に会うためにソルトレイクシティに行こうとしていたが、錠剤「A」を手に入れるために職員を脅迫して新薬実験に無理矢理参加する。ヘビースモーカー

ハンク・ランズバーグ

アニーの父。庭に置いてある小型シェルターのようなものに籠っている。アニーが戻ったら一緒に食事をする約束をする

エリー・ランズバーグ

アニーの妹。婚約者の転勤によりソルトレイクシティへ引っ越すことになり、アニーが運転する車でソルトレイクへ向かうが…

GRTA(ガーティー)

ネバーディーン社が開発したAI。女性の人格であり、ムラモト博士に対して恋愛感情のようなものを持っているように見える…

ジェームズ・マントルレイ博士

実験の概要を説明する映像にムラモト博士とともに登場。この実験施設には居ないようだ

 

ポイント&考察

 

アニーが説明を受ける「アド・バディ」社の係員の名札に「A」

 

アニーの父ハンクが籠っている小型シェルター?に「A-VOID」のロゴ(「void」は無効、空っぽの、といった他に「喪失感」といった意味も)

 

ソルトレイクシティへ向かうためバスターミナルへ向かうが、案内表示盤の文字が「A」になる

 

アニーが“ミルグリム・インダストリーズ”ビルの前の粗大ゴミから持ってきて、「健康な人間は本を読む」「自分はもう健康なのだから今度こそ読む」と行って鞄に入れた本『ドン・キホーテ』は、このあと何度も象徴的に登場する

 

 『ドン・キホーテ』はセルバンテスの有名な小説で、スペインのラ・マンチャ地方のとある村の郷士が、現実と空想の区別がつかなくなり自らを騎士のドン・キホーテと名乗り、従士サンチョ・パンサと共に冒険の旅に出る物語。アニーが読もうと思って持っている本であり、また「現実と空想の区別がつかなくなった男」の話であることから、オーウェンの問題とも重なってくる本であると考えられます。

 

新薬実験で使用される3つの錠剤「A」「B」「C」のそれぞれの役割

「A」は診断用で、自身が持っている人生最大のトラウマを表面化させる。「Agonia=苦悩」

「B」は、脳の中に隠れている記憶を探し出し、心の迷路と壁を破る。「Blind spots=盲点」

「C」はこれまでの2つで導き出されたトラウマや問題点と対決し、受け入れてより健康な心へと変えていく。「Confrontation=対決」

これらのステップをAIの「GRTA(ガーティー)」がコントロールし導いてゆく

 

ムラモト博士がAIのガーティーに読み聞かせていたのはイギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの『The Angel』という詩の一節

 

実験でアニーが見ることになる過去のトラウマの世界で、アニーがモーテルの外を眺めているシーンで、電飾の看板に「CLOUD LAKE」の文字が見える。「CLOUD LAKE」は2人が事故にあった場所であり、第7~8話でアニーとエリーが目指す場所「雲の湖」でもある

 

またモーテルのベッドでテレビを見ながらエリーが言う台詞「“アニー 私はエリア”」「“呪われたエルフで あなたの妹”」「“私を助けて”」は、同じく第7~8話で出てくる世界のキャラクターである

 

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