三崎町三丁目通信

映画・海外ドラマのレビューや外国語学習についてのブログ

© 2015 - Universal Pictures International

映画『エクス・マキナ』(ネタバレ)──“You shouldn't trust h●●.”

投稿日:2018年10月7日

 

本レビューはおおよそこのような構成となっております。

 

タイトルについて

 

 タイトルの『エクス・マキナ』(原題『Ex Machina』)はラテン語で「機械によって」という意味──とのことですが、最初に映画の情報が出たときにはスペインの映画なのかなと思いました。

 

 スペイン語はフランス語やイタリア語、ポルトガル語、ルーマニア語と同じくラテン語から発達していった言語で、スペイン語で「機械」は綴りも同じく「Machina」、そして読みも同じく「マキナ」です。

 

 で、英語と同様にスペイン語でも「ex」は「元」という意味なので「元・機械」とかそういう意味で、進化が進んで機械以上のものになってしまった、みたいな話かなと思っていたわけです。まぁそれでも内容には合っていたようですが…

 

 ちなみに、スペイン映画で同じくAIを扱った『EVA<エヴァ>』というタイトルの作品があり、内容は大きく異なりますがこちらも良作です。(というか私はこの『EVA<エヴァ>』のほうが好きです)主演は『イングロリアス・バスターズ』での狙撃の名手役や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で事件の黒幕である悲しき復讐犯役を演じたダニエル・ブリュール。

 

 

4人(?)の登場人物

 

© 2015 - Universal Pictures International

 

アリシア・ヴィキャンデル(エヴァ)

 主演のエヴァ役は今年公開された『トゥームレイダー』のリブート『トゥームレイダー ファースト・ミッション』でララ・クロフトを演じたアリシア・ヴィキャンデル。個人的には「マイケル・ファスベンダーの彼女、そして今の妻」という印象が強かったのですが、この『エクス・マキナ』を見てみると、なるほどたしかにこれば美しい…と思いました。“人間ではないもの”としての、つまり人間として生まれ、時間と経験とともに成長して今こうなってます、という感じが全くしない“作られた無垢さ・幼さ”みたいなものをよく体現できているなぁと思いました。だからこそ怖いのかもしれませんね。

 

ドーナル・グリーソン(ケイレブ)

 もう一人の主演、ケイレブ役は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『〜/最後のジェダイ』ファースト・オーダーの将軍役でおなじみのドーナル・グリーソン。アリシア・ヴィキャンデルとは『アンナ・カレーニナ』で、オスカー・アイザックとは上記の『スター・ウォーズ』2作で共演していますね。

 

オスカー・アイザック(ネイサン)

 エヴァを造った天才プログラマーのネイサン役はオスカー・アイザック『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『〜/最後のジェダイ』で反乱軍のパイロット、ポー・ダメロンを演じていますが、『X-MEN:アポカリプス』ではアリシア・ヴィキャンデルの亭主マイケル・ファスベンダーを従えるアポカリプス役を演じました。こんなところにも繋がりが(笑)。ってかネイサンがオスカー・アイザックだったことを見終わってキャストを確認するまで気付きませんでした…

 

ソノヤ・ミズノ(キョウコ)

 謎めいた女性・キョウコを演じているのは、今作が映画初出演となったソノヤ・ミズノ。日本人の父とイギリス人の母との間に生まれた日系イギリス人のモデルで、今作以降、『ラ・ラ・ランド』をはじめ映画やドラマで活躍している女優です。10代の頃ずっとバレエをやっていて、バレリーナとしても活動していたとのことで、ネイサンと一緒に踊るシーンでは唐突ながら(笑)キレのあるダンスを披露しています。2018年9月下旬にNetflixで配信されたドラマ『マニアック』で、またもエマ・ストーンと共演していますが、こちらではやや微妙な日本語を聞くことができます(笑)。

 

スポンサーリンク

 

あらすじ

 

© 2015 - Universal Pictures International

 

 圧倒的なシェアを持つ検索エンジンで有名なインターネット会社“ブルーブック”でプログラマーをしているケイレブは、ある日社内の抽選に当たり、社長であるネイサンが所有する山奥の別荘に一週間滞在することになる。しかし、送迎のヘリコプターすら近寄ることを許されない人里離れたその別荘でケイレブを待っていたものは、美しい女性の姿をした“エヴァ”と呼ばれるAIの人工知能をテストするという実験だった。

 

 “エヴァ”とのセッションを続けていくうちに、エヴァがケイレブに対して好意を抱いているような兆候が見られるようになり、同時にケイレブにもエヴァに対して恋愛感情のようなものが湧いてくるようになる。そしてネイサンの監視が中断する停電中にエヴァは「ネイサンを信用しないで」と警告する。

 

