ジム・ジャームッシュ監督最新作『パターソン』──犬と白黒と詩人たちの7日間

『パターソン』 ENTERTAINMENT
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 この2017年10月に書いた『パターソン』のレビューは当ブログをはじめてまだ日が浅い頃に書いた、拙い内容で自分で読み直すのもためらうような恥ずかしいレベルなので(笑)、改めてレビューを書き直しました。

 よろしければこちらの2020年5月に書き直した【改訂版】のほうをお読みくださいませ。

【改訂版】映画『パターソン』──ふたつのものが同時に存在する意味は(双子・白と黒・バスでの会話など)
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 今月になってこちらでも公開されたのでジム・ジャームッシュ監督最新作『パターソン』を観てきました。残念なことにパンフが売り切れていてあとで再入荷するらしいので別の映画を観に行くときに買おうと思っていますが、これを書いてる時点ではパンフを見ていないので間違いなどあったらすみません、ということで。ちなみにパンフの売り切れはここ1~2年の間では『デッドプール』『この世界の片隅に』に次いで3回目でした。…すごい組み合わせ(笑)

 

 

 この映画の「パターソンに住むパターソンさん」みたいに、大切な人から道で遭遇する赤の他人まで何を言われても否定とかしないでとりあえずちゃんと聞く、でも決して深く立ち入ることもなく相手に干渉しないという生き方が出来る人なんていったいどれくらい存在するのやら。。ベルリンの「勝利の天使のモニュメント」の上からロングコート姿で見下ろしてた人とかならともかく…ってあれは人じゃないですね。。

 

 そんな人だからみんな遠慮なく自分のことを語り出すし、パターソンさんも受け流しつつそれらのことを自分の詩に取り込んだりもする。関わる人が抱えている事情に深くは立ち入らず、受け止めて流していくスタイルはまさに詩を書くようなものなのかもしれません。

 家はそれなりに広いのに二人が寝ているベッドは小さいので、毎朝のシーンもちょっと窮屈そうに見えなくもないけどちっとも苦にはなってなさそうだし、妻がどんどん部屋をおかしな方向に模様替えしていくことにも否定的なことは決して言わず、秘密のパイ(違う呼び名だったような気も…)がまずくても絶対に美味しくないとは言わず、うまい表現でかわしてとにかく水で流し込む。ギターが欲しいと言われてもはっきりとは反対せず、結局購入しちゃった妻の演奏もちゃんとほめてあげたりします。(愛する妻のすることなので無理しているわけでは全然ないようで)

 ところでこのパターソンさんの妻のローラ、着る服から模様替えする部屋のあれこれ、買ってきたギターのアレンジから部屋で履いているサンダルまで(カップケーキも?)とにかくなんでもかんでも白黒なんですがあれはなんでしょうか。ジム・ジャームッシュのモノクロへのこだわりの現れとか?(笑)。さすがに永瀬正敏のスーツまで白黒じゃないかー、とこじつけるつもりはありませんが。

 

 で、映画の中の一週間でパターソン家に唯一の事件が起きた土曜日、普段は犬のマーヴィンの散歩は家を出て右に曲がるのにその日だけマーヴィンが左に行きたがるので逆方向に向かい、滝の前まで行ってひと休みして帰宅。そしてそこから事件が起こり、犬と一緒じゃない散歩に出かけた日曜日

 いつもだいたい同じ時間に起きて、同じように仕事前に詩を書き仲間に声をかけてから車を出し、同じ場所でどう見ても少ない昼飯を食べ、仕事を終えて帰宅してから同じコースで犬の散歩、途中馴染みのバーで一杯だけビールを飲むというルーティンの生活が身に染み込んでいるせいか散歩も普通に家を出て右に向かうパターソンさんですが結局途中で方向を変えたのか滝の前まで来ることに。でもそこで出会った3人目の詩人に明日からまた同じように生きていくための大切なアイテムを受け取ることになったのでした。(1人目の詩人は少女、2人目はランドリーの男)

 

 もしかしたらこれは自分の勘違いかもしれませんが、それまで詩を書いていたノートと貰ったノートに書いた詩とでは筆跡というか、字の形が違っていたような気がしました。ずっと使っていたノートでは自分の筆圧、速度でずらずらっと書かれていたのに対し、最後の詩では一文字一文字がしっかりとしたフォルムで全体的に整っていたように見えました。もし本当に字が違っていたとして、それをどう解釈するのが正しいのかは解りませんが以前より自分の詩とか人生の何かをもう少し大事にしていこうと考えるようになった、とかでしょうかね。

 若い頃にこういったタイプの映画を見たときはいつも自分の人生と比べたり置き換えたりしていろいろ考えてみたものですが、もうそういうふうに考えるには歳を取り過ぎたな…ということを改めて実感した映画でもありました。もちろん後ろ向きに受け取っているわけではありませんのであしからず(笑)

 

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