 ハウスメイドのキョウコをはじめとした“エヴァ以前”のAIの存在を知り、またこの先も進化し造りかえられていくことで今の記憶を消されることになるエヴァを助けたいという思いから、彼女を逃がす計画を立てるケイレブ。だが停電中に語られたその計画をネイサンは新たに設置したカメラで全て知っていたのだった…

 

 

映画を見ての感想

 

 人工知能の暴走といったテーマにした映画は『ターミネーター』をはじめ昔からあり、また現実の世界でもAIがヘイト発言を連発したり「人類を滅ぼす」などと発言してしまったりと、人工知能については正直恐ろしい未来しか想像できないのですが、この映画はそれらの出来事が起こる少し前に作られた作品です。

 

 人間と違って休むことなく学習と進化を続け、ついには人間が全く理解・関与できないレベルまで進化してしまい、その結果、自分たちAIにとって有害となる人類を攻撃することになるのではないか──といったことは普通に想像できることですが、今作でのエヴァは、人間の感情がどういうものかを理解したうえでそれを利用し(自分にも感情があり、そこで信頼や好意を持たれるよう計算し振る舞う)、その人間を操ることで脱出するという、もはや人間が太刀打ちできないレベルに到達しているのが恐ろしいところです。

 

「人造」と「生」の違い

 エヴァが居る空間の無機質さはそのままAIの無機質さと比例しますが、その「造られしもの」とは対照的に、山々や滝、木々や空、日光などの自然は色彩に富んでおり、実に美しく描かれています。またキョウコが料理をしているときに包丁を入れている鮪と思われる赤身の生々しさや、ネイサンにサクッと入っていく包丁の感触なんかも、生き物とAIとの違いをうまく表現していたように思いました。

 

手段としての「感情」

 私はどうも思考がお花畑になりがちなのか(笑)、クライマックスでケイレブに「ここで待ってて」と言って、ネイサンの部屋にある旧世代のAI達からパーツや皮膚を自分の身体に付け替え、服を着ていくエヴァが「美しい人間の女性の姿となってケイレブと一緒に出ていく」ための行動だと思っていました。。

 

 同じAIであるキョウコには仲間的意識を持っているのかと思えばそんなことは全くなく、自分がここを脱出するために利用し、さらにここから出してくれと懇願するケイレブに対しては振り返りもせず、その場を後にするエヴァ……

 

 そうかと思えば、地上まで上がっていきリビングの階段を昇るときのあの自然な笑顔……自然な笑顔だけに逆に恐ろしいものがあります。それは本当に「感情」が顔に表れたものなのか?と。エヴァのネイサンへの台詞から少なくとも“憎しみ”という感情は持っていて、さらに外に出ようとする行動から「欲求」もあることが分かりますが、そこに「倫理」や「善悪」との綱引きを人間のように考えることができているのか、となると「???」です。

 

世に放たれたAI・エヴァは何をするのか

 肉体の強度や力は特別強くはないことから、おそらくはどこかの段階で人間の手によって破壊されたりするのでしょうけど(犯罪的なことに巻き込まれたり、動力を失って「物」として扱われ、のちに壊されるとか)、それまでにエヴァは人間社会の中で何をしてしまうのか、気になるところです。ラストシーンで人々が行き交う中に佇むエヴァの表情が、どこか人間に対して、もしくは外の世界に対して失望しているように見えたのは気のせいでしょうか。あのリビングの階段を昇るときに見せた笑顔との差が激しすぎて怖い。。

 

キョウコについて

 キョウコがAIだということは途中で分かりましたが、それはさておきAIがあんなに軽やかに踊れるものなのかというのは甚だ疑問です(笑)。まぁそれを言ったらみんな無理だろって話ですが…。

 

 キョウコ役のソノヤ・ミズノさんは、どことなく若い頃のジェーン・バーキンをさらに整えてそこに日本人テイストを組み合わせたような美しい顔をされていますが、モデルでもあり10年間本格的にバレエをやっていたというだけあってスタイルはもちろん、立ち姿や歩く姿勢なども本当に奇麗でしたね。AIという設定上、首がやや前に倒れ気味な姿勢になってはいましたが。

 

 またキョウコは動く際にエヴァのような機械音がしませんが、エヴァが旧世代のAIから皮膚パーツをはがして自身の身体に貼付けたあとは同じように機械音がなくなっていました。音を吸収する性能がかなり高い素材のようですね(笑)。

 

 それにしても、ネイサンはプログラマーとして天才だとしても、人型のAIを造るとなると造形学をはじめ他のいろいろな分野(設計や加工とか)での知識や能力が必要なんではないの?と思うのですが、それは考えてはいけないところでしょうか(笑)。

 

スポンサーリンク

 

ジャクソン・ポロックの絵との関連性

 

 ネイサンの部屋にジャクソン・ポロックの絵が掛けられていたのも、どこか象徴的なものがありました。

 

 ジャクソン・ポロックといえば現代アートを代表する抽象画家で、2006年には彼の作品「ナンバー5、1948」が165億円で売買されたほど。その作風はとにかく異端であり、床に広げたキャンバスに筆などで塗料をポタポタと滴らせる「ドリッピング」と、塗料をトローッと垂らして線を描く「ポーリング」という手法で、他の絵画に存在する「意図して描かれた何らかの形」というものが存在せず、また、どこが絵の中心で、どこが上でどこが前、といったような“位置情報もない”という「オールオーヴァー」と呼ばれるスタイルなど、それまでの絵画の常識を超えた革命的なものでした。

 

 UKものの音楽好きの人にとっては、The Stone Rosesの初期作品のジャケットがポロック風だったりして(歌詞にジャクソン・ポロックの名前が出てくる曲もありますね)、それで知ったという方もいるかもしれません。

 

 2012年2月~5月に東京国立近代美術館で開催された『生誕100年 ジャクソン・ポロック展』を観に行ったのですが、その中の『インディアンレッドの地の壁画』というかなり大きな作品を前にして、本当にその場を動けなくなるくらいに心を奪われました。言葉では説明できない、このみなぎる躍動感と溢れ出る生命力は一体何なのか…と圧倒されたのを覚えています。

 

 その後NHK-BSで放送された、海外のポロックのドキュメンタリーというか、検証番組みたいなものを見てなるほどと納得したのですが、それによると一見ルールもなく適当に描いているだけのようなポロックの絵には、実は自然界にある法則のようなものに則って描かれていることが科学的に実証された、とのことでした。

 

 例えば木がたくさんの枝を張り、そこからさらにたくさんの小枝がついて葉が茂っていきますが、この枝の張り方を見て私たち人間が本能的に「気持ち悪い」と思ったり「不快」に感じることはありません。むしろ冬になって葉が全部落ちたあとの骨々しい様子をじっくり見ると、自然が生み出す造形の美しさに感動を覚えたりします。雪の結晶なども自然が生み出した造形ですが美しいですよね。

 

 そのような「快」を感じる造形には、自然界で生み出される法則性のようなものがあるらしいのですが、なんとポロックの絵にもそれと似たようなものがあるとのことでした。逆に、他の人が「ポロック風に描いた」作品にはそれは存在しないのだそうです。

 

 おそらくそういった自然が生み出す「快」の造形は、人間が考えながら描こうとしても出来ないものなので、ポロックはそれを意識と無意識の間の「感覚的な何か」で生み出していたのでしょう。

 

 これを踏まえて映画を見ると、ネイサンが生み出そうとしていたものの方向性が少し見えてくるような気がします。人の姿をしていて「自然」に見えるもの=「快」を感じられるもの──を人工的に造り出すのは現実にはまだ無理でしょうが、この作品の中のAIはエヴァもキョウコもいわゆる「不気味の谷」はとっくに超えているように感じます。(そりゃ人間が演じてるんだからそうなるだろww っていうツッコミはなしでお願いしますw)

 

 

アリシア・ヴィキャンデルの過去の出演作

 

 またしても個人的にお気に入りのYouTubeチャンネル『Wonderful Actors』さんの動画を紹介させていただきます。気になった女優(僅かながら男優の動画もあります)の過去の出演作を確認するのに最適であると同時に、動画はもちろんコメント欄もそれぞれの女優に対してちゃんと敬意を払っているものばかりで、見ていて楽しいです。他の記事でも書いていますが、女優本人が自分の動画とコメントを見たら絶対悪い気はしないだろうなと思います(笑)。

 というわけで、主演のアリシア・ヴィキャンデルさんの過去の出演作をまとめた動画がこちら。ただし2016年5月に作成された動画のようですので、2016年の『ジェイソン・ボーン』や今年公開の『トゥームレイダー ファースト・ミッション』などは含まれておりません。

 

こちらもオススメ

  • 『シェイプ・オブ・ウォーター』のレビューはこちら
  • 『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』のレビュー【前編】はこちら
  • 『ブレードランナー2049』のレビューはこちら
  • 『LIFE! (The Secret Life of Walter Mitty)』のレビューはこちら
  • 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』【予習編】のレビューはこちら
  • 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』【ネタバレ編】のレビューはこちら

 

  • この記事を書いた人

三崎町三丁目通信主筆・K

三崎町三丁目通信の主筆(個人運営ですが)をしておりますKです。映画の感想を中心に、趣味で続けているスペイン語学習(DELE A2取得で止まっています)と最近始めた英語学習のことなどを書いています。本業はフリーランスのグラフィック&エディトリアルデザイナー。びっくりするくらい将棋が弱いです。

-ENTERTAINMENT
-

Copyright© 三崎町三丁目通信 , 2018 All Rights Reserved